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#恋愛
もな
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カナリア
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ruruha
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#スリースター
新月 つむり🐌
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第1話 高尾クライム
登場人物の見た目
遠野カケル
十八歳。
短く切った茶色の髪は少し跳ねており、黄緑の競技ジャケットと灰色のパンツを着用している。
細身ながら脚は引き締まり、腰には補給水と緊急発信器を装着。
胸には十九番のゼッケンが付いている。
久瀬リョウ
二十六歳。
灰色の短髪に鋭い目つき。
紫の競技ウェアを着用し、薄手の登山グローブをはめている。
肩から脚まで無駄なく鍛えられた体格で、胸のゼッケンは三番。
牧原セナ
二十二歳。
茶色の髪を短いポニーテールにまとめ、緑とベージュを組み合わせた競技ウェアを着ている。
小柄で身軽な体格。
胸のゼッケンは七番。
峰岸タクト
三十四歳。
柔らかく整えた茶色の髪に、緑の中継ジャケット。
細いフレームの眼鏡をかけ、山麓の実況席で複数の中継画面と順位表示を見渡している。
春木ミナ
三十二歳。
元ピークランナー。
肩まで伸びた灰色がかった髪を後ろで束ね、ベージュのジャケットを着ている。
穏やかな目元ながら、レース中は画面からほとんど視線を外さない。
◆
午前七時四十五分。
高尾山の麓が、人で埋まっていた。
道沿いには企業の看板が連なり、その向こうで観客がスマートフォンを掲げている。
屋台から湯気が立つ。
遠くでは巨大画面が点灯し、二十四人の顔写真と数字が並んだ。
一番。
二番。
三番。
数字の横では倍率が絶えず動いている。
その最下段近く。
十九番。
遠野カケル。
48.6。
カケルは画面を一度だけ見上げ、すぐに靴ひもへ視線を戻した。
結び目を引く。
もう一度引く。
指先がわずかに震えていた。
その横を七番の牧原セナが通り過ぎる。
軽く跳ねながら脚をほぐし、十九番の数字を見る。
「ずいぶん付いたね」
「何が?」
「倍率」
カケルが顔を上げる。
セナは笑って、自分の七番を指で叩いた。
「私、九・八倍」
「俺、四十八・六」
「人気ないねえ」
「今日が初めてだから」
「勝ったら面白いよ」
セナはそのままスタート地点へ走っていった。
カケルは大型画面をもう一度見る。
十九番。
48.6。
数字が49.1へ変わった。
さらに上がった。
「もっと人気なくなった」
思わず口から漏れた。
頭上を中継ドローンが通過する。
その映像が巨大画面へ切り替わった。
山麓。
観客。
スタート地点。
そして二十四人のピークランナー。
実況席のマイクが入る。
さあ、まもなく始まります、高尾クライム! 本日の登峰競走は二十四名による一斉スタート! ここ高尾山の麓から、山頂に設置されたゴールラインを目指します!
観客の歓声が一段大きくなる。
本日は登峰競走を初めて見る方も多いでしょう! ピークランナーは自分の脚だけで山頂を目指すわけではありません! コース各所にはモビリティスポンサー提供の競技用モビリティが配置されています!
画面にコース図が映る。
第一モビリティ区間。
森林区間。
岩場区間。
最終登坂区間。
走るか! 乗るか! 乗り換えるか! それを瞬時に判断しながら頂上を目指す、それが登峰競走です!
カケルが両手を握った。
スタート地点へ入る。
十九番の位置は後方だった。
前方には三番、久瀬リョウ。
久瀬が肩を回す。
その名前が読み上げられただけで観客席が揺れた。
そして本日の一番人気! 三番、久瀬リョウ! 単勝二・四倍! 昨年の高尾クライム二着! 今年こそ優勝なるか!
久瀬は片手を上げた。
さらに歓声が広がる。
対して十九番、遠野カケル! 本日が公式戦初出場! 十八歳の新人ピークランナーです!
カケルの顔が大型画面いっぱいに映った。
思わず視線を逸らす。
現在の単勝は……五十一・三倍まで上がりました!
さらに上がりましたね。
実績がありませんからね。ただし、事前測定では急斜面でかなり良い数字を出しています。
カケルがゆっくり息を吐く。
前方のスタート装置が点灯した。
五。
歓声が遠ざかる。
四。
カケルは腰を落とした。
三。
久瀬が前を見る。
二。
セナが笑みを消す。
一。
号砲。
二十四人が一斉に飛び出した。
高尾クライム、スタート!
靴音が一つの塊になった。
カケルは前の選手の背中を追う。
右から一人。
左から二人。
肩が触れそうになる。
舗装された登り道へ集団が流れ込む。
序盤は第一モビリティステーションまで約六百メートル! ここで脚を使うか、それとも先頭集団についていくか!
久瀬が前へ出る。
セナもその後ろへ続いた。
カケルは十九位。
十八位。
一人抜く。
十七位。
息はまだ乱れていない。
道の先にスポンサー旗が見えた。
その下に、何十台もの競技用モビリティが並んでいる。
第一モビリティステーションです!
選手たちが散った。
二輪型へ十人。
四輪型へ六人。
立ち乗り型へ五人。
久瀬は迷わず細身の立ち乗り型へ飛び乗った。
三番、軽量高速型!
久瀬選手は去年もここで同型を使っています。
セナは小型四輪へ。
七番は安定型!
カケルがステーションへ入った。
二輪型が一台、目の前に残っている。
手を伸ばす。
その瞬間。
前方で二輪型同士が詰まった。
狭い道へ十台近くが殺到している。
カケルの手が止まった。
そのまま横を走り抜ける。
十九番、乗らない!
徒歩です!
第一ステーションを完全に通過しました!
観客席がざわめく。
これは思い切りましたね。
登峰競走ではモビリティに必ず乗る必要はありません! 配置された機体を使うかどうかもピークランナー自身が決めます!
前方でモビリティが列になった。
道幅が狭くなる。
一台が減速。
後ろも減速。
さらに後ろも詰まる。
カケルが端を走る。
一人抜く。
二人。
三人。
十九番が上がってきた! 十七位、十五位、十三位!
徒歩で三台をかわした!
カケルの口元が少し上がった。
だが前方が開けた瞬間、モビリティ勢が一気に加速する。
久瀬の姿はもう遠い。
カケルの表情が戻る。
第一ステーションを越えた選手たちは高速区間へ! ここからは乗っている選手が圧倒的に有利です!
順位表示が動く。
十九番。
十三位。
十四位。
十五位。
カケルが抜き返されていく。
十五位まで後退!
やはり徒歩だけでは厳しいですね。
ただし次のステーションは遠くありません。十九番が何を狙っているのか、まだ分かりません。
カケルの呼吸が少しずつ速くなる。
坂を登る。
目の前を二輪型が通過した。
さらに四輪型。
土埃が舞う。
カケルは腕で顔を覆い、そのまま走った。
第二モビリティステーション。
残りの機体は少ない。
二輪型が二台。
四輪型が一台。
カケルが一気に二輪型へ向かった。
十九番、今度は乗る!
ハンドルをつかむ。
右足を乗せる。
機体が前へ飛び出した。
加速!
十九番、一気に速度を上げました!
カケルの体が低くなる。
一人。
二人。
前を走っていた選手が後ろへ消える。
十二位!
さらに十一位!
道が曲がる。
カケルは身体を傾けた。
車輪が土を削る。
十位!
新人がトップテンへ入ってきました!
大型画面のオッズが動く。
十九番。
51.3。
42.8。
35.6。
実況席でも数字が動いています! 十九番への投票が増えている!
レース開始後も規定時刻までは投票できますからね。この走りを見て買い足す人もいるでしょう。
カケルには聞こえない。
目の前の道だけを見る。
九位の背中。
八位の背中。
アクセルを握り込む。
その瞬間だった。
ガンッ。
機体が跳ねた。
前輪が大きな石を踏む。
カケルの身体が浮いた。
観客席から声が漏れる。
着地。
もう一度跳ねる。
後部から異音。
ガガガガッ。
速度が落ちた。
十九番、トラブル!
カケルがハンドルを切る。
道の端へ寄せる。
機体が完全に停止する前に飛び降りた。
モビリティ故障!
カケルは一度だけ機体を見る。
そして走り出した。
迷わない!
登峰競走では競技中に故障したモビリティを修理する義務はありません! 安全な位置へ寄せたら、そのまま乗り捨てて続行できます!
機体は大会終了後に回収班が回収します!
カケルが岩場へ入った。
ここから第三セクション!
岩が連続する登坂区間です!
順位は十二位まで後退!
カケルが岩へ手をつく。
身体を持ち上げる。
足場を探す。
一段。
また一段。
前方では四輪型を押している選手がいた。
タイヤが岩へ引っかかる。
選手が何度もアクセルを入れる。
動かない。
カケルが横を抜ける。
十一位!
別の選手は二輪型を降りて押していた。
その横も通る。
十位!
ここで徒歩組が強い!
岩場ではモビリティが邪魔になることもあります!
カケルが岩を蹴った。
両手を使う。
身体を引き上げる。
九位。
さらに前。
八位。
息が荒い。
汗が顎から落ちる。
それでも止まらない。
七位!
十九番、七位まで来た!
オッズ表示がまた変わる。
35.6。
28.2。
21.7。
十九番の単勝が二十一・七倍!
一気に人気が上がっています!
カケルが岩場を抜けた。
目の前に道が二つ現れる。
右は広い登山道。
左は急斜面。
小さな案内表示が揺れている。
カケルは左を見る。
足を止めない。
そのまま左へ。
十九番、短縮ルートへ!
ここは通行可能な競技ルートですが、かなり急です!
距離は短い。ただし脚への負担は大きいです。
木の根。
岩。
湿った土。
カケルの靴が滑る。
膝をつく。
すぐ立つ。
右手で木をつかみ、身体を引き寄せる。
呼吸が崩れる。
それでも上を見る。
急斜面の向こうから歓声が聞こえ始めた。
先頭は現在三番、久瀬! 二位との差は十二秒!
久瀬が軽量モビリティを乗り捨てる。
最後の岩場へ入った。
その後ろをセナが追う。
七番、現在三位!
そして短縮ルートから……
カメラが木々の間を捉える。
黄緑のジャケット。
十九番!
十九番が出てきた!
カケルが本道へ戻る。
目の前に五位の選手。
抜く。
四位。
さらに前にはセナ。
セナが振り返った。
目を見開く。
「本当に来た」
カケルは答えない。
横へ並ぶ。
二人の足音が重なる。
七番と十九番が三位争い!
セナが前へ出る。
カケルが追う。
残り一・五キロ!
ここから最終モビリティステーションです!
広場に機体が並ぶ。
高速二輪型。
軽量立ち乗り型。
悪路用四輪型。
セナは軽量型を取った。
カケルも手を伸ばす。
だが、一瞬止まる。
前を見る。
その先には階段状の登山道。
さらに上には舗装路が見える。
カケルは機体を取らなかった。
また徒歩!
十九番、最終ステーションも通過!
セナの機体が加速する。
一気に差が開いた。
四位へ後退!
これは苦しい!
カケルの脚が重くなる。
肩が上下する。
一歩。
また一歩。
階段を登る。
前を行くモビリティの音が遠ざかる。
五十メートル。
七十メートル。
カケルが歯を食いしばる。
やがて階段が終わった。
舗装路。
その先でセナが停止していた。
軽量型の車輪が段差で傷み、速度が出ていない。
カケルが横を抜ける。
三位!
十九番、再び三位!
セナが機体を乗り捨てる。
走り出す。
残り八百メートル!
先頭、三番久瀬!
二位、十一番!
三位、十九番!
四位、七番!
カケルの前に十一番が見える。
肩が大きく上下している。
カケルが近づく。
二十メートル。
十メートル。
五メートル。
並んだ。
十一番が横を見る。
カケルが一歩前へ。
十九番、二位!
ついに二位まで来た!
山頂の歓声が聞こえる。
久瀬が振り返った。
その顔から笑みが消えた。
残り五百メートル!
一番人気と、現在単勝十八・九倍まで上がってきた新人!
久瀬が速度を上げる。
カケルも追う。
二人の間は三十メートル。
二十五。
二十。
山頂のゴール設備が見えた。
左右にはスポンサー看板。
観客が柵の向こうで手を振っている。
残り三百!
久瀬が最終モビリティへ飛び乗った。
小型高速機。
一気に加速。
カケルは走る。
差が開く。
また開く。
五十メートル!
ここは久瀬が有利!
ですが、この先には最後の急坂があります!
高速機が坂へ入る。
速度が落ちる。
久瀬が前へ身体を倒す。
機体が唸る。
カケルが近づく。
四十。
三十。
久瀬が機体を捨てた。
走る。
残り百五十メートル!
カケルの腕が大きく振れる。
久瀬が振り返る。
二人の距離が縮まる。
二十メートル。
十メートル。
五メートル!
十九番が来た!
山頂が揺れる。
カケルが久瀬の横へ並ぶ。
久瀬の脚が伸びる。
カケルも前へ。
残り五十!
並んだ!
残り三十!
久瀬!
カケル!
残り十!
二人が身体を前へ投げ出した。
ゴール装置が反応する。
花火が上がった。
歓声が爆発する。
二人は数歩進み、そのまま地面へ倒れた。
判定できません!
写真判定です!
カケルは両手を地面についた。
息を吸う。
入らない。
もう一度。
隣で久瀬が寝転んだまま胸を上下させている。
少し離れた場所へセナが飛び込んできた。
三着争いも接戦!
しかしまずは優勝判定です!
