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あったかい。
まるで、春の陽だまりに包まれるかのように……。
――ヒヤッ
「冷てっ!」
不意打ちな頬《ほお》への冷たさに、俺は思わず跳ね起きた。
さっきと同じ『礼拝の間』。
冷たかったのは、大理石の床だった。
状況を把握しようとキョロキョロ見渡したところで。
「ん? これって、ブレリバの初期装備……さっきの、夢じゃなかったのか」
俺が着ていたのは『布の服』。
古めかしいカラシ色のシャツに、茶色のズボン。
やわらかい素材で、着心地は悪くない。
念のため、手足を動かしてみる。
夢特有の妙な感じはしない。
神様との会話。勇者の目覚め。
ここまでは、ゲームと同じ流れである。
「なら、そろそろあいつが来るはずだけど――」
俺がつぶやいた瞬間。
猛スピードで部屋に駆け込んできたのは、小柄な少年神官。
「――勇者様っ!! あ……い、居た……」
駆け込んでくるなり叫んだ少年は、俺を見るなり安心したように膝をついた。
何か伝えようとしているが、息が上がって何も喋れていない状態らしい。
「…………大丈夫か?」
ゆっくり少年の方へと歩いていく。
「す……すみません……」
「気にすんな、落ち着くまで待ってるからさ」
「はい……」
相手は初対面の子ども。
怖がらせてしまわないよう、緊張をほぐすよう、優しめに声をかける。
ややあって息を整えた少年は、最後に大きく深呼吸。
「…………もう大丈夫です」
厚手の神官服をサッと軽く整えてから、改めて話を切り出してきた。
「……あのう……勇者様、ですよね?」
「ああ」
「よかったぁ! あ、僕はこの『原初の神殿』で神官見習いをしている、イアン・オレットと申します。どうぞお見知りおきを」
「俺は……タクト・テルハラ、よろしくな」
ゲームだと人物の苗字と名前の順番は、英語圏のように『名・姓』だった。
一応その法則に従っておく。
「ではタクト様、早速ですが『神託《しんたく》の間』へおいでください」
*************************************
神殿内を案内されること数分。
ゲームと同じ風景に見惚れているうち、『神託の間』の前に到着した。
扉をノックしてから、イアンが声をかける。
「エレノイア様、お申し付け通り勇者様をお連れしました」
「ありがとう。お入りなさい」
――ギィィ
重そうな音を立てて扉を開いたイアンが「どうぞ」とうながしてきた。
断る理由も特に無いし、言われるがまま素直に足を踏み入れる。
「……失礼します」
やや薄暗い部屋。
まるでオーロラのように色と形を変えつつ輝く、光のカーテンが広がっている。
中央で待っていたのは1人の少女。
クリーム色のローブとヴェールをまとい、淡い茶髪を上品にまとめている。
「ようこそいらっしゃいました、異郷の勇者様。私《わたくし》は『神託の巫女』、エレノイア・トラヴィスと申します。わざわざご足労いただき感謝いたしますわ」
「い……いえ、とんでもないです」
深々と頭を下げる彼女に気圧《けお》されるも、なるべく平静を装いお辞儀を返す。
エレノイアは、どう見てもイアンと同じく10代前半。
だが年齢に似合わぬ気品と気迫があまりに凄く……彼女に対しては何となく、敬語を使わなくてはならない気がした。
「それで……この世界は現在、どういった状況なんでしょうか?」
「……事の起こりは、3年ほど前になります」
エレノイアは、真面目な顔で語り始めた。
かつて人と魔物は縄張りを分け、おおむね上手く共存していた。
ところが3年前から、世界各地で魔物が人里を襲う事件が増えだした。
