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「見つけたぞ…アカシックレコード…!」
「おい!何で俺の部屋の窓破壊すんだ!?」
俺は言いながら相手を見つめた。相手は黒い大きな翼を生やしている…天狗のようだ。
「おい日記…あいつ、天狗か?」
「天狗であってるよ。というか、だいぶ君人狼に向いているね。一瞬で敵を見破ったようだし」
「何をごちゃごちゃほざいてる!」
「ちょっと落ち着け…一体何」
相手がそういうなり辺りで突風のような風を切る音がした。
「ちょっと、あぶな!!」
「早く逃げて!ソイツは混沌(カオス)だ!」
「はっ!?」
言われるがままに俺は走り出す。家の扉の鍵を閉めることも忘れ、夜の街に飛び出した。
「はあ、はあ…ここまでくれば大丈夫か?」
俺は裏山まで走ってきた。流石に息が上がり、その場で立ち止まり、さっき日記が言っていたことを思い出す。
「日記!カオスって何だ!」
「カオスは特定の強い種と他の種のハイブリッドだよ!いわゆる混血のことさ!あいつは天狗と…!」
風を切る音。
「まさか…」
「…鬼だよ!」
嘘だ。こんなに早く追いつかれるなんて。
「森に入って撒こうとでもした?でも残念、そこの本が言うように、僕は天狗と鬼の混血なんだ。だから森は僕の狩場に等しい。簡単に言うと、僕にとって有利な地形なんだ。だから君の負け」
あいつはそう言い、地面に降りてきた。先ほどは暗闇でわからなかったが、鬼のような恐ろしい仮面をつけていた。よく響く声、青みを帯びたよく切り揃えられた髪と言い、こいつは美形だ。絶対。爆発しろ!なんて言っている場合ではない。
「さあ、アカシックレコードを渡せ。渡したらお前が人狼であることも言わないし、見逃す」
俺は日記をしっかりと抱きしめ、しばらく黙った。相手はこちらを深く観察しているようだ。
(一体、どうすれば…?)
あんな速さでは到底逃げ切ることは難しい。かといって日記を手放してしまうと、俺の体を戻してもらう約束はどうなる?
…答えは、一つ。
「さあ、早く渡し…」
俺は狼に変身して、アイツに向かって爪を振り下ろす。アイツは風切り音がする前に気付いたようだが、それでも体制を崩して飛び退いた。アイツがふらついた刹那、俺は続けて飛びつき、爪での攻撃を試みる。
しかし、相手に読まれていたようでアイツは俺の振り下ろした腕を葉団扇で阻み、横蹴りを食らわしてきた。しかし俺は人狼。身体が丈夫なため、ちょっとやそっとで動くことなどない。
「何のを!!」
俺は相手の顔に思い切り噛みついた。殺す気などないが、こちらから攻撃しなければ相手にやられてしまう。悪く思わないでくれ。
「っ…!」
流石に相手にも聞いたようで、先ほどの突風の一撃で俺を追い払った。俺は飛ばされたもののすぐに立ち上がり、口に咥えたものを吐き出す。残念、仮面の破片だ。相手を見ると、ちょうど仮面のツノの部分が折れている。
2人は睨み合う。
「…」
茂みから1人の者が見ていることにも気づかずに。
天狗からは怒りの念が感じられる。
天狗は静かに背中にかけた斧を掴んで…
「!?」
俺たちは丁度振り返った。
「あれは影狼の…”月夢”だ!逃げて、危険だよ!」
日記が喚く。その声に気づいたのか、リーダーらしい者(狼?)が振り返る。
「ほう…見る目がある…流石アカシックレコードだな…そう、我らこそ影狼の一角…”月夢”だ」
そう言い、静かにこちらを観察する。
「ふむ…人狼と、混沌の子か…悪くない、我らの仲間となれば見逃してやろうぞ」
ソイツが言葉を言い終えるかどうかの時、天狗は葉団扇を使ってソイツらに爆風を放った。俺が吹き飛ぶほどの爆風を受けたのにも関わらず、ソイツらはまるで微風とでもいうふうに見事な身のこなしで避けた。
「なっ…!」
天狗は動揺したようだった。何故ならば、狼の同種である俺には聞いたのに、狼たちには効かないから。狼たちは一斉に天狗に襲いかかる。流石に空までは飛べないのか、狼達は天狗を見上げ、吠えている。しかし…
「そんな子供騙し、効かぬわ」
リーダーはそう言い、美しい遠吠えをあげた。その刹那、俺たちは頭がふわふわし出した。
「月の歌声(ルーナス・ボイス)…!聞いてしまったものは脱力する!」
日記の必死な声を聞き、俺は正気を取り戻した。
慌てて耳を塞ぎ、上を見上げると…
「…!天狗が!!」
落ちていた。おそらくアイツは耳を塞ぐ手段を持っていない。両手が塞がっているから…
「…危ない!」
慌てて俺は駆け寄り、落ちてくるアイツを空中キャッチ!
…クッソ、これは恋人にしたかったのに…
「大変勇気のある行動だ。だが…若い。甘い。意味がないのう…潔く、大人しく仲間になった方が賢い選択であり、正しかったというのに」
すると、またリーダーが吠えだす。不思議な美しい声で。ま、マズイ、両手の塞がった俺に耳を塞ぐ手段なんてない。脱力して、倒れ込みそうになった時…
車が走ってきて、狼達を跳ね飛ばした。
「グギャアア!!」
「キャヒーーーン!」
俺たちは突然のことにわけがわからなくなる。
「早く乗って!僕は味方だよ!」
幼い声。よくわからないが、藁にもすがる思いで車の取っ手を引っ掴み、ガチャリと音を立てて中に入った。
ブウゥーン!!
車は激しい音を出し、煙を上げて進む。結構荒っぽい運転だが、あのイかれた狼達を撒くにはそれくらい出ないといけないのだろう。それにしてもあちこちにぶつかっているような…限界だ。意識が途切れる。
…
…
目が覚めた。
「こ、ここは一体…?」
起き上がると、体から毛布がずり落ちる。どうやらソファに寝かされていたようだ。そばにあるひび割れた鏡を見ると、頭には包帯が巻かれていることがわかる。どうやら、天狗の攻撃でどっかにぶつけたようだ。
隣には、天狗…許さん。やっぱイケメンじゃねぇか。整った顔立ちをしており、歳は俺とあまり差がないようだ。隣には仮面が置かれており、治療のために外されたようだった。コイツも頭とかを怪我している。
…しばらく辺りを見まわして気づいたが、どうやらここは森のどこかの廃墟…それも、ボロ屋のようである。おそらく外から見ればゴミが積み上がっているようにしか見えないのだろう。
「ねぇ、起きたの?」
声がしたため振り返る。そこにいたのは…