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海洋高校−物語は波のように−

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海洋高校−物語は波のように−

7 - 第4話「声の残響が、止まらない」

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2025年07月31日

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第4話「声の残響が、止まらない」

登場人物:セナ=リューク(澄属性・3年・卒業間近)





廊下の天井から、声が落ちてくる。


セナ=リュークは、顔を上げなかった。

背の高い、細身の体。肌は光を弾くように透明感があり、濡れたような髪は首筋にかかる。

澄属性特有の制服は淡い灰水色。胸元に付いた「卒業予定者章」がひときわ薄く光っていた。





その朝も、音は続いていた。

自分の声──“昨日の自分”が放った言葉が、廊下や壁の波に残って、繰り返していた。


「大丈夫、大丈夫、わたしは──」


その声は、校舎のどこにいても聞こえる。

誰も直接は言わないけど、生徒たちはそれを「セナの声」と知っていた。





ソルソ社会では、感情の波が環境に記録されることがある。

特に澄属性は、共鳴の濃度が薄く、逆に“感情の抜け殻”を外に残しやすい。

声が澄みすぎると、空間がそれを覚えてしまう。

セナの声は、何度も学内の壁に刻まれていた。





「もう消さないの? それ」

同じクラスの圧属性・ミトが言った。

背が低く、重たいまつ毛の向こうから見上げてくる。


「消すの、こわい」

「……なんで?」

「いまのわたしより、きっと昨日のわたしの方が、ちゃんと“生徒”だった気がするから」





セナは、もう変質を終えている。

“個性が完成しかけている”と言われる段階。

でも、それが不安だった。

完成してしまったら、波は止まってしまう気がした。

その先の自分が「誰なのか」わからなかった。





その夜、セナは記録室の裏手にある小さな水草水槽の前に座った。

そこでたまにだけ掃除をしている非常勤の先生──

シオ=コショーが通りかかった。


「あの……声、って、消えますかね……自然に」

「うーん……うまくいけば、海みたいに……すこしずつ、深くなるだけだよ」


それだけ言って、彼は泡の音といっしょに消えた。





翌朝、残響はまだあった。

でも、少しだけ低くなっていた。

それはまるで、**“波の奥に沈んだ声”**のようだった。


変質は終わってない。

卒業も、たぶん、まだ“途中”だ。





完成しそうな自分の輪郭が、少しだけゆらいでいる。

それがいまのセナには、なぜか心地よかった。




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