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この王国を封印する。それはまるで王国そのものが世界を脅かす魔のもののような表現ではあるが、そうするより他ないという事も含めて、あの幼女から伝えられている。それをするために何が必要なのかも。
守り人のひとつはあの幼女からの提供だ。すでにそれは設置されており、その役目を実行している。
王国を中心にして4ヶ所。「+」を右に30°ほど傾けたような位置関係で、右上は埋まった。そして残りのうちひとつは海になる。そう、海で、長年に渡りその役目を頼めるやつなんてのは俺には1人しか思い当たらない。
俺は大鷲を召喚して海に行く。
海にいるはずのあいつはここまで来るとどこにいるのかが本当に分かる。このウロコはそれほどにあの人魚との繋がりが深い代物なのだろう。
だが、どうしたら呼び出せる? あれか? なんか想いを込めたりすれば現れたりするのか? 魔力でも込めてみるか?
いや、海と言えば釣りだな。前世ではよくブラックバスを釣っていたが、人魚も外来種のようなものだろう。
俺は魔術でリールにロッド、ルアーはよく沈むやつで人道的に針は先端を丸くしてある。
タバコを創り出すときと同じで、これも魔道具となってしまったが、この場合普通の釣具などでは無理だろうから都合がいい。
「呼びかたを教えなかった自分を恨めよ?」
よくしなるロッドはルアーを一直線に海底へと送り出した。
スキルというのは、幼女が言っていたように便利だ。あとどれくらいで届くか、その時どうすればいいかも教えてくれる。
届いた! 魔力で操作して人魚を簀巻きにする。そして一気に引き上げて……。
「おぉらあぁっ!」
人魚の一本釣りなど出来るのは俺くらいだろう。上空に打ち上げられた人魚は錐揉みしながら、俺の腕の中に落ちてきた。
「ん? あれか? 急激な水圧の変化で死んでしまったか?」
腕の中の人魚は目を回して口から汚い半固体のものを垂らしている。
「汚ねぇな……リリースするか?」
「あんな無茶苦茶な回転で引っ張られたらそらゲロも出てまうわぁっ!」
「きったねえ!」
人魚がゲロを飛ばしながら苦情を入れてくる。
「汚いってなんよ〜? そんなん乙女に言うことちゃうやん! なんなん自分ひどいわぁ。もうちょっと優しく扱わんとあかんよ?」
ゲロはまだ飛んでくる。何となく放り投げてリリースしてしまった。
「あかんあかん! やり直しや! こっからでいいから……ダリルやん? お久しぶりやで〜! どないしたん? うちに会いたくなったん?」
リリースした瞬間に飛び跳ねて帰って来やがった。とりあえずゲロは流されてきれいになったかもしれんが。
「ゲローディア、久しぶりだな」
「うあぁぁぁ! やめて! さっきのはノーカンで! もうやめてー!」
だんだん可哀想になってきたから、とりあえず頭でも撫でてみるか。
「ふっふ〜ん!」
ちょろい。
「クローディア。お前に頼みがある。この海でお前にしか頼めない、大事な話だ」
「うん。何でも言って。頼まれたるから」
ちょろすぎて不安になるが、こいつはこれでも人魚の姫だというから、実際この海ではこいつが一番アテになるだろう。