テラーノベル
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学園の崩壊から1ヶ月。
かつて「鉄の檻」と呼ばれた鉄鎖清廉学園は、今や見る影もない。時計塔はハート型に曲がったまま、校庭には更生施設ではなく、巨大な配信スタジオが建っていた。
学園の再建費用、総額8000億円。
その天文学的な負債を返すため、理事長(憐の父)が下した非情かつ合理的な決断――それは、学園を**「24時間365日、全生徒の恋愛をコンテンツとして世界に売る配信特区」**にすることだった。
「……いい、贄田くん。これはあくまで『公務』よ。学園の資産を破壊した私たちの責任を果たすための、厳格な業務なの。……分かったわね?」
カメラの前で、断罪院 憐は極限まで赤くなった顔を伏せながら、震える声で言った。
彼女が着ているのは、かつての風紀委員の制服を「配信映え」するようにアレンジした、少し露出度の高い特別仕様だ。
「……先輩、その割にはカメラが回った瞬間に僕の腕を抱きしめる力が強くなってませんか?」
「う、うるさい! これは貴様が逃げないように『ホールド』しているだけよ!」
画面の右側では、全世界から届くチャットが音速で流れていく。
「キタアアアア! 委員長のツンデレ助かる!」
「投げ銭(スーパーチャット)100万円いくぞ!」
「もう結婚しろよ(定期)」
今日の配信内容は、スポンサー企業から持ち込まれた激辛カレーの食レポ。しかし、この学園のルールは「普通に食べる」ことを許さない。
「ええい、贄田羊! 貴様の口元にカレーがついているわ! これは……その……不衛生よ! 私が、私が直接、拭き取って(舐めとって)あげるべきだけど、放送コードがあるから、この『愛のナプキン』で……!!」
憐がパニックになりながら、羊の顔を至近距離で拭き始める。
二人の距離、\(0.01\\text{mm}\)。
憐の胸元のセンサーはすでに爆発して灰になっているが、代わりにスタジオの**「集金カウンター」**が猛烈な勢いで数字を刻んでいく。
「……先輩、顔が近すぎて、カレーの味どころか先輩のシャンプーの匂いしかしないんですけど」
「な、ななな……ッ! 貴様、生放送中に何を不適切な発言を……! 罰として、罰として……手を繋いでやり直すわよ!」
モニター越しに、憐の父である理事長が、札束の山に埋もれながら不敵に笑う。
「ふははは! 娘の『初恋』が1秒間に3000万円を稼ぎ出す! 恋愛禁止にしていた頃より、恋愛を売る方が儲かるとは皮肉なものだ。……さあ、次は『二人きりの混浴露天風呂配信(※全年齢対象)』の準備だ!」
「理事長、それはさすがに倫理委員会が黙っていません!」
「黙れ! 復興費用の半分は、もう憐と羊の指輪代として計上してあるんだ!」
「……ねえ、贄田くん」
配信の最後、カメラが少し遠のいた時、憐は小声で囁いた。
それは、マイクがギリギリ拾えるかどうかの、世界一甘い「校則違反」だった。
「……配信が終わったら。……カメラのないところで、もう一度……さっきの続き、していいかしら?」
「……ええ。今度は僕から行きますよ、憐さん」
その瞬間、全世界の視聴者の鼓動(とサーバー)が停止した。
総視聴者数、人類の半分。
スパチャ総額、1000億円突破。
恋愛禁止学園の歴史は終わった。
しかし、**「世界一稼ぐバカップル」**の伝説は、まだ始まったばかりである。
(本当の完)
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