大型画面が切り替わる。
ゴールの瞬間。
久瀬。
カケル。
二人の胸が線の上にある。
映像が止まる。
拡大。
さらに拡大。
観客が静かになる。
カケルが顔を上げた。
久瀬も身体を起こす。
画面の端に数字が表示された。
十九。
三。
判定が出ました!
一着、十九番!
遠野カケル!
差は二センチ!
花火が再び上がった。
カケルは動かなかった。
巨大画面を見る。
十九番。
遠野カケル。
一着。
その文字を何度も目で追う。
久瀬が立ち上がった。
カケルの前まで歩く。
手を差し出す。
カケルが見上げる。
その手をつかむ。
久瀬が一気に引き起こした。
「次は二センチじゃ済ませない」
カケルの口元が緩んだ。
「俺も」
山頂の歓声が続く。
確定順位が出ました!
一着、十九番、遠野カケル!
二着、三番、久瀬リョウ!
三着、七番、牧原セナ!
セナが両膝に手をついたまま笑う。
「本当に勝っちゃった」
カケルはまだ息を整えられない。
山頂の大型画面が切り替わった。
今度は順位ではない。
払戻金。
そして注目の払戻金です!
締切直前に十九番への投票が増えましたが、それでも大波乱となりました!
画面へ数字が並ぶ。
単勝 19番 1,890円
複勝 19番 510円
複勝 3番 130円
複勝 7番 260円
二人順位・順不同 3-19 4,620円
二人順位・着順指定 19→3 12,840円
三人順位・順不同 3-7-19 18,760円
三人順位・着順指定 19→3→7 96,540円
三人順位の着順指定、十九番、三番、七番!
百円分の投票に対し、払戻金は九万六千五百四十円!
山麓の観客席から別の歓声が上がった。
大型画面に映った男性が両腕を上げて跳ねている。
その隣では投票券を見つめたまま固まっている女性。
高尾クライム、初戦から大波乱です!
デビュー戦の十八歳!
事前人気は下位!
それが一番人気の久瀬を二センチ差で破りました!
カケルが山頂の端まで歩いた。
眼下に街が広がる。
山麓の大型画面にも、自分の十九番が映っている。
モビリティスポンサーの看板。
観客。
中継機。
まだ上がり続ける花火。
カケルは胸の十九番をつまんだ。
少し曲がっている。
泥も付いていた。
久瀬が隣へ来る。
「初戦でここまで派手にやる新人、久しぶりに見た」
「途中で一台壊した」
「壊したんじゃない。壊れたんだろ」
「たぶん」
久瀬が笑った。
山頂の表彰台へ十九番が表示される。
遠野選手、表彰エリアへお願いします!
実況の声が響く。
カケルは顔を上げた。
表彰台までの短い道を見る。
一歩。
脚が震えた。
セナが後ろから肩を押す。
「山は登れたのに、そこまで歩けないの?」
「今、急に疲れた」
「優勝者でしょ」
カケルが歩き出す。
観客の拍手が近づく。
表彰台の中央へ立つ。
久瀬が二位の位置へ。
セナが三位へ。
三人の背後に高尾山の景色が広がる。
それでは改めて、本日の高尾クライム優勝者!
十九番!
遠野カケル!
歓声。
カケルは少し迷ってから、片手を上げた。
さらに歓声が大きくなる。
初出場、初優勝!
登峰競走に新しいピークランナーが現れました!
カケルの目が山道へ向く。
乗らなかった第一ステーション。
故障した二輪型。
登った岩場。
選んだ急斜面。
どれも今は木々の向こうに隠れて見えない。
カケルは胸の十九番から手を離した。
表彰台の向こうでは、次の大会を知らせる大型表示が点灯する。
筑波クライム。
カケルがその文字を見る。
久瀬も見る。
セナも見る。
山頂の風が三人の競技ウェアを揺らした。
高尾クライム!
勝ったのは新人、遠野カケル!
しかし、登峰競走のシーズンは始まったばかりです!
次の山でも、ピークランナーたちは頂上を目指します!
カケルは小さく息を吐いた。
今度は、脚の震えが少しだけ止まっていた。
コメント
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ついに読んだわ、これ! めっちゃ熱かった🔥 まずカケル、事前人気48.6倍でデビュー戦優勝って展開が渋すぎる。第一モビリティで乗らずに徒歩で抜く判断とか、岩場でじわじわ順位上げるところとか、地味だけどちゃんと“理屈”があって強いのが好き。 最後の久瀬との二センチ差の写真判定、しかも「次は二センチじゃ済ませない」「俺も」って、ライバル関係がもうできてるの最高すぎる。セナの「勝ったら面白いよ」が伏線回収したのも気持ち良かった。 筑波クライム、絶対追うわ。続きマジで楽しみにしてる!