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彼女の方から、豪にメッセージアプリで別れを告げた手前、『彼女だろ?』と聞かれて、すんなり肯定できなかったのかもしれない。
「とにかく、奈美に話したい事があるから明日ゆっくり話そう。西国分寺駅まで来る? それとも、俺が迎えに行こうか?」
『いえ……明日、電車で西国分寺駅まで行きます。二十時くらいに着くようにしますね』
「わかった。俺も明日は定時で仕事を切り上げるようにする。じゃあ、明日な。おやすみ」
『おやすみなさい』
奈美が電話を切った事を確認してから、豪も通話終了のアイコンをタップした。
晩飯がまだだったので、すぐそばのコンビニに入っていく。
さすがに時間が遅いせいか、品薄だった。
仕方ない。
あまり遅い時間に食べても身体に悪そうなので、サラダを手に取り、レジへ向かおうとしたが、踵を返した。
そのままメンズの化粧品や洗顔料、整髪料などが売っているコーナーへ向かう。
(明日は奈美がうちに来る。もしかしたら、もしかするかもしれない……)
隅の方に陳列されている、カラフルな長方形の箱を手に取ると、彼は再度レジへ向かって会計を済ませ、マンションへ足を向けた。
奈美を初めて抱くのなら、豪の自宅マンションで抱きたいと思っている。
過去に自宅マンションに女を連れて来た事は、一度もない。
奈美が初めてとなる。
これから先、彼女以外の女を連れ込む事は、決してない。
彼の自宅に招く、最初で最後の女だ。
豪の奈美に対する気持ちが、本気だと知ってもらうために。
あんな出会い方をした二人だが、彼にとって彼女は、かけがえのない大切な女性だという事を分かってほしいから。
(明日から日曜日の間に……俺は…………奈美を抱く)
ただ、自身の性欲を解消させるために、奈美を抱くわけではない。
(奈美の事が大好きで愛おしいから……抱きたいんだ……)
豪は、翌日の自宅デートを思い描きながら、足早に自宅へ急いだ。