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もう〜二人のやり取りにキュン🩷キュン🩷しちゃいますね~🥰
やった〜🩷😆理紗子ちゃん、ようやく気持ち自覚したね。でも健吾さん、も少しはっきり言わないと😁
自分の気持ちにようやく気づいた理紗子ちゃん💖 でも天然すぎて、健吾さんの気持ちにはなかなか気づかないね😁w この部屋に呼んだのは 家族以外で君が初めて とか、 あのときのキスは偽装ではない....と言われたら普通は気づくけど....♥️🤭 健吾さん、頑張って~~!!!🚩😆🚩📣 理紗子ちゃんには ストレートに言わないと伝わらないよ❗️ パーティーの日は、もっと強気にグイグイ行っちゃお~ぅ✊‼️💏😘♥️
車を地下駐車場へ停めると二人はエレベーターで上に向かった。
マンション内はどこもかしこも上品さが溢れるシンプルな造りでまるでホテルのようだ。理紗子は思わずため息を漏らす。
もちろん健吾の家も玄関から既に高級感が漂っていた
室内もホテルのようにシンプルで品がいい。置かれている家具もどれも品が良くセンスに溢れている。
壁に飾られてある絵もどこかで見た事があるデザインだ。おそらく有名イラストレーターの原画なのだろう。
突き抜けたお金持ちの家には徹底して物がないと何かの記事で読んだが健吾の家もまさにそれだった。
男の一人暮らしにしては物が少なく良く片付いている。
ただしリビングの一角に置かれた大きなデスクの周りだけは少し賑やかだった。
デスクの中央にはトレード用の6面のモニターがついた大容量のデスクトップパソコンが置かれその脇にノートパソコンが二台置かれている。どの画面もついたままだった。
画面にはチャートと呼ばれる表やグラフのようなものが表示され秒刻みで動いている。
理紗子はその画面を覗き込むと健吾に聞いた。
「ここでトレードをしているのねー。動画配信もここで?」
「うん。配信はいつもそこからだよ。今コーヒーを淹れるから適当に座ってて」
健吾はリビングの片隅にあるアイランドキッチンでコーヒーの準備を始めた。
理紗子はまだ興味深げにデスク周りを見ている。
そこには動画配信の時に使うマイクや撮影機材、三脚などが無造作に置かれていた。
その後理紗子は窓際へ行き外の景色を眺めた。
「うちよりも東京タワーがはっきり見える! やっぱりタワマンからの景色には叶わないわね」
「そうか? 大きさ的には同じだろう?」
「ううん、周りを遮るものがないから違って見える。ねぇ、ここからの夜景は綺麗?」
「ああ、最高だよ」
「いいなー、やっぱりこれくらいの高さの部屋に住みたかったなー」
理紗子はそう呟くと今度は健吾がいるキッチンへ移動した。
アイランドキッチンの横には、真っ白な天板にステンレスの脚で出来たスタイリッシュなダイニングテーブルが置かれていた。
(悔しいけれどセンスがいいわ)
理紗子はそのツルツルした天板を撫でるように触ると今度はキッチンを観察する。
パッと見た感じでは誰かが料理をしている形跡はなかった。
(女の気配は全くないんだ……)
あまりにも生活感のないキッチンを見てすぐにわかった。
「ねぇ、ここに越して来たのっていつなの?」
「二年前かな」
「それまではどこに住んでいたの?」
「港区だよ」
「港区のタワマン?」
「そう」
「なんで引っ越して来たの?」
「うーん、気分転換?」
「気分転換でタワマンを渡り歩くの?」
理紗子は目を丸くしたまま聞いた。
「理紗子だって前は杉並にいたんだろう? それと同じだよ」
「それはそうだけど」
理紗子はなんだか納得がいかないままダイニングチェアへ座る。
「はい、どうぞ」
健吾がコーヒーを持ってきてくれた。
「ありがとう」
そして健吾も理紗子の前に座る。
「家族以外でこの部屋に入ったのは君が初めてだ」
「え? 嘘ーっ!」
「本当だよ。さっきからこの部屋に女の気配があるかどうか調べてたんだろう?」
理紗子はギクッとする。図星だ。
「そ、そんな事思ってないわよ。でも一度もないっていうのは怪しいわ。だって彼女いたんでしょう?」
「港区にいた頃はいたけどここへ来てからはずっとフリーだ。だから女性は入った事はない。君が初めてだよ」
(君が初めて……)
健吾の言葉に理紗子はドキドキしていた。そしてそのドキドキを隠そうと慌てて話題を変える。
「妹さんはよく来るの?」
「用事があれば来る感じかな」
「そうなんだ」
「他に質問は?」
健吾が笑いをこらえながら言ったので理紗子はムキになってどうでもいい質問をぶつけた。
「あの素晴らしいキッチンは宝の持ち腐れ? 全然使った形跡がないけれど」
「使ってるよ。お湯を沸かしたりレトルトを温めたりしてるから。あ、たまにご飯も炊くし」
「いや、それって使ってるって言わないから」
「言うだろう? 電子レンジもよく使うし」
「いえ、言いませんっ!」
「じゃあ今度何か作ってくれよ」
「え?」
「また水炊きでもいいぞ。あれ美味かったもんな―。これからの季節は鍋もいいな。そうだ、鍋パでもするか?」
健吾はニッコリ笑ってうんうんと頷く。
「い、いいわよ。そうしたら夜景も観られるしね」
「ここからの夜景が観たいのか? だったらいつでも来ればいい」
(いつでも来ればいい)
理紗子はその魔法のような言葉を胸の内で繰り返す。そしてほんの少し頬を赤らめながら言った。
「うん、ありがとう」
照れを隠す為に理紗子は慌ててコーヒーを飲む。その時健吾は不自然に咳ばらいをしてから言った。
「ずっと言おうと思っていたんだけれど……」
「うん、何?」
理紗子はコーヒーを飲みながら健吾に聞いた。
「石垣島で君にしたキスは…その……決して『偽装』の為ではないから」
「え?」
突然そんな事を健吾が言ったので理紗子はびっくりしていた。
「あの時は身体が勝手に動いてたんだ。つまり俺は純粋に君にキスをしたかったんだと思う。決して『偽装』の為とかじゃないから」
健吾は照れたように言うと慌てて立ち上がる。そして、
「『ちんすこう』食うか」
と言ってキッチンへ向かった。
理紗子は初めて見る健吾の様子にかなり驚いていた。おそらく今言った事は本心なのだろう。
(純粋に私とキスがしたかった……の?)
そう思った瞬間理紗子の頬が緩んだ。そして優しい瞳で健吾の後ろ姿を見つめる。
棚から出した菓子を皿に移している健吾を見ながら思わず胸がキュンと疼く。
(私はこの人の事が好きなのかもしれない)
その時理紗子ははっきりと自分の気持ちに気付いた。
そして落ち着こうと思い少し震える手でコーヒーを飲んだ。
この日、二人の距離がまた一歩近づいた。