第6話 廃墟ホテル
大学のサークル仲間で旅行に出かけた四人組。
リーダー格の三好健太は背が高く短髪、派手な赤いパーカーを着こなし、大声で笑うのが癖。
石井彩音は明るい茶髪を肩で揺らす小柄な女性で、カメラを常に手にしている。
小谷亮は眼鏡をかけた細身の青年、地味な灰色のジャケットを羽織り、常に地図アプリを確認していた。
最後に杉浦真央は背が低めで、癖のある黒髪を後ろで結んだ女性。口数が少なく、旅の空気に溶け込めていないように見えた。
旅行の帰宅後、四人のもとへ一斉に「赤いきっぷ」が届いた。差出人も違う住所もないまま、日付だけが未来を示している。
「面白そうじゃん!」と健太の一声で、彼らは再び集合し、きっぷを手に旅に出た。
到着した先にあったのは、予約したはずのホテル──しかし建物は打ち捨てられた廃墟だった。
窓ガラスは割れ、ロビーのソファは埃をかぶっている。だが、受付カウンターの上には確かに彼らの名前で予約表が置かれていた。
「……これ、どういうこと?」彩音が震え声で言う。
健太は冗談めかしてフロントベルを叩いた。
カラン、と澄んだ音が廃墟に響くと、奥の廊下から「制服を着た従業員」が現れた。
しかし顔は影に沈み、眼や口は見えない。
従業員は無言で四人を部屋に案内した。
廊下には壁一面に鏡が並び、そこに映る自分たちの姿は「赤いきっぷを持つ影」に置き換わっていた。
ただし真央の姿だけが、鏡には映っていなかった。
部屋のドアを閉めた瞬間、館内放送が鳴る。
「本日の宿泊者、四名様──ただいまより三名様に変更いたします」
気づくと、テーブルの上に置いたきっぷが三枚だけになっていた。
残り一枚は、誰の手からも消えていた。
次は「夜桜の道」の話に進めますか?
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!