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41話 折り目のついたスポット通信新聞
朝。
玄関の音。
父は、
背が高く、
少し前かがみ。
上着の肘は擦れて、
靴底には乾いた土。
手に持っているのは、
スポット通信新聞。
角が折れ、
インクの匂いが残っている。
机に置かれた瞬間、
紙が小さく鳴った。
一面。
数字よりも、
言葉が大きい。
植物線
農業スポットでの観測安定
植物線が濃い新規耕作地、年内解放予定
図は簡素。
線が、
土の下を通っている。
説明はない。
二面。
111・999・772 処理石発掘鉱山スポット
新たな石が発見される。
主に3種類。
用途の記載はまだない。
父の指は、
紙の端を押さえている。
爪は短く、
傷がいくつか。
その段落は、
少しだけ読み飛ばされた。
三面。
4750スポット
住民登録処理の簡略化
出生番号の付与が即日対応に
欄外に、
発行番号と値段。
小さな数字。
子どもは、
そこを見ない。
子どもは、
椅子に座り、
足をぶら下げている。
髪は短く、
額に少し汗。
「今日は、
静かなニュースだね」
父は、
新聞をたたみ直す。
折り目は、
いつも同じ向き。
「静かな日は、
生活が回ってる日だ」
最後の面。
小さな記事。
1800〜2600スポット
話者教育の進捗
異なる発音の聞き取り率、上昇
写真はない。
文字だけ。
父は立ち上がり、
靴を脱ぐ。
新聞は、
机の端に残されたまま。
朝は、
昨日と同じ速度で進む。
番号は増え、
紙は折られ、
生活は続いていく。
それだけの朝だった。