世界同時となると、ただの偶然とは思えない。
そこで各国が連携して調査した結果。
よく似た状況が、各地に『伝説』として残ることが判明した。
――500年前、魔物の襲来が急に増えた。
――直後に魔王が復活。
――異世界より訪れた勇者が魔王を倒した。
だが「単なる御伽話だ」と主張する者も多かった。
各国がとった対策は、せいぜい冒険者への討伐依頼を増やす程度。
そして半年前。
全世界に魔王の声が響き渡った。
「フハハハハッ! 生きとし生ける者共よ……我、ここに復活せりっ!!」
その瞬間から凶暴化する魔物たち。
いくつかの国は、既に魔王の手に落ちた。
ようやく人々は気付いたのだ。
先に笑い飛ばした伝説が、真実であったことに。
そして、魔王に対抗できる唯一の存在――勇者の再来を待ち望んでいる。
「……本当に全部、ゲームのままなんだな」
ボソッと俺がつぶやくと、エレノイアが話を止めた。
「何でしょう?」
「いえ何でも。で、さっきの神様からのお告げに繋がるというわけですね」
「その通りでございます……勇者タクト様」
エレノイアが頭《こうべ》を垂れてひざまずく。彼女に続くイアン。
「貴方《あなた》様は、リバースにとって最後の希望でございます。この世界を……この世界に住まう者達を……どうかお救いくださいませ」
「お願いします、タクト様!」
「え、あ……もちろんです! あの、頭を上げてください」
思わず慌ててしまう。
ゲームでは慣れたはずのシチュエーションでも、いざ現実となると勝手が違う。
「一応、俺としては精一杯がんばりたいんですが……なんせ、この世界に来たばかりのものでして、その――」
「ご安心ください。神様より仰せつかっておりますわ」
エレノイアはにっこり微笑んでから、壁際の箱を手で示した。
「……イアン、あちらをタクト様へ」
「はい!」
指示を受けたイアンは、音を立てない小走りで箱を取りに行く。
「タクト様、どうぞ!」
シンプルめな木箱を開けイアンが差し出したのは3つ。
小さな革袋。
鞘に入った剣。
剣を吊るベルト。
おそるおそる受け取ってみる。
コントローラーとは違う、“本物”の武器の重みと手触り。
不思議と胸が高鳴ってきた。
「こちらは先のお告げの際、神様よりタクト様へと賜《たまわ》った品々でございます。なお革袋には、100Rが入っているとのことですわ」
Rは、ゲームの中にも出てくるお金の単位だ。
大きな丸パン(1個)=1R。
素泊まりの安宿(1泊)=20R。
そんな相場をふまえ、「1R≒100円、と考えるのが妥当」ってのがプレイヤーたちの市場調査と議論の結果だった。
紐をゆるめ、革袋の中身をチラッと見てみる。
じゃらじゃら入っていたのは銀貨や銅貨。
――約1万円。
ゲームと同じ金額とはいえ、命をかけて戦う割には少ないよな……?
「ところでタクト様……」
言いにくそうに切り出すエレノイア。
「その……私共としては、本来なら出来うる限り協力させていただきたいのですが……実は、神様からのお告げに続きがありまして……」
「続き?」
彼女いわく、神の言葉をそのまま伝えるなら「あんまり甘やかすとアヤツは成長せんと思っちょるでのう。旅立ちの時の支援は以上で! ……え、心配? 大丈夫じゃ! アヤツは正真正銘の勇者じゃぞ、すぐに誰よりも強くなるわい。よいか、ぜ~~ったいに甘やかしちゃダメじゃからの!!」と。
「あの野郎ッ……!」
断りも無く勝手に召喚したくせに「甘やかすな」って酷くないか!?
それに俺は架空世界とはいえ、一応これまで世界のために魔物も大量に倒してきたし、魔王だって100回も撃破したんだぞッ!
スタート時にちょっとぐらい優遇してくれてもいいんじゃねぇのッ!?!?
