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⚠️若干の流血表現あり⚠️
21:36
🧡「…やっぱ、そう上手くはいかんよな…」
向井は部屋で1人呟く。
見ていたのは数社分の選考結果の通知。
在宅ワークでどうにか職につけないかと転職活動を初めて数週間。
目黒の家に来てからは1ヶ月が経とうとしていた。
なるべく早く仕事を見つけて目黒に迷惑をかけないように前の家に戻ろうと考えているのに中々事が進まない。
無理もない。書類選考が通っても面接で現地へ行かないと行けないことがほとんどで、その時は辞退をするしかないのだ。
何せ人魚の姿で社会に出る訳にはいかない。
リモート面接も何社かあったが、今のところ選考が通ったことがない。
🧡「…はぁ…」
気づけば一人でいる時はため息をつくことが増えた。
🧡「落ち込んどる場合とちゃう。めめにこれ以上迷惑かけられへんし心配もさせたあかん。しっかりせぇ俺!
…あっ、もうこんな時間やん!」
向井はスマホをスイスイと操作し音楽のサブスクアプリを開く。
今日は目黒が出演していたドラマの主題歌がデジタルリリースされる日だ。
初めて聞いた時からドラマの雰囲気にも合っていて曲調も向井好みで発売を心待ちにしていた。
🧡「あったあった!ようやくフルで聞けるんかぁ」
サブスクには既に楽曲が告知通りリリースされていた。ワクワクしながらイヤホンを付け再生ボタンを押す。
*¨*•.¸¸♬︎〜♪︎•*¨*•.¸¸♬
やはりいい曲だ。ドラマ本編も見返しすぎて向井は既に軽く歌えるようになっていた。
🧡「ん〜ふふ〜ん♪︎ 〜〜〜♪︎」
流れる音楽に合わせて向井も口ずさみ夢中になって聴き込む。
21:55
🖤「康二さすがにまだ起きてるかな」
仕事が少し押して予定より帰りが遅くなってしまった。目黒は送迎の車の中で時間を少し気にする。
家に着いてすぐに早足で自分の部屋に向かう。
<ガチャ>
鍵を開け、中に入るとキッチンにも風呂にも向井はいなかった。
となるとリビングか寝室か。
🖤「康二ー?」
閉まっていたリビングのドアを開けた瞬間、
🧡「•*♪¨*•.¸¸♬︎〜♪」
向井の歌声が聞こえた。すぐ分かった、自分が出ていたドラマの主題歌だ。
その時だった。
🖤「こうじ…っうぅ゙ッ…ぁ゙…カハッ…」
強烈な目眩が目黒襲った。
立っていられないほどに目の前が歪んでいく。
ドアにもたれ掛かり、その場へ倒れ込む。
<ガタッ>
🧡「うぉ!? なんや…め、めめ!?どしたん!?」
イヤホンをしていて気づいていなかった向井が振り返り倒れ込んだ目黒を見つけた。
目黒に近寄り、体を起こすために車椅子から降りる。
🧡「めめ!?どしたん!?具合悪いん?」
🖤「ぅ゙あ゙……ハァッ…」
🧡「めめ!?しっかりしぃ!」
体を揺さぶり目黒にひたすら問いかける。
すると目黒は向井の腕を掴み寄りかかってきたかと思えば…
<ドサッ>
🧡「め、め…?」
目黒は向井をその場へ押し倒し馬乗り状態になった。
🧡「どしたんや…んぅ!?」
そのまま目黒は向井にキスをする。
もちろん向井は状況を全く理解できず混乱ばかり。
🧡「んっ…ふぁっ…ちゅっ…めっ、めめぇ…!」
<クチュ…クチュ…>
向井が必死に抵抗しようとも目黒は一心不乱にキスを続ける。向井が喋ったタイミングで舌まで入れ絡みついてきた。
826
夢花𓂃𓂂ꕤ*.゚
🧡「んんっ…やっ…!めめぇ!!」
名前を呼んでも一切反応せず目黒の瞳はどこか虚ろで明らかに正気ではない。
怖い。
🧡「んぁっ…めめぇ!やめっ…!」
<バタンッ>
🧡「……え…?…めめ…?」
目黒は急に全身の力が抜け向井に覆いかぶさったまま意識を失った。
向井はそっと起き上がるが目黒は変わらず目を覚まさない。
軽く揺さぶっても起きない。
全く状況に脳が追いつかない。
🧡「めめ?…どないしたん…!?…えっと…病院。救急車…!」
向井は机に置いてあった自分のスマホをとり電話画面を開く。
しかし
🧡(…俺、この姿見られたら…どっちにしても鍵あけな…病院ついていかなアカンよな。もしバレたら…)
自分の今の人魚姿を見て119番するのに躊躇する。
🧡(…じゃあラウール呼ぶか?いや、怪しまれる…?
