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水面に落ちた星屑

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水面に落ちた星屑

第32話 - 第32話

114

2024年07月06日

#恋愛

#大人の恋愛

#大人ロマンス

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

#純愛

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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優羽は岳大の言葉に驚いていた。

「えっ？　アシスタントですか？」

「はい。あ、アシスタントと言っても、アドバイザーみたいな感じでしょうか？　僕が相談した内容にアドバイスをくれたり、

モデル選びやコーディネートについて助言していただくような感じで。もちろん、東京とのリモートで構いません」

優羽は信じられないという顔をして岳大に聞いた。

「でも、そういうのって東京にプロの方がたくさんいらっしゃるのでは？」

「はい、実は今もプロの人が監修してくれています。それなのにイメージと全然違うでしょう？

雑誌社を通すとね、こちらが意見を言ってもそれじゃあ売れない、もっと目立つ事をしないと駄目だって押し切られてしまうん

ですよ。やはり売れ筋路線第一主義っていうのかな？

この『peak hunt5』は雑誌社が作ったブランドだと思われていますが、実は違うんです。これは僕が一人で立ち上げたブラン

ドなんですよ。そこへ後から雑誌が乗っかって来たという感じなんです。

雑誌名の『peak hunt』は、僕のブランド名を貸してくれと言われて貸しました。

元々の雑誌名は『山と自然』だったのを、今の編集長が僕のブランド名を使いたいと言ったのでお貸ししただけなんです。

その契約期間ももうすぐ切れるので、次の契約は更新しない事にしました」

岳大の話を聞いて優羽は驚きを隠せずにいた。

まさか『peak hunt5』が先に出来ていたとは思わなかったからだ。

おそらくほとんどの人が、雑誌が出来た後に提携ブランドの『peak hunt5』が出来たと思っているだろう。

「それは意外でした。佐伯さんが作られた思い入れのあるブランドだったなんて。きっとうちの兄も知らないと思います」

「ハハッ、おそらくみんなそう思っていると思いますよ。それでも提携した最初のうちはまだ良かったんですよ。ここ最近です

ね、ブランドイメージが全く違う方向へ進み始めたのは。だから今のうちに立て直したいんです。そこで優羽さんのお力をお借

り出来ないかと…」

優羽は岳大の話を聞いて正直かなり興味を引かれていた。

確かにこのままでは『peak hunt5』は他の大衆受けを狙うアウトドアブランドと同じ枠に成り下がってしまいそうだ。

以前兄の裕樹が言っていた。このブランドの魅力は、大自然の険しさに耐え得る本物のアウトドアブランドだという事。

だから、プロの登山家や探検家も愛用する岳大のブランドがこのままファッション性だけを意識した安っぽいブランドになって

しまうのは勿体ない気がした。そして岳大はそれを立て直すために協力して欲しいと優羽に言っている。

そこで優羽は覚悟を決めた。

「わかりました。お力になれるかどうかはわかりませんがやらせていただきます」

「ありがとう。良かった…思い切ってお願いしてみて」

岳大は安心したようにホッと息を吐く。

それから嬉しそうに缶ビールをグイッと飲み干した。

「リモートとはいえお時間を取らせてしまうのは事実です。この件は僕から山岸さんにきちんと了解を取っておきますので、ご

安心下さい。そして報酬については、毎月一定金額をお支払いさせていただきますので」

「えっ？　報酬なんて…そんな、ただアドバイスするだけですから」

「いえ、ゆくゆくは撮影の立ち合いや商品企画も担当してもらうかもしれません。その時の報酬はまた応相談という事で！　と

にかくよろしくお願いします。優羽さんのセンスに期待していますよ」

岳大はそう言うともう一本缶ビールを開けてから満足気にビールを飲み始めた。

その夜部屋に戻った優羽は、今起きた事は夢だったのでは？　と思ってしまうほどフワフワした気分だった。

岳大の話では、普段の仕事に関してはパソコンでのやり取りが主だが、それ以外に年に二回あるカタログ撮影に参加してもらう

可能性もあるかもしれないと言った。もちろん優羽の休みが合えばの話だ。

その際は交通費と宿泊代は岳大の事務所が持ってくれるという。

仕事内容は今後の商品開発はもちろんの事、それに付随するカタログやネットショップのデザイン、商品のコ―ディネート、そ

してモデルの選出等多岐にわたる。

優羽は自分みたいな素人にそんな仕事が出来るのだろうかと、正直不安でいっぱいだった。

しかし好きなファッションの仕事を目の前にしてワクワクしている自分もいる。

そして何よりも嬉しかったのは、独学で勉強してきた事がこれから役に立つかもしれないという事だ。

今日の結婚式でそれは充分に証明されたが、今度はさらにプロの世界で試す事が出来るのだ。

優羽は高鳴る胸を抑えつつなんとか眠ろうと努力したが、興奮してなかなか寝付けない。

優羽がやっと眠りについたのは、夜明け近くになってからだった。