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#御曹司
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宴は、主賓の挨拶、ケーキカットへと進み、奏と怜がナイフを入れている長方形のフルーツケーキは、後ほどデザートで振る舞われるらしい。
列席者が二人の写真を撮影し、フラッシュの瞬き、シャッター音が降り注ぐ中、新郎新婦は笑顔を映し出していた。
美花も、スマートフォンのカメラで、奏と怜の晴れ姿を収めている。
乾杯の後、歓談の時間になり、圭は瓶ビールを持って立ち上がろうとすると、眼光鋭い眼差しの持ち主から声を掛けられた。
「…………お前も忙しいな。まぁ一杯、どうだ?」
葉山兄弟の小中学校時代の友人でもあり、現在、音楽大学の講師でもある、フリーランスのトランペット奏者、響野 侑が、圭のグラスにビールを注ぐ。
「…………ああ。頂くよ。そうそう、奥さん。体調はどう?」
「お陰様で快方に向かってます。これも、隣にいる朝岡(あさおか)先生のお陰です」
侑の妻、響野 瑠衣が、ベージュブラウンのボブスタイルの髪を耳に掛けながら、やはり葉山兄弟の小中学校時代の友人であり、医師の朝岡 誠をチラリと見やった。
「彼女の生命力はすごいな。これも響野の一途な愛があってこそだと、俺は思うぞ」
朝岡が侑にニヤリとしながら目配せすると、侑は恥ずかしいのか、緩く癖の掛かった長めの髪を掻き上げながら、フッと笑い零した。
怜の小中学校時代の友人は、侑と朝岡のみ招待したようで、新郎側の親族席に席を充てたらしい。
瑠衣は、新婦の奏と同級生だが、怜と侑を通して知り合ったそうで、やはり新郎側の席に充てられていた。
「そういえば侑。今日は余興で二人のために演奏してくれるんだろ? お前も忙しいのに、ありがとう」
「…………いや。俺が瑠衣と結婚できたのは、怜と奏さんのお陰だからな。トランペットの演奏で、あのカップルに感謝を表すまでだ」
「私が、こうして生きていられるのは、朝岡先生はもちろんなのですが、奏ちゃんと葉山さんがいてくれたから、というのもあるんです」
響野夫妻の言葉に、圭のクールな目元が、僅かに見開かれる。
(怜たちは、自分たちが幸せになりつつも、友人にも縁を繋げていたって事……なのか?)
圭は、今までの人生、いかに自分の事しか考えてこなかった事を恥じてしまう。
(情けないな…………俺……)
披露宴の列席者が多いのも、これまで人の縁や繋がりを大切にしてきた、怜と奏の賜物なのだろう。
「…………圭。お前も……色々あったようだが……大丈夫か?」
「あ……ああ。まあ……な」
侑が気遣いつつ圭に声を掛けると、鷹のような眼差しから逃れるように、ビール瓶を持ち直す。
「じゃあ俺、ちょっとテーブルを回って挨拶してくるわ」
圭は、侑と朝岡にビールを注ぎ、瑠衣にソフトドリンクを勧めると、立ち上がりながらテーブルから離れていった。