クソっ!どないしたら…)
何が最適解か、考えがまとまらない。
🖤「…んん…」
そう考えているうちに目黒がゆっくり上体を起こした。意識が戻ったのだ。
まだ痛そうに頭を抑えている。
🧡「めめ!?戻ったん?大丈夫なん!?」
向井は決死の表情で目黒に問いかける。
目黒はなんの事だか全く分からそうなキョトン顔で
🖤「え?…なにが?」
と返してきた。
向井は更に混乱する。
🧡「…めめ、さっき何したか覚えとらんの…?」
🖤「…何したって…どういうこと?俺、家に着いて部屋入って…そっから…あれ?」
🧡「記憶、ないん…?」
🖤「…全く」
目黒はさっきのキスのことを全く覚えていないようだった。
向井は混乱の中で上手く説明ができないが、少し悲しい感情があった。
🖤「俺、もしかしてなんかした…?」
🧡「…いや、なんもしてへんで。俺が気づいた時にはめめが後ろで倒れとって…」
不安そうな表情で向かいに問いかける目黒に、向井は本当の事が言えなかった。
🖤「うーん…い゙っ…痛…」
🧡「どしたん?頭痛い?」
🖤「頭もだけど、ぅ゙…口が…というかベロが…」
🧡「ちょぉ見せてもろてええ?」
目黒が口を開け舌を軽く出してみる。 向井が口の中を覗き込むと愕然とした。
目黒の舌に複数の切り傷のようなものがあった。
🧡「めめ、ベロめっちゃ切れとる…! 」
向井は近くに置いてあった鏡を渡し目黒にも見せる。目黒は苦い顔をして鏡を見た。
🖤「ゔぇ…ホントだ…どおりでいてぇ」
🧡「な、なんでそんな傷…」
🖤「いやわかんな………こ、康二…」
🧡「なんや?」
🖤「康二の…歯…」
🧡「俺が?なんて?」
🖤「康二の歯…見て」
目黒が持っていた鏡を渡してきた。向井は恐る恐る自身の顔を映す。
🧡「うわっっ!なんやこれ…!!」
衝撃のあまり鏡を一度落とす。
カシャンと音をならし鏡が倒れる音がしたがそれどころではなかった。
自分の指でも歯列を撫でる。
🧡「俺の…俺の歯が…!」
向井の歯は1本1本先が鋭く尖っており、言わばギザ歯というものに豹変していたのだ。
目黒の舌に切り傷ができたのは、キスで舌を向井の口内に入れた時に舌を歯に引っ掛けたせいだろう。
心做しか、向井の口の中でも若干血の味がする。
🧡「あ、朝鏡みた時こんなんやなかった!普通やってん!」
🖤「今日のうちに変わったってこと?」
🧡「た、たぶん…」
🖤「……ねぇ。俺のベロが切れてるのって…」
🧡(ビクッ)
向井は分かりやすくギクッと反応してしまった。
複雑な表情で顔を背ける向井に目黒は察する。
🖤「ごめん…!俺、もしかして康二に…」
🧡「い、言わんでええ!」
🖤「ほんっとごめん。あのまじで、覚えてなくて…」
申し訳なさそうな目黒の声。
向井はできる限りの笑顔で目黒の方へ向き直した。
🧡「ほんま大丈夫!むしろごめんなぁ俺みたいな男とチューするとか思わんかったやろ!」
🖤「いや、そんなことは…」
🧡「むしろごめんやで。俺がこんな姿になってもうたばっかにめめに怪我までさせてもうた」
🖤「………康二…」
🧡「事故やったって事で! ホンマに体調キツいんやったら病院行くんやで?」
目黒が何か話そうとしても向井が遮る。
聞きたくない。
🧡「あ、俺そろそろ水が恋しいわ。風呂入ってくるで!めめの分のご飯冷蔵庫やから!」
🖤「あ、うん…」
向井は目黒から逃げるように風呂場へ向かった。
水が溜まっていく浴槽の中で向井は身を縮め蹲る。
🧡(めめと……ちゅーしてもうた…)
初めてのキスだったのに、向こうは何も覚えていない。
自分の尖った歯のせいで、好きな人を怪我させてしまった。
さっきの作り笑いも目黒には絶対バレている。上手く誤魔化せなかった自分にも嫌気がさす。
そして、目黒が気を失った時にすぐに救急車を呼べなかった。
自分の姿がバレてしまった時の恐怖で動けなかった。もし目黒が本当に病気で倒れていたら…。
自分が人魚のせいで。
🧡「……最悪や…」
下唇を噛むと鋭利な歯が刺さり、そこから血が滲んでいく。痛みなど知ったことか。