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るるくらげ
いと
#和風ファンタジー
「うわぁあああ!」
蒲生は俺の姿を見て、絶叫した。
「な、なんで……ここにいるんだ!」
意識不明と聞いていた俺が、目の前にいる。
蒲生の頭の中は、理解が追いついていないようだと思った俺は薄ら笑いを浮かべて、
「なんでって……お前の魂が欲しいからだよ」
と言った。
「魂……?え?な、なに?」
蒲生はゆっくりと視線を動かして、俺の持っている鎌を見た。
「あ、あ、あ……」
声にならない蒲生は、身体に力が入らず腰が抜けた状態になっていた。
俺はそんな蒲生を冷たく見つめていたが、蒲生の横にあるビニール袋の中の色紙、ゲームソフトに視線を向けた。
「俺から借りパクしていたソフト、捨てる気だったのかよ」
呆れたように言うと、蒲生はハッとした顔になる。
何とかしようと思ったのだろう。
「ちがっ、違う。捨てるつもりは……」
慌てて言い訳を始める蒲生に、
「違わないだろ?捨てる気満々だったくせに」
嘲笑って言った。
「平気で人を見捨てておいて、自分は仕方なかったと言い訳する人間だから、当然か」
「……」
蒲生は何も言えずに、怯えた目で俺を見る。
俺はそんな蒲生から視線を逸らして、蒲生のパソコンの画面に目を向けた。
「チャット……」
パソコンの画面はログイン状態で、画面の端にはチャット画面が表示されていた。
「ゲーム仲間に『いじめられた友人を助けられなかった』と殊勝な人を気取ったんだろ?」
「ち、違う!そんなこと、してない!」
叫ぶ蒲生が、必死に自分を取り繕う。
その姿が滑稽にしか見えなかった。
「誤魔化さなくていいよ。ちゃんと知っているから」
俺は蒲生を蔑むように見て、嘲笑を浮かべた。
「ゲーム仲間のジュートに『本当は助けるつもりなかっただろ?』って言われたこともね」
大きく目を見開いた蒲生は
「何故……知って……いる?」
呆然としながら言った。
「お前は言い訳とか、嘘が得意だよね。何もなかった事にして、自分は関係ないと言う。でもすぐにバレるんだよ」
「嘘じゃ……」
「お前は自分の親や俺の親、紗羅にも、無理矢理やらされたと言ったよな?」
「……」
「俺を撮影しながら笑っておいて、何が無理矢理だよ。
お前は保身の為に、平気で嘘をつくヤツだと、ジュートは気づいたんだよ」
「まさ……か……?」
蒲生はやっと気づいたようだ。
真っ青な顔で俺を見る。
「そうだよ。俺がジュートだよ」
俺は蒲生をゲーム実況の配信者とバレないように、別のIDで活動していたことは知らなかった。
そのIDは、俺がログインしているオンラインゲームに現れた。
ゲームが上手いなぁと思った俺は、チャットで会話をするようになり親しくなった。
だが、ある日チャットで
『いじめにあった友達を助けてあげられなかった』と言ってきた。
瞬時に、俺は蒲生だと気づいた。
「お前は最初から助ける気もなかった。
お前のような偽善者の戯言に、二度と付き合うつもりはなかった」
俺の言葉に、蒲生は絶望したような顔を見せた。
そんな蒲生に俺は微笑む。
「だけど、よく考えれば俺とお前、昔から一緒にゲームをしてきた。そうだったよな?」
蒲生は縋るような目をして、声を出せないまま大きく首を縦に振った。
「ゲーム実況の配信をしているお前に、相応しいゲームを与えてあげたよ」
「ゲーム?」
キョトンとした顔になる蒲生に、残酷な現実を突きつける。
「お前は俺から魂を取られるデスゲーム、その実況の最中にいるんだよ」
「——ッ!」
「今まで見て見ぬふり、逃げてきたお前。
今回は、もう逃げられない。
魂を俺に渡して、怠惰の罪を償え」
真正面にいる蒲生の首を狙って、俺は鎌を大きく振った。
蒲生が絶望と恐怖で俺を見つめる。
その視線を受けながら、俺は蒲生から魂を奪い取った。
かつての友人だった男——蒲生はふらふらと歩いて、パソコンの前に座り、キーボードを叩く。
チャット画面に、ひたすら文字を打つ。
チャットの相手——ジュート。
【ごめんなさいゆるしてください】
画面に埋め尽くされていく文字を、俺は黙って見つめる。
見つめる俺の左目の色——僅かに揺れていた。
——蒲生が大学に姿を現さず、バイトも無断欠勤を続ける。
スマホに連絡しても出ない。
心配した親が、蒲生の元を訪ねた。
パソコンの画面の明かりだけしかない、薄暗い部屋。
首に紐をつけた、蒲生がいた。
誰にも見つけてもらえず、誰かに気づいてもらえないまま
——死後一週間が経っていた。
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