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校外学習(旅行)の夜。消灯時間を過ぎても、部屋中は遠足前の子どもみたいにざわざわしていた。
「おい大地、そっちの枕、飛ばすなって!」
隼人が低い声で制するより早く、ふわりと枕が宙を舞い、ぽすっと柊の後頭部に命中。
「痛っ……誰だよ!」
柊が振り向くと、にやりと笑った大地が枕を両手に構えている。
「反撃、開始!」
柊の号令で一気に枕合戦がヒートアップ。
「実況は私たちにお任せください」
襖の陰から顔を出した萌絵が、目を輝かせる。
「隼人大地ペア、最強タッグ確定……って、あれ、今の当てにいった?」
隣でメモ帳片手の涼が冷静に分析する。
「狙ってる。いや、狙いすぎ。公式カップルか?」
「それな!」
二人の囁きは、枕の雨音にかき消された。
戦いがひと段落したころ。
汗だくの大地が「負けたー」と畳に転がる。
「ほら、布団ちゃんと掛けろ。風邪ひく」
隼人はぶつぶつ言いながらも、乱れた布団を引き寄せる。
だが――その拍子に、ふたりとも同じ布団にすっぽり。
「……え?」
大地が瞬きを繰り返す。
「違う、これは事故だ」
隼人は即座に否定するが、顔がやけに赤い。
襖の外で、萌絵と涼の「尊い……!」が同時に響いた。
柊は枕を抱えながらニヤリ。
「ま、これも旅行の醍醐味ってことで」
夜はまだ、長い。