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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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翌日岳大は穏やかな気分の朝を迎えていた。


昨日優羽の実家へ行き無事に交際の許可を得る事が出来た。そして優羽の家族は岳大をあたたかく迎え入れてくれた。

そして何よりも一番ホッとしたのは流星が岳大の事を受け入れてくれた事だ。

岳大は流星が思春期になる前に男同士の絆を深めておきたいと考えていた。その為にもスタートは一日でも早い方がいい。


岳大は歯磨きと着替えを済ませるとコーヒーメーカーに豆を入れてスイッチを押した。そしてテレビのニュースをつける。それと同時に玄関のインターフォンが鳴った。


(ん? こんな朝早くから誰だ?)


岳大がインターフォンのカメラを覗くとそこには隣人の木崎が映っていた。

岳大すぐに玄関に行きドアを開けた。


「おはようございます。すみません、こんなに朝早くから」

「おはようございます。どうかされましたか?」


すると木崎が言った。


「あ、僕今から出勤なんですけれどその前にこの間の不審車の件を佐伯さんにご報告しておこうと思って」

「ああ、あの件ですか。それはわざわざありがとうございます。何かわかりましたか?」

「はい。あ、でも警察官は守秘義務があるのでそういった情報は迂闊には言えないんですよ。なのでここからは僕の独り言になりますよ、いいですか?」


木崎は少し笑みを浮かべて言った。


「あ、はい、わかりました、独り言ですね……」


岳大も頬を緩ませて話を聞く。


「えっと、あの練馬ナンバーの車の持ち主は東京にある興信所の車でした。なのでおそらく何かを調べていたんでしょうね。それがどんな事なのかはわかりませんが」


木崎は更に続ける。


「ですからまあ危害を加えて来るような車ではないでしょう。向こうも依頼人からの守秘義務があるので逃げたんでしょうね。ただし佐伯さんの身辺を調べている事に変わりはないので念の為充分に気を付けて下さいね。以上です。では仕事に行ってきます。朝早くにすみませんでした」


木崎は笑顔でぺこりとお辞儀をしてから駐車場へ向かった。


「わざわざありがとうございました」


岳大は礼を言ってから玄関のドアを閉めた。そしてリビングへ戻る。


(興信所? 一体誰が何を調べているんだ?)


その時コーヒーのドリップが終わったので岳大はキッチンへコーヒーを取りに行く。そしてカップを持ったままパソコンの前に座った。

コーヒーを飲みながらメールをチェックすると見た事のないアドレスからメールが来ている。

岳大は気になったのでメールを開いてみた。するとメールの送り主は大和翔真だった。


【先日は急にお邪魔したにも関わらず夕食までご馳走になりありがとうございました。思いがけずに飛び入り参加した『ネイチャーストーリーズ23』のオンエアが今から楽しみです。『peak hunt5』の店舗がオープンしたら必ずまた寄らせてもらいますのでその時はよろしくお願いいたします】


そこまでメールを読んだ岳大は思わず微笑む。そして続きを読む。


【すみませんがここからは少し深刻な話になります。実は以前私は『mountain top7』からイメージキャラクターにならないかとのオファーを受けました。でも私が好きなブランドは昔から『peak hunt5』だったのでその仕事を受けるつもりはなく、失礼のないように丁重にお断りさせていただきました。しかしそれ以降大きな仕事が次々とキャンセルになり今までにないような異常な事態が続きました。あ、それで急にオフになってドライブに行ったのが先日伺った日だったんです。仕事のドタキャンは何か見えない力が働いているなーと感じたのでその後色々調べてみました。で、私の仕事の邪魔をしていたのは『mountain top7』だという事が昨日判明しました。そこでもしかしたら今後『peak hunt5』にも嫌がらせや迷惑行為があるかもしれないと思い念の為メールしました。『mountain top7』の背後には大手アパレル会社と広告代理店の電広がついています。井上さんが食事の席で話してくれたカタログ撮影当日のモデルのドタキャンの件も、もしかしたら大手アパレル会社の仕業ではないかと思っていましたが憶測で物事を言いたくなかったのであの時は黙っていました。でも昨日この調査結果を聞いてモデルのドタキャンも奴らの仕業ではないかと思っています。これから新店舗オープン、そしてテレビの取材もまだまだ続くでしょうから佐伯さんもどうか身辺にはくれぐれも注意して下さい。それではいつか仕事でご一緒出来るのを楽しみにしています! 大和翔真】


翔真のメールを読み終えた岳大はコーヒーを持ったまま窓の傍へ行き雪景色を眺めた。

以前優羽が誰かにつけ回されたと聞いた時、実は『mountain top7』の西村が絡んでいるのではないかと岳大は思っていた。

ただそれが優羽個人に対してのものなのか『peak hunt5』に対するものなのかがわからず悶々としていた所へこの翔真のメールが届いた。そして先ほどの木崎の報告もある。

おそらく外で張り込んでいた興信所は岳大のスキャンダルを狙う為のものか、ここへ頻繁に通う優羽を狙ってものかのどちらかだろう。


岳大は怒りのあまり思わずカップを強く握りしめる。そしてあの日道の駅で優羽とぶつかった時の西村の顔を思い返した。

あの時西村は優羽と流星を見てなんともいえない表情をしていた。


岳大は優羽と西村の関係について保坂ディレクターから全て聞いていた。

保坂に聞く前の岳大は、優羽が西村が既婚である事を知った上で付き合っていたのではないかと思っていた。

しかしそうでない事を知り愕然とした。


西村は嘘をついて優羽を騙し彼女の妊娠がわかった途端逃げ出したのだ。


岳大の手には更に力が加わる。手作りの無骨で頑丈な器が割れてしまうのではないかと思うほど強く握りしめている。

岳大は一度深呼吸をするとカップを机に置いた。

そして携帯で広告代理店の田村へ電話をかける。田村にもこの事を伝えておかなければと思った。


田村に電話をした後、今度は共同出資者の佐倉にも連絡を入れた。

佐倉は上場企業に詳しいので『mountain top7』の親会社についてもよく知っているだろう。

岳大は詳細を佐倉に伝えると『mountain top7』の親会社である大手アパレル会社の経営状況について調べて欲しいと佐倉に依頼した。

すると佐倉はお安い御用ですと言って後で連絡をくれると言った。


電話を終えた岳大はフーッと息を吐いて椅子に座る。


今の自分には守るべきものがある。だから絶対に西村の勝手にはさせない。


優羽と流星は絶対に自分が守る……岳大はそう心に誓った。

水面に落ちた星屑

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コメント

3

ユーザー

なななんとここで岳大、健吾、涼平,今話題の優弥が繋がったわ。西村悪い事出来まへんね…翔馬君ホント良い子だわ。

ユーザー

翔真のご実家も気になる! やはり家族を持とうとしている者の愛の強さは半端ないですね❤️‍🔥 まさか岳大さんが気付いているとも知らず、勝ち誇っている西村、そんな態度をしていられるのも今のうちよ😤

ユーザー

流星君のパパになる🆗をもらえた⤴️😊矢先の木崎さんと大和翔真のメールで興信所は西村の差金で、以前優羽ちゃんが付け回されたのも同じだと確信を得た岳大さん。 岳大さんのスキャンダルを狙ってるけど、西村自身がスキャンダルあり過ぎで自滅すれば良いのに💢😡 でも岳大さんの優秀な仲間に調査依頼して、正当なやり方で追い詰めていく様が予想できるので、頑張って首根っこを掴んで自滅させて欲しい🙏✨

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