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「それ…………圭にあげるの?」
「…………」
千夏の問い掛けに、美花は黙ったままでいると、目の前に滑らかな白い手が割り込んできた。
「あっ……やっ…………やめてっ!」
気付くと、圭へ渡すチョコレートとプレゼントを千夏に奪われ、美花は、声が濡れそうになりながら取り返そうとしたけど、圭の元恋人は、美花から身体をかわしていく。
「おっ……お願いですっ! 返して…………返して下さいっ!!」
悲痛に打ちひしがれながらも、美花は訴えるけど、千夏は不気味に微笑んでいる。
「あなた、今日で圭とお別れするんだし、こんな物、必要ないでしょ? それに、安物のブランドのプレゼントなんて、圭が喜ぶと思う?」
千夏が二つの紙袋を地面に置くと、右足を上げ、思い切り踏み始めた。
「やめてっ!! やめてぇええぇっ!!!!」
視界が霞み、泣き崩れそうになりながら、美花は千夏に駆け寄り、黒いパンツスーツの脚を抱えて必死に抵抗した。
パンプスで踏み倒され、千夏の足跡で穢されていく、二つのペーパーバッグ。
千夏は、美花に脚を抱えられながらも、なおも踏み続けていた。
「やっ……やめてよぉおおぉっ!!!!」
綺麗に整えられていた紙袋が、グシャリと潰されていき、美花の瞳が、しとどに濡れる。
心が崩壊するのを堪えながらも、千夏を食い止めようとした。
「しつこい女ねっ!」
「きゃぁっ!!」
千夏が美花の肩を突き飛ばし、彼女はうつ伏せに倒れ込んでしまった。
美花が、おずおずと顔を上げると、鬼の形相と化した千夏が、執拗に二つの紙袋を強く踏み躙(にじ)っている。
「やっ……やめて…………お願いですっ……やめて……っ」
声が掠れ、立ち上がる気力を失った美花は、チョコレートとプレゼントが無惨な姿に成り変わるのを、虚な眼差しを向けた。
地団駄を踏み、憎しみを孕ませているような千夏の表情に、美花は恐怖すら覚える。
千夏は、ようやく気が収まったのか、ほぼ原型を留めてない二つの紙袋を蹴り飛ばすