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#勧善懲悪
#勧善懲悪
数日後、公民館の一室に、白い机が三つ運び込まれた。
ルドヴィナは新しい鍵を指先で鳴らしながら、いかにも不本意そうな顔をしている。
「言っとくけど、騒ぐのはなし。机に飲み物の輪じみもなし。書類の山積みもなし」
キオノフがすぐに手を挙げた。
「はい」
「返事だけ早い」
「返事だけじゃなく、掃除も早いです」
言いながら、もう雑巾を持っている。
ルドヴィナはあきれた顔をしたが、耳だけ少し赤い。
部屋の入口には、小さな木箱が置かれた。
カレルが布をかぶせた箱の上へ、丁寧な字の札を立てる。
困りごと、どうぞ。
名前を書かなくても大丈夫です。
黒い名刺の代わりに置かれたのは、白い札だった。
「白すぎない?」
スレンがのぞき込み、首をかしげる。
「少しは飾った方が人が寄るよ」
「飾るのはあと」
マイナが即答する。
「まず、使いやすいこと」
ズジは部屋の隅でそのやりとりを見ながら、手帳に書きつけていた。
助ける仕組みは、脅かす仕組みより目立たない。だからこそ、毎日置き続けることが大事になる。
最初の札を入れたのは、意外にもリボルだった。
「監視記録の保管について相談」
みんなが見る。
リボルは咳払いした。
「こういうのは、最初が要る」
次に、ピットマンが笑いながら紙を入れる。
「子どもの野球道具、置き場が足りない!」
「それは困りごとというか、願いごとだろ」
トルードが言うと、ピットマンは胸を張った。
「願いも困りごとの親戚だ」
その雑な理屈に、部屋の空気がやわらぐ。
夕方、入口のところで足を止めていた年配の女が、周りを見てから一枚だけ札を入れた。
手が震えていた。
サペは追いかけない。
書き終えるまで、誰も声をかけない。
白い札は、人の言葉を無理に引っぱり出さない。
それだけで、もう黒い名刺とはまるで違っていた。
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