「タ、タクト様、その……可愛い子には旅をさせよとも言いますし、神様なりの愛ではないかと――」
「あっ、ごめんなさい……」
無意識のうちにエレノイア達を怯えさせてしまっていたようだ。
すぐに謝り、話を変える。
「ところでエレノイア様、頂いたアイテムの扱い方を教えてほしいんですよ。俺の世界と勝手が違ってて……こういった剣も実際使うのは初めてなんです」
「勇者様は異郷の方ですものね」
納得する2人。
「喜んで協力いたしますわ。知識のみならば、神様もお許しくださるでしょう」
「よろしくお願いします」
「では順を追って説明いたしますわ。恐れ入りますがタクト様、ステータスをご覧いただけますでしょうか」
一瞬、戸惑う。
ゲームでは全部の操作をコントローラーで行っていたのだ。
ひとまず異世界物の王道で行ってみるか……。
――ステータス、オープン
ゲームと同じ半透明の青いウィンドウが目の前に現れた。
「おっ見えた!」
「ありがとうございます。私《わたくし》からは見えませんので、可能な範囲で内容を教えていただけますでしょうか」
エレノイアいわく、自《みずか》らのステータスは誰でも見れるが、他人のステータスを見るには『特殊なスキル』が必要なのだと。
ここで気が付いた。
ウィンドウの文字がゲームと違って、日本語じゃないことに。
なのに俺は、内容を即座に理解できている。
「これ、共通言語文字だ……」
……そういやさっき。
神様が「自動翻訳アイテムを持たせてやる」とか言ってたな。
と同時に、新たな疑問が生まれる。
「あの~俺って“何語”を喋ってます?」
「綺麗な共通言語でお話しかと存じますわ」
「まじっすか……」
俺本人はずっと日本語で喋ってたつもりだった。
自動翻訳の仕組みも気になるが……ま、後で考えよう。
今はとにかく、ステータスの内容をチェックする。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
名前 タクト・テルハラ
種族 人間
LV 1
HP 54 / 54
MP 28 / 28
物攻 20
物防 8
魔攻 10
魔防 8
■状態
発動中【能力値倍化LV5★】(HP+27、MP+14、物攻+10、物防+4、魔攻+5、魔防+4)
■称号
勇者、世界を渡りし者、神の加護を受けし者
■スキル
光魔術LV1、剣術LV1、能力値倍化LV5★、収納《アイテムボックス》LV1、技能《スキル》習得心得LV1、鑑定LV1、神の助言LV1、言語自動翻訳LV1、攻略サイトLV1
■装備
布の服、革のブーツ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれ?」
予想外の内容だった。
ゲーム開始時の称号は『勇者』のみ、スキルは【光魔術】【剣術】だけ。
それより明らかに多いし、初めて見るものも何個かある。
とりあえずエレノイアたちに、上から順にステータスを教える。
ただし説明が面倒なので【攻略サイト】というスキルは黙っておいた。
紙にメモしながら聞いていたエレノイアによると。
スキルに【剣術】があるため、練習すれば剣は使いこなせるだろうと。
お金に関しては、【収納《アイテムボックス》】を活用するのが得策とのこと。
――アイテムボックス、しまう。
さっきの要領で念じると、持っていた革袋がスッと消えた。
ゲームだと入手アイテムは自動でアイテム欄に入っていた。
これも後で、検証しといたほうが良さそうだな。
「基本能力は人間族の平均に近いようですが……少々スキルに気になる点がございますので、詳細をご覧いただけますでしょうか?」
――ステータス詳細、オープン
俺が念じると、ウィンドウが『詳細付き』に更新された。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
名前 タクト・テルハラ
・
・
・
■称号
勇者:光魔術を持つ者に与えられる
世界を渡りし者:2つ以上の世界を訪れた者に与えられる
神の加護を受けし者:神が気まぐれに与える
■スキル
<称号『勇者』にて解放>
光魔術LV1:光属性の魔術を使える
剣術LV1:剣技に補正がかかる
<称号『世界を渡りし者』にて解放>
能力値倍化LV5★:常時全ての能力値が2倍
<称号『神の加護を受けし者』にて解放>
収納《アイテムボックス》LV1:所有アイテムを1m³収納できる
技能《スキル》習得心得LV1:特定の条件下で、スキルを習得しやすくなる
鑑定LV1:対象のステータスを解析できる
神の助言LV1:神の一言メモを見られる
<アイテムにて解放>
言語自動翻訳LV1:人が扱う言語を理解し、読み書きできる
攻略サイトLV1:Brave Rebirth攻略サイトを閲覧できる
・
・
