テラーノベル
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「では、夕餉を作ります。少々お待ちください」
澪は衣を貰い、袖を通した後、朧の前で盛大な音を立てていた。
「⋯はい、ありがとうございます」
先程のことがあり、恥ずかしさもある所為か、澪は先程のように朧と目を合わせられなくなっていた。
「⋯朧さんがお作りになるのですか?」
「ええ。料理は⋯⋯得意ではありませんが、できます」
(得意じゃないのにできるって言うの、可愛い⋯⋯)
しばらくして、台所から焦げた匂いが漂ってきた。
くんくん⋯⋯
「うん⋯?
何の料理かな⋯匂いが香ばしすぎる⋯」
「きゃぁっ⋯!」
黒く焦げた物が鍋の中にあり、プスプス、と音を立てている。
「あっ⋯朧さん!これ⋯焦げて⋯!」
「⋯⋯これは、火加減を間違えただけです」
「そ、それ⋯⋯真っ黒ですよ⋯⋯?」
「黒は縁起の良い色です」
「料理の話です!」
思わず笑ってしまうと、朧は少しだけむっとした顔をした。
「⋯⋯笑わないでください。私は真剣なのに⋯」
「す、すみません。でも⋯⋯なんだか安心してしまって」
「安心⋯⋯ですか?」
「はい。朧さんって、完璧すぎるので⋯
こういうところ、ちょっと可愛いなって⋯⋯」
朧の耳が、また赤く染まった。
──その夜。
布団に入った澪は、屋敷の静けさに耳を澄ませていた。
(何か⋯新鮮だなぁ。こんな和風な建物で、着物みたいな服着て⋯。
すごく⋯心地良いなぁ
それに⋯朧さんも優しくて⋯)
すると、廊下の向こうから、かすかな足音と、風のような気配がする。
「⋯⋯朧さん?」
部屋の戸が静かに開き、朧が姿を見せた。
「⋯!」
澪は、どきりと心臓が跳ねた。
「澪さん。
もし、怖くて眠れないようでしたら⋯⋯呼んでください」
「⋯⋯はい。ありがとうございます」
「あなたは、私の花嫁ですから」
その言葉に、澪の胸がまた熱くなる。
でも──
その”花嫁”が、”仮”であることを、澪はまだ忘れられなかった。
コメント
3件
これからどうなるのか楽しみ❕