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城ケ崎を出た車は、下田を目指して走り始めた。

途中、熱川や吊るし雛で有名な稲取などの観光地を通り過ぎ、順調に国道135号線を走り続けていた。

河津桜で有名な河津町まで来ると、車の往来はかなり少なくなっていた。


河津の国道沿いでは、道路のすぐそこまで海が迫っていた。

岩場に打ち付ける波が白い泡となり海面を漂う。

その先には太陽光の反射を受けてキラキラと輝く波がゆらゆらと揺れていた。

詩帆はその心安らぐ美しい光景を飽きることなく見つめていた。


今回のドライブで、二人の距離はさらに縮まったような気がしていた。

車の中で二人は色々な話をした。子供の頃の事、学生時代の事、家族の事等話は尽きない。


この時詩帆は、涼平の友人のプロの写真家に講師をお願いしたいという話をした。

涼平は快く引き受けてくれた。


「彼は佐伯さんと言って写真集を何冊も出しているんだ。俺より六歳年上なんだけれど、山岳写真家としては既に頂点に上り詰めているんだから凄いよね。人間的にもすごく尊敬できる。だから、絶対子供達にとっても良い刺激になると思うよ」


涼平はそう言って微笑んだ。


やがて車が下田に入ると涼平が詩帆に言う。


「詩帆、目を瞑って!」

「どうして?」

「いいから、早く!」


急かされた詩帆は涼平に言われた通りに目を瞑る。

するとしばらくしてから涼平が言った。


「よしっ、今だ! 目を開けていいよ」


詩帆が言われた通りに目を開けると、道路の左手にはエメラルドグリーンの海が広がっていた。


一面見渡す限りのエメラルドグリーンだ。そして砂浜には真っ白な砂が輝いている。

そのあまりにも美しい景色に、詩帆はここは本当に日本なのだろうかと驚く。それほどまでに下田の海はとても美しかった。


「すごーい! 本当にエメラルドグリーン色をしているのね。砂も真っ白! まるで南国みたい!」


しかし涼平は目的の海はここじゃないんだよと言って笑った。


「ここじゃないの?」


涼平の話によると、下田にはエメラルドグリーンの海がいくつもあるようだ。

涼平は、自分達が目指しているのはもう先に行った場所にあると詩帆に説明した。


「こんな色の海がいくつもあるなんて信じられない!」


詩帆はそう呟くと、最終目的地の海が楽しみになった。


車窓からふと空を見上げると、空は雲一つないブルーに染まっている。

きっと今夜は星が綺麗な夜になるだろう。詩帆は夜のキャンプにも心躍らせていた。


車はやがて国道から細い道へ入って行った。

地元の人しか知らないような細い道を進んで行くと、やがて旅館や食堂がある集落へ出る。

その突き当りで細い道は終わっていた。

そして駐車場の先に、二人が目指していた海があるようだ。


二人は漸く目的地に着いた。

そこは下田の入田浜という場所で、涼平は昔ここへサーフィンで来た事があるらしい。

車を駐車場に停めると涼平が言った。


「本日の目的地に到着しましたー! お疲れ様でしたー!」

「長時間の運転お疲れさまでしたー!」


詩帆は拍手をして涼平を労う。そして二人は車を降りた。


詩帆は画材を手にし、涼平はアウトドア用の椅子を二脚持つと目の前にある砂浜へ向かった。

セルリアンブルーの夜明け

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