・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……色々チート過ぎだろ」
前言撤回。
神様、スキル面でかなり優遇してくれていた模様です。
「なるほど。それで勇者様は、異世界からいらっしゃるのですね……」
エレノイアも納得した様子。
「どういうことですか?」
1人だけよく分かっていないイアン。
俺のステータスを書いたメモを見せながら、エレノイアが説明する。
「……『勇者』という称号に関連するスキルは?」
「【光魔術】と【剣術】です」
「では異世界からいらした方には、どんな称号がつきますか?」
「うぅ~……あ、『世界を渡りし者』です」
「この称号で解放されるスキルは?」
「【能力値倍化】……」
メモを数秒見つめたイアンは、ようやく理解した模様。
「……す、すごい! 全ての能力値が倍ですか!?」
「ええ。現時点でのタクト様のLVは1ですが、裏を返せば、それは早く成長できるということ……しっかりと鍛錬を重ねさえすれば、私共《わたくしども》では辿りつけない領域の強さになられる御方なのですわ」
「しかも『神の加護を受けし者』で解放されるの、レアスキルばかりですよ!? 【技能《スキル》習得心得】ってのも初めて聞きました!」
「だからこそ神様は、タクト様を甘やかさないよう念を押していらしたのですわ。既にご自身で、こんなにも素敵な贈り物をお渡しになっておられたのですから」
「おお!さすがは神様です!!」
口々に神様を褒めたたえる2人。
一方、他に気になることがあった俺はステータスを観察していた。
「『神の助言LV1:神の一言メモを見られる』ってなんだ?」
そうつぶやいた途端、ステータスウィンドウが更新される。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
名前 タクト・テルハラ
・
・
・
■神の一言メモ
あの野郎とは何じゃっ!!
まぁ許してやるわい、ワシは心が広いからのうwww
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あの野郎……?
……って、さっきの聞いてたのかよ!
というか神様が『w』とか使うんじゃねぇ!
まぁでもここは素直に感謝しておこう。
自動翻訳とか加護とか“おまけ”してくれたの、正直すごくありがたい。
「ところでタクト様」
ここでエレノイアが話しかけてきた。
いつのまにか“褒めたたえタイム”が終わっていたようだ。
「こちらのステータスに関してなのですが……おそらく、このままでは旅が困難なものになるでしょう」
「え?」
違和感を覚える。
そもそもゲームのエレノイアは、最初のチュートリアルキャラである。
プレイヤーは定型文を聞き、言われた操作を行うのみ。
既に先の説明で彼女の役割は終わったはず。
ゲームだと、部屋から強制退出させられたのだが……。
「……旅が困難になる、とは?」
「私《わたくし》は様々な方にお会いしてきましたが、ここまで素質を感じさせてくださる素晴らしいステータスは初めてですわ」
「だったら問題ないんじゃ――」
「実力が伴ってさえいれば、その通りでしょう」
「??」
彼女の強い指摘の意味が理解できず、ぽかんとしてしまう。
「確かに、タクト様の可能性は素晴らしゅうございます。けれども今のままではただの一般人と同じ……いえ。言葉を選ばず申せば、失礼ですが、一般人以下です」
「え?! でもさっきステータスは平均だって――」
「あくまで『LV1段階ならば』という前提付きにございます。何の訓練をしていない子どもでも、普通に暮らすだけでLVはすぐに10を超えますもの……ましてや多少戦い慣れている方なら、LV数十、数百というのも珍しくはありませんわ」
「あ……」
人間族のLV事情は、『Brave Rebirth』でも当たり前の基礎知識。
なのに俺は、エレノイアに言われるまで完全に忘れてしまっていた。
――よりによって、初歩中の初歩を失念する。
頭をガツンと殴られたような衝撃。
架空世界ではあるが、俺はこの世界で暮らしてきたはずだったのに……。
エレノイアは静かに話を続ける。
「……現在のタクト様のステータスでは、魔物どころか、多少腕に覚えのある人間にすら太刀打ちなど到底不可能ですわ。仮にもし、鑑定スキル持ちの “悪しき者”に気付かれた最後……簡単に、暗殺されてしまうでしょう」
俺は何も言い返せなかった。
彼女の言葉は残酷だ。だけど紛れもない真実だ。
なぜならゲームのLV1勇者もまた、全く同じ状況だったから。
もちろんゲームなら死んだって別に問題ない。
セーブ時点に戻ってやり直せるからな。
だが、ここは架空じゃない。
現実だ。
もし死んだらどうなるんだろう?
