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由天。
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50話 リカ、教科書の溶ける化学石をながら見をする。
夕方。
机の上。
教科書が開かれている。
厚みがあり、角は少し丸い。
表紙は硬く、
指が滑らない。
リカは、
椅子に浅く腰かけ、
片ひじをついている。
髪は肩より少し下、
前髪は目にかからない長さ。
制服の袖は、
家用に折られている。
ページ。
溶ける化学石。
文字は多い。
図も多い。
線は単純で、
説明は短い。
水に溶ける。
溶けたまま使う。
化学物質。
固めて形にする。
素材になる。
繊維。
容器。
部品。
リカは、
文字を追っていない。
視線は、
図と文字のあいだを行き来する。
次のページ。
工程。
水。
容器。
沈める。
待つ。
引き上げる。
思っていたより、
難しそうじゃない。
そう思った瞬間、
ページがめくられる。
パラ。
少し戻る。
また進む。
教科書は、
読むためというより、
そこにある。
リカは、
足をぶらぶらさせながら、
ページの角を指でなぞる。
化学石。
溶ける。
固まる。
生活になる。
机の端には、
袋から出した
さっき授業で作った繊維。
さらっとしている。
教科書は、
そのまま開かれたまま。
リカは、
立ち上がる。
ながら見でも、
今日はそれで足りていた。