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「てか、なにおまえ、ほんとにここの生徒?」
「そ、そうみたいですけど…」
「いたっ」
急におさげを引っ張られて、思わず悲鳴をあげた。
「あ、ヅラじゃねぇんだ。すっげぇ、じゃあそのだせぇメガネもほんもの?」
面白がるようにまじまじと顔をのぞきこまれて、わたしは顔を真っ赤にさせてうつむいた。
すると彪斗くんはケラケラ笑い出して、ふざけてわたしのおさげをぐいぐいと引っ張った。
「すげー!マジいるんだ!ださださメガネのおさげっ子!絶滅危惧種はっけーん!」
「や、いたい…っ、はなしてください…っ」
これじゃあまるでイジめっ子だよぉ…。
転校初日にイジめられるなんて…うううう。
「ホントにお前、ここの生徒かぁ?どっかのド田舎学校と間違えたんじゃねぇの?生徒手帳は?見せてみろよ」
生徒手帳なんてまだもらってないよ…。
わたしはカバンの中から転学許可証を出して見せた。
「ふぅん。本当みたいだな。って、え!『特別許可』!?」
彪斗くんは形のいい眉をひそめて、改めてまじまじとわたしを見つめた。
上から下へ、まさに品定めするみたいに。
ああもう恥ずかしいよ…。そんなにじろじろみられていいような容姿、してないし…。
しかもこんなかっこいい人に…。
しばらくして、彪斗くんはつまらなそうに、おさげを離した。
「オーラ、ゼロ。パンピーの中のパンピー」
「……」
「わからねぇな。おまえみたいなドパンピーがなんで『特別許可』なんだ?ここにいる『特別許可たち』はS級揃いだぞ?」
なにを言ってるのか…まったくわかりません…。
困り果てているわたしの手から、彪斗くんは乱暴に許可証を奪い取った。
「あ、かえして…っ」
「ふぅん、ことり…ゆうゆう?お前の苗字『小鳥』っての?変な名前」
「ち、ちがいます、それは」
「あ、芸名?小鳥ゆーゆーさん?小鳥ちゃん?」
「だっせぇ芸名」と鼻笑って彪斗(あやと)くんは、転学許可証を高く掲げた。
もともと高い背なのに、さらに高くまであげられちゃ、わたしがぴょんぴょん精一杯跳ねたってかすりもしない。
彪斗くんは愉快そうに口端を歪めている。
もう…!
本当に本当に…イジワルな性格…!
彪斗くんの目が、ネコみたいにすっと細まった。
「なに?返してほしいの?」
こくこく、とうなづいてみせる。
だってそれがなければ、今日からここに通えない。
「じゃ、返してくださいは?」
「か、かえして」
「あ、きこえねー」
「かえして…っ!」
と、大きく跳ねた拍子に、わたしはバランスくずしてしまった。
そしてそのまま、彪斗くんにもたれてしまって…
「っ…!」
「きゃっ…!」
一緒に倒れてしまった…!
「ってぇな…!」
「ご、ごめんなさい…!」
ど、どうしよう…!
彪斗くんが間近に…!
と、思ったけど、ぼんやりしてよく見えない。
わ、わたし、メガネしてない…!
どうしよう…倒れた拍子にメガネが外れてしまったんだ…。
メガネ…どこいったの?メガネ…!
でも、と、とにかく早く離れなきゃ…彪斗くん怒ってる…!
と、思ったけど
彪斗くんはどうしたわけか、もだもだ暴れるわたしをぎゅっと抱きしめたまま、じっとしていた。
え…?
思わず見つめると…
「やべ…前言撤回」
彪斗くんはニィと、新しいオモチャでも手に入れたかのように口端をゆがめた。
「よく見れば、おまえけっこう可愛いな」