というかこれこそ、神様に確認しておくべきだったんじゃ……。
「……タクト様!!」
ぐるぐると悩み出した俺だったが、イアンの呼びかけで我に返る。
「大丈夫ですか? 顔が真っ青になってますよ!?」
その今にも泣きそうな表情はゲーム内での彼そのもの。
ゲームでのイアンは本当にいい子だった。
いつも真っすぐで、素直で、優しくて。
一部のプレイヤーから「イアンくん、いつか悪い大人に騙されちゃうんじゃない?」等、心配の声が絶えないほど。
「お、お水か何か飲みますか? あっ、もしかして冷たいのよりあったかいお飲み物がいいですか?! 冷たいお湯とあったかいお水どっちがいいですかッ?!?!」
当の本人以上に必死なイアン。
思わずツッコみたくなる慌てっぷりに、逆に俺は気を取り直せた気がする。
要は、死ななきゃいいだけ。
考えるべきは「死なないためにどうするか」だと、自分に言い聞かせる。
「……ありがとな。気持ちだけもらっとくよ」
落ち着きを取り戻した俺に、イアンはようやくほっとした顔を見せた。
「申し訳ありません。私が不安を煽る言い方をしてしまったせいで――」
「いえいえ、エレノイア様は本当の事をおっしゃっただけですから! こんな低LVじゃおちおち冒険もできませんし……急いで強くならなきゃですね」
「そうですわね……多少LVを上げるだけでも危険はかなり減ると思いますわ」
――いいからキャラLV上げろ!
SNSで「ブレリバ始めました」という初心者へのアドバイスの定番だ。
やっぱり現実でもLV上げが先決か……。
「そういえば……!」
何かを思い出したらしいエレノイア。
「タクト様は【偽装】というスキルをご存知でしょうか?」
「いえ、初めて聞きました」
「実はこのスキル【偽装】、『鑑定系スキルでステータスを見られたくない場合に使える数少ない対策方法である』と伺ったことがありますの」
「というと?」
「【偽装】は、自身のステータスの項目を、任意の内容に見せかけることが可能なスキルなのです。実際のステータスの数値は変わらないのですが、鑑定系のスキルでステータスを見られた場合の対策にはなるのではないかと存じます」
「……なるほど」
そんなスキル、『Brave Rebirth』内では見たことがない。
だが異世界アニメとかで似たようなのはよくあるし、すんなり納得はできた。
「で、その【偽装】は、どうやったら使えるようになりま――」
――スキル【偽装LV1】を習得しました。
ゲームで聞いたのと同じシステムボイスが脳内に鳴り響く。
慌ててスキル欄を確認すると……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
■スキル
・
・
・
<自ら習得したもの>
偽装LV1:自身のステータス項目を任意の内容に見せかけられる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「嘘だろ……」
ありえない。
ゲームのスキルは、どれも習得条件がかなり厳しかった。
こんなに簡単に習得できるわけないだろ!?
「どうかなさいましたか、タクト様?」
「あのですね、実はたった今……スキル【偽装LV1】を習得したんです」
「「!?」」
口をポカンとあけるエレノイアとイアン。
「信じられませんわ……こんなにも早く習得なさるなんて……しかも【偽装】は非常に珍しく、習得条件もいまだ解明されていないはずなのですが……」
「あっ、もしかして【技能《スキル》習得心得】じゃないですか?」
「確かに……それなら筋が通りますわ」
イアンが閃き、エレノイアがうなずいた。
「それって『スキルを習得しやすくなる』っていうスキルですよね。だからってこんなにいきなり覚えるもんですか?」
「普通はありえません」
「ですよね――」
「でも、勇者様ですもの! きっと、私共《わたくしども》の物差しで測ってはいけない御方なのでしょうね」
うふふと無邪気に微笑むエレノイアは、何だか年相応で可愛らしかった。
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