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水面に落ちた星屑

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水面に落ちた星屑

第31話 - 第31話

140

2024年07月06日

#恋愛

#大人の恋愛

#大人ロマンス

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

#純愛

瑠璃マリコ

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140

瑠璃マリコ

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優羽がテラスのテーブルへと向かうと、もう既に岳大が座っていた。

テーブルの上には、缶ビールが四～五本と、乾きもののおつまみがいくつか置いてある。

岳大が自販機で買ってくれたのだろう。

優羽は財布を部屋に置いてきた事を思い出し、取りに戻ろうとしたところへ岳大が声をかける。

「今夜は僕の奢りですからお気になさらずに」

「すみません。では、お言葉に甘えて」

優羽はお辞儀をしてから席に着いた。

テラス席の前は森になっていて木々の上には星空が見えた。

今夜も満天の星空だ。

木々の隙間には無数の星が輝いている。まるでイルミネーションのようだ。

川の方からはカエルの鳴き声が響いている。

そして時折風が吹き、サワサワと木々の葉を揺らした。

岳大と優羽はビールを開けて乾杯した。

「お疲れ様でした！」

「佐伯さんもカメラマンお疲れ様でした！」

二人は缶ビールをグビグビ飲むと、フーッと息を吐いた。

あまりにも同じタイミングだったので思わず笑う。

そこで優羽が言った。

「東京に戻られたら、雑誌の写真のお仕事ですか？」

「はい。撮った写真を編集したり雑誌社の方と内容を詰めていったりと、まだ細かい作業が残っています」

「そうなんですね。撮られた写真はいつ頃雑誌に載る予定なのですか？」

「今回の写真は秋ですね。十月号に載る予定です」

「私も買わせてもらいます。山でどんな写真を撮られたのか見たいので」

「雑誌が出来たらいつも山岸さんに送るので、ついでに優羽さんの分も入れておきますよ。だからわざわざ買わないで下さい」

岳大は目尻に皺を寄せて穏やかに笑うと、ビールを一口飲んだ。

「え、でもそれじゃあ、売り上げに貢献できない……」

優羽の言葉に岳大は声を出して笑った。

「大丈夫ですよ。読者は全国にいっぱいいますから」

岳大はそう言ってまたビールを一口飲んだ。

「もう一つ、鉄道会社のポスターの続編も作る予定なんです。今回撮った写真が使えるかもしれません」

「あのシリーズの続編なんですね。楽しみにしています」

優羽は嬉しそうに微笑むと、岳大が買ってくれたつまみをつまんで食べ始めた。

すると岳大が少し改まって言う。

「実は優羽さんにお願いがありまして。僕はアウトドアブランドの経営もやっているのですが、そのコーディネートについて少

しアドバイスをいただけないかと」

いきなりそんな事を言われたので優羽はびっくりする。

「『peak hunt5』というアウトドアブランドなのですが、知ってるかな？」

「もちろん知ってます。アウトドア系では有名ブランドですし、うちの兄も愛用していますから。で、そのコーディネート

が？」

「はい。実はそのカタログに載っているモデルさんの写真がですね、僕のイメージとはちょっと違うというか……」

岳大はそう言った後『peak hunt5』のネットショップをスマホに表示した。

優羽がそのサイトを覗くと、そこには女性ファッション誌にいるような華やかな女性が、シックなアウトドアブランドを身に着

けてはち切れんばかりの笑顔でポーズをとっていた。優羽はそれに違和感を感じる。

「これを見てどう思いますか？」

岳大に感想を求められた優羽は、思った事を素直に伝えた。

「はい。えっと、アウトドアブランドのモデルさんにしては、少し華美で派手なイメージかなって思います」

「ですよね？　で、他には？」

「はい、このブランドは私の知る限りでは、アウトドアの上級者が質のいいものを求めて買うというイメージです。デザインも

流行に左右されずにシンプルで長く愛用出来るものばかりですよね？　そのブランドイメージにはそぐわない雰囲気かなぁ

と……すみません、素人の勝手な意見ですが」

「いえいえ正直な意見をありがとうございます。もし優羽さんだったら、どんなモデルさんを選ばれますか？」

「そうですねぇ、私だったら華やかなタイプよりももっとナチュラルな方を選ぶかなぁ。メイクもこの女性達は街にいるような

きっちりメイクですよね。でも実際山にそんなメイクで行く人は少ないですし。だから自然の中で浮かないようなイメージがい

いのかな？」

「そうですよね。僕もそちらの方がいいように思います。今のモデルさんだと何か違うなぁとは感じていたのですが、だったら

具体的にどういうイメージがいいのかって聞かれると上手く説明出来なくて。僕はそういう系は苦手分野ですから」

岳大は頭を掻きながら恥ずかしそうに笑う。

しかしすぐに真剣な表情に戻ると優羽に言った。

「優羽さん、これは一つ提案なのですが、もしよかったら僕のアシスタントをやっていただけませんか？」

岳大の言葉を聞いた優羽は、びっくりして飲みかけのビールを吹きそうになった。