コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「ダリルさん……あれは一体何なんすか?」
背中で震えるうさ耳が聞いてくる。
「あれが例の不死者の成れの果てだ。」
空を鳥の背に乗って飛ぶ2人の目の前に現れたのは巨大な魔獣。かつてのトレントよりも高く、木々から頭が完全に上へと出てきているほどだ。
その姿は異様で、何と特定する事も出来ない。
「無理矢理に定義するなら、キメラだろうな。最も、あんなものは最早生き物とも呼べぬだろうが」
鳥は大きく旋回して横に回り込む。
「あの魔獣はスウォードに向かっているんすか?」
魔獣の向かう先、あるのはスウォードの街と海だけだ。
「海水浴と洒落込むようなタイプではないだろうから、目的は街だろうな」
街の方を見た俺は、あいつらがまだバリケードを完成させきれてない事に気づいた。少し足止めは必要か。
「まあ、あそこまで必死に動いているなら手抜きしていた訳でもないか。うさ耳、遠慮は要らん。今の全力でキメラに火炎をぶち込んでやれ」
「えっ、いいんすか⁉︎ この間は洞窟でのダリルさんの真似してやろうとした時に思いっきりげんこつが降ってきましたけど、今回はいいんすね⁉︎」
「ああ、今回だけはな。あれに対してはさほど影響も与えられんだろうからな」
「かっちーんっ! 私を甘く見てるっすね⁉︎ うさ耳ローブの大魔術士とは何を隠そうこのエイミアっすよってところを見せてやるっす!」
「さっさとやれ」
「ゴホンっ。我が血の盟約にて──」
「さっさとやれ」
「いたっ! げんこつしたぁっ、しないって言ったっすのに!」
「それはまた別だ。やるか? やらないか? 俺がやってもいいんだぞ? だが俺はかわいい弟子の成長が見たくて振ったん──」
「やりまっす! 可愛い弟子の大魔術っ、とくと御覧あれ!」
うさ耳が鳥の背で立ち上がりスタッフを構える。その腰には落ちないようにとロープがくくりつけてあり、ダリルの腰につながっている。
うさ耳が構えたスタッフに魔力が集まり輝石は紅蓮の色に輝く。
「よぉっしゃあっす! 弾けろっす! バーニンッローズ!」
「……っ! ライトニング! エターナルフローズン!」
キメラの手前で一瞬のうさ耳エフェクトが煌めいたのち、魔獣のもとに焔の花弁が咲き乱れる。
その直前に不吉なものを感じて俺は魔術を2つ撃ち込む。
重ねがけにより合わさった魔術は迸る紫電とともに巨大なプラズマ状の現象を引き起こし魔獣に衝撃を与えた。