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第三十一話「内部温度と快楽の境界」


🔪極限の火入れ


明け方。

赤みがかった空の下、リヒトの部屋は白い煙に包まれていた。

燃えているのは彼の皮膚ではない。

“快楽の臨界点”そのものだった。


リヒトは今、腹部の皮を捲り上げ、内臓の上にアルミホイルを敷き、肉を焼いていた。

そう、“自分の内臓を鉄板代わり”にしている。


その姿――

白い手術着の上半分は脱ぎ捨てられ、

胸から腹にかけて焼き色のついたガーゼが血に濡れながら張りついていた。

髪は汗と煙でくしゃくしゃ、

瞳孔は開ききり、熱と恍惚に呑まれていた。


「あと……3℃……芯まで届いたら……僕は、完成する。」




🔪スケアリーの実況「内臓鉄板焼きステーキ」


「ひゃあああああああああ!!!!!」

スケアリーが天井から逆さ吊りで湯気を吸っている!


「これもう料理じゃない!!!!

“臓器を鉄板代わりにして自分を焼く”って何ィィィ!?!?!?」


「身体の内側で焼いてるのに!!!

味は外に漏れ出してる!!! いや逆だ!!!!

**焼かれてるのは“感情”で、出てきたのは“意味のない涙”!!!!」」


「この肉……

“感情のミディアムレア”!!!!」




🔪ユリウス、限界を感じる


「止めるべきか……」

ユリウスは、ドアの前で立ち尽くしていた。


「……でも、こいつにとっては、

これが“生きてる証拠”なんだ。」


(スケアリーが放っておく理由もわかる。

でも、こんな調理法――許されるわけがない)




🔪リヒトの告白


「僕ね、もともと“感じない子”だったんだ。

世界のどこにも、美味しさも、痛みも、存在してなかった。」


「だから、自分の身体を“材料”にするしかなかった。

痛みを、焼き目に。

血を、ソースに。

苦しみを、香ばしさに変えるしか――生きる手段がなかったんだ。」




🔪スケアリーの食レポ「境界ステーキの自己焼成ソース」


「くっくっくっ……!!! こいつぁやべえよ……」


スケアリーは肉片を指で掬い、口に入れ――ぶるぶると震える。


「これは……

“誰にも共有されない快楽”って味……」


「共感ゼロ。理解不能。

“孤独のタンパク質”だけで作られた異物!!!!」


「おいしさなんか感じちゃいけないのに!!!

焼き色だけが、世界との接点!!!!」




🔪ラスト:体温、臨界へ


リヒトの目がとろんとする。

心拍数が上がりすぎて、かすかに震える唇。


「そろそろ……焼き上がる……」


――がくん。

その瞬間、身体が傾ぎ、肉の皿ごと、床に崩れ落ちる。


血の香り、焼け焦げたガーゼ、

すべてが**“一皿分の自傷”**として、冷めていった。





次回 → 第三十二話「冷却と保存、魂の真空パック」

スケアリーイズム - 完全犯罪のレシピ

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