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シャケ握り
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#日常組
れいみ&るるあ@超不定期投稿
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「あれ、透?」
ずっしりとした、一目で重そうだとわかる墓場は閑散としていた。
そんなところに、ぽつんと墓の前に立っていたのは、柄院透だった。誰の墓の前に立っているかは知らないが、誰かしらの旧友なのだろう。
「……また後で来るか」
そんな風景を見てから踵を返したのは、自分────黒井ノアだ。
実は自分も墓参りをしたくてここに来たのだが……柄院透という自分の友達が先客だったようだ。自分はまた後にしよう。
「……あそこら辺の墓って、誰が埋まってたっけな」
ふと、透が墓参りをしていた場所を思い出す。あまりにも遠くて見えなかったが、あそこら辺のお墓は若い人たちが比較的多いと聞いたことがある。
年代的に言ってしまえば、赤ちゃんから二十代程度……だった気がする。
「…………戦争で死んだ人、ね」
ただ、彼があそこに立つのもおかしな話だ。だってここの膨大な数のお墓は、すべて第二次世界大戦────太平洋戦争で死した墓なのだから。
戦争では食料の取得は困難なため、餓死する人が最も多かったが、きっとここの墓場に餓死は含まれていないだろう。
たった一人を除いて、だが。
「…………あー、スーパー寄らなきゃ」
ふと家にいる彼ら────戌亥と紫武守が、お腹を空かせている頃合いだと……なんだか電波を受け取った気がした。
一歩足を踏み出し、なんとなく、透の方向へと振り向いた。
「……」
かける言葉は、何もなかった。
……………
「あれ、ノアさん」
「おわっ……って、戌亥か」
家に帰り玄関の扉を開けると、目の前にいたのは出かける準備をしていた戌亥だった。
今日も相変わらず頭にはレジ袋を被っている。
そんな彼は、ふと自分の手持ちにある買い物袋を見て目を輝かせた。
「もしかして、ご飯買ってきてくれたんですか?」
「うん、なんかお腹空いてそうな気配がしたからね」
にこやかに笑いながらも玄関に入ると、相手は笑いながら”すげえ”と口からこぼした。
「めちゃくちゃ大正解っすよ。守さんが瀕死状態で、今から買いに行こうと思ってたんです」
「お、じゃあタイミングばっちしだね」
二人で近況を報告しながらも、キッチンへと向かって料理を作り始めた。
もちろん、戌亥には簡単な作業だけをやらせたが。でないと怖い。
「……料理って、いいよね」
ふと、自分の口からそんな言葉が出ていた。キョトンとした顔で、相手はピーラーでじゃがいもの皮を剥きながらも、視線だけはこちらを見ている。
ただ、どうしてもこのこと自体にありがたみを感じられずにはいられない。
「いやあ、なんか、俺って昔は料理もできないくらい……貧乏、って言えばいいのかな。とにかくご飯は我慢みたいな感じだったからさ」
────昔は、もっと辛かった。もちろん、ご飯を毎日ちゃんと手には入っていた。けれど、それを食べることはできなかった。食べようと思えなかったのだ。
そう思うと、料理できることがすごく便利なことのように思えてたまらないのだ。
「────それは、少しわかります」
じゃがいもを置いた彼は、そう一言返事をした。
それ以降、会話はなかった。唯一聞こえた音とすれば、遠くでお腹が空いたと叫ぶ守くんの声だけだった。
────自分の亡くなった旧友も、食いしん坊だったな。
ああ、透が帰ってきた後にまた墓場に行かなければ。 食いしん坊な旧友のための、ご飯を腕一杯に抱えてから。
────料理というものを、ずっと前から知っておきたかったと、常々思う。