コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朝から空は抜けるような青。校庭にはテントが並び、赤白の旗が風にはためいている。
――年に一度の大イベント、運動会。
「大地、お前ストレッチちゃんとしろよ」
「へーきへーき! オレ、転んでも立ち上がる体質だから!」
隼人は額を押さえた。
「体質って何だよ……」
そんなやり取りを、観客席後方で双眼鏡を構えた萌絵が見つめている。
隣の涼はメモ帳を開き、すでに実況モード。
「今日の目玉は“隼人大地リレー対決”だな」
「しかも柊くんもいるから三角関係が乱立……尊い!」
「実況は落ち着け」
まずは障害物競走。
大地はスタート直後、麻袋競争でジャンプしすぎ、見事に一回転。
「うおっ!?」
砂煙の中からピースサインで起き上がる。
観客から歓声と笑い。
萌絵、興奮。
「大地くん、転んでも天使! いや妖精!」
涼は冷静に記録。
「ここまでの見せ場、完全に大地。隼人、表情が若干引きつってるな」
続く玉入れでは、大地がなぜか玉を的に投げ入れず、隼人に全力パス。
「隼人キャッチ!」
「いや俺ゴールじゃねえから!」
隼人が慌てて投げ返し、その玉が偶然カゴに入り歓声。
「ナイス連携!」と実況マイクが叫ぶ。
柊は隣で小さく笑った。
「大地、自由すぎ」
隼人がむっと睨む。
「お前笑ってる場合か」
「だって面白いだろ」
二人の視線が火花を散らす。
そして注目のクラス対抗リレー。
第一走者・大地、第二走者・柊、アンカー・隼人。
ピストルの音と同時に大地が飛び出す――が、勢い余ってバトンを逆向きに持った。
「逆っ、逆ーーっ!」
観客大爆笑。
だが持ち替えも素早く、そのまま必死で走る。
柊がバトンを受け取ると、フォームは美しく一気に差を縮めた。
隼人にバトンが渡る頃にはトップ争い。
隼人は全力で走り抜け、ゴールテープを切った瞬間、クラスは総立ち。
結果は見事優勝。
表彰式後、日陰でペットボトルをあおる大地に隼人が近づく。
「お前……今日何回やらかした?」
「え? 数えきれない!」
大地は満面の笑み。
「でも、みんな笑ってくれたから勝ちだよな!」
柊がタオルを差し出しながら微笑む。
「うん、楽しかった。大地のおかげだな」
その一言に、隼人の眉がピクリと動いた。
萌絵と涼はその様子を双眼鏡で凝視。
「隼人の嫉妬ゲージ、上昇確認」
「これは新しい萌え展開。最高」
隼人は二人の視線を感じて振り返るが、二人は素知らぬ顔。
結局、空に響く歓声と笑い声が、今日一番のBGMになった。