第6話:環境運動の裏
配信の幕開け
「こんばんは〜、“はごろもまごころ”だよ!」
まひろは、黄緑色のパーカーにベージュのショートパンツ姿。子ども用のキャップを後ろ向きにかぶり、無垢な笑みを浮かべながら語り出した。
「ねぇミウおねえちゃん……温暖化ってすごく大事な問題だよね。でも、活動家の人が“裏では偉そうに高級車に乗ってる”って話を聞いちゃったんだ。なんだか、ほんとなのかなって思っちゃって……」
ミウは、モカのブラウスにライトグレーのカーディガンを羽織り、薄いピンクのスカートを揺らしながら、ふんわりとした笑みを見せる。
耳には小さな葉っぱの形をしたイヤリングがきらめき、まるで自然を意識しているかのよう。
「え〜♡ もしそうなら悲しいよねぇ。『環境を守ろう』って言ってるのに、裏では好き勝手してたら……信じられなくなっちゃうよ」
コメント欄には「やっぱり偽善か」「信じてたのに」「環境活動は商売だ」の声が溢れた。
Zの仕掛け
暗い部屋、モニターの光に照らされるZ(ゼイド)。
緑のフーディを羽織り、指先でAI編集ソフトを操っていた。
活動家が集会で演説する映像。
「私たちは未来を守るために……」
その直後に、編集された別の映像が差し込まれる。
高級車のドアを開け、後部座席に乗り込む姿。
「……快適な暮らしを続けたい」
音声は加工され、まるで本人がそう語ったかのように自然に繋がっていた。
Zは薄く笑った。
「理想を語るやつほど、落とすのは簡単だ」
炎上と分断
翌朝、レイNewsの記事が出た。
「環境活動家、高級車利用の矛盾」
「グリーン運動はビジネスか?」
「市民の声:『結局カネか』」
SNSでは「#GreenScam」が急上昇し、数百万件の投稿が殺到。
「やっぱり偽善だった」
「環境問題なんて嘘っぱち」
「車乗るなって言って自分は乗るのか」
デモは一気に下火になり、環境問題の議論そのものが空中分解してしまった。
無垢とふんわり同意
夜の配信。
まひろは黄緑のパーカーの裾を握りしめ、困ったように言った。
「ぼく……ただ“ほんとかな”って思っただけなのに、みんな怒って環境のこと考えなくなっちゃった」
ミウはふんわり笑みを浮かべ、葉っぱ型のイヤリングを指でなぞりながら語った。
「え〜♡ でも、それって“考え直すチャンス”かもしれないよね。
偽善を見抜ける国民って、すごく強いと思うんだぁ♡」
コメント欄は「目が覚めた」「環境運動はいらない」「真実を教えてくれてありがとう」で埋まった。
結末
暗い部屋のモニター前でZが笑う。
「善意は脆い。少し汚せば、簡単に瓦解する」
彼の画面には、次なるターゲット――移民政策の議論映像が映っていた。
「文化侵略」という赤いテロップが、既に重ねられていた。
無垢な疑問とふんわり同意、その裏で“環境運動の裏”は偽善に塗り替えられ、世界は未来を語る言葉さえ失っていった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!