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文化祭本番の朝。教室は即席の舞台セットでぎゅうぎゅう、みんな衣装やメイクに大忙しだった。


「はーい、王子役の隼人くん! こっちで着替えお願いしまーす!」


「お、おう……」


真っ白なシャツにマント、金色の王冠。完璧に王子様。

女子がキャーキャー騒ぐ中、隼人は鏡に映る自分を見て小さくため息をつく。


――本番より大地の役が不安だ。


「大地ー! 衣装大丈夫か?」


返事の代わりに、もこもこした茶色の何かが転がり出てきた。


「じゃーん! オレ、森の妖精だって! かわいくない?」


頭には落ち葉の冠、腰には鈴のベルト。どう見ても巨大どんぐりだ。


隼人は思わず吹き出した。


「いや可愛いっていうか……なんでその役?」


「知らね! 気付いたら“自由に動く森の妖精”って書いてあった! アドリブOKらしい!」

不安の二文字が隼人の背筋を走った。




本番。

物語はお姫さまが魔女にさらわれ、王子が助けに行く王道ストーリー。

順調に進んでいたのは、大地登場までは、だ。


「やあやあ! 森の妖精ダイッチー参上!」


舞台中央に滑り込んだ大地が、派手に回転して着地。鈴がチリンチリン鳴り響く。

観客から笑いが起きる。


台本にない。

隼人が小声で「おい、違うだろ」と囁くが、大地は無視して王子の前に仁王立ち。


「王子さま、この先は危険だぞ! オレが案内してやろう!」


――完全に進路変更。


「え、えーと……ありがとう、妖精……?」


隼人も観客も半笑い。舞台袖のクラスメイトは頭を抱えている。


大地はさらに続ける。


「だが条件がある! オレの願いを叶えてくれたらな!」


「願い?」


「森においしいドーナツ屋を作ってくれ!」


観客席から爆笑。

隼人は頭を抱えながらも、王子の顔を崩さず応じる。


「……わかった、ドーナツ屋を建てよう」


「さすが王子! やっぱ隼人は話が早い!」


隼人の本名をうっかり言った大地。

観客はさらに大ウケ、舞台袖から「名前! 本名!」という悲鳴。




なんとかラストへ。

姫を助け、妖精ダイッチーはドーナツを食べながら退場。

カーテンコールでは観客の拍手と笑いが鳴りやまない。


「お前、自由にもほどがあるだろ!」


舞台裏で隼人が詰め寄る。


「え? 観客喜んでたじゃん!」


「……まあ、そうだけどさ」


大地が得意げに親指を立てる。


「これぞアドリブ芸人の真髄!」


隼人は苦笑しつつ、心の奥で妙な誇らしさを覚えていた。


――結局、こいつが舞台をさらっていくんだよな。




隼人は王子の衣装のまま、大地の背中を見てそっとため息をつく。


「……まったく、目が離せない奴だ」



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