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seven deadly sins 2
ヘレンは二ホンオオカミやバーバリライオンなどの標本や剥製のある広大なリビングへと通された。二人の女中が薪をくべる大きな暖炉には、珍しい青い炎が揺らめいていた。
ヘレンは何故か奇妙な感覚を覚えたが、あまり気にしなかった。
座るようにと促された椅子も、一級品のような革張りだった。向かい合ったジョン・ムーアは聞いた話とは違い。一年前の姿とは似ても似つかないほどに痩せこけた青年だった。
「やあ、いらっしゃい。一年中この屋敷に閉じこもっていてね。不健康極まりない。確か……聖パッセンジャーピジョン大学付属古代図書館から借りた一年前の本を図書館へ返してほしいだったね。死神についての本? でも、すまないが、もう忘れてしまったよ」
ジョンは苦笑した。青い炎の暖炉に照らされた横顔は、若いのに隠居生活をしているかのように、まったくといっていいほど覇気というものがなかった。
「……そうですか……困ったわ。その本には絶滅の危機に瀕している。ある鳥が載っていましたのに……」
「それは、本当ですか?」
ヘレンは標本や剥製が、全て絶滅種なのを見抜いていた。なので、ジョンは絶滅種に興味があると踏んだ。
「うーん……。一年前……一年前……。あ! 本は確か誰かに貸してしまったのですが、タイトルは、seven deadly sins(七つの大罪)という1589年のドイツのグリモワール(魔術書)だった!」