🔪極限の火入れ
明け方。
赤みがかった空の下、リヒトの部屋は白い煙に包まれていた。
燃えているのは彼の皮膚ではない。
“快楽の臨界点”そのものだった。
リヒトは今、腹部の皮を捲り上げ、内臓の上にアルミホイルを敷き、肉を焼いていた。
そう、“自分の内臓を鉄板代わり”にしている。
その姿――
白い手術着の上半分は脱ぎ捨てられ、
胸から腹にかけて焼き色のついたガーゼが血に濡れながら張りついていた。
髪は汗と煙でくしゃくしゃ、
瞳孔は開ききり、熱と恍惚に呑まれていた。
「あと……3℃……芯まで届いたら……僕は、完成する。」
🔪スケアリーの実況「内臓鉄板焼きステーキ」
「ひゃあああああああああ!!!!!」
スケアリーが天井から逆さ吊りで湯気を吸っている!
「これもう料理じゃない!!!!
“臓器を鉄板代わりにして自分を焼く”って何ィィィ!?!?!?」
「身体の内側で焼いてるのに!!!
味は外に漏れ出してる!!! いや逆だ!!!!
**焼かれてるのは“感情”で、出てきたのは“意味のない涙”!!!!」」
「この肉……
“感情のミディアムレア”!!!!」
🔪ユリウス、限界を感じる
「止めるべきか……」
ユリウスは、ドアの前で立ち尽くしていた。
「……でも、こいつにとっては、
これが“生きてる証拠”なんだ。」
(スケアリーが放っておく理由もわかる。
でも、こんな調理法――許されるわけがない)
🔪リヒトの告白
「僕ね、もともと“感じない子”だったんだ。
世界のどこにも、美味しさも、痛みも、存在してなかった。」
「だから、自分の身体を“材料”にするしかなかった。
痛みを、焼き目に。
血を、ソースに。
苦しみを、香ばしさに変えるしか――生きる手段がなかったんだ。」
🔪スケアリーの食レポ「境界ステーキの自己焼成ソース」
「くっくっくっ……!!! こいつぁやべえよ……」
スケアリーは肉片を指で掬い、口に入れ――ぶるぶると震える。
「これは……
“誰にも共有されない快楽”って味……」
「共感ゼロ。理解不能。
“孤独のタンパク質”だけで作られた異物!!!!」
「おいしさなんか感じちゃいけないのに!!!
焼き色だけが、世界との接点!!!!」
🔪ラスト:体温、臨界へ
リヒトの目がとろんとする。
心拍数が上がりすぎて、かすかに震える唇。
「そろそろ……焼き上がる……」
――がくん。
その瞬間、身体が傾ぎ、肉の皿ごと、床に崩れ落ちる。
血の香り、焼け焦げたガーゼ、
すべてが**“一皿分の自傷”**として、冷めていった。
次回 → 第三十二話「冷却と保存、魂の真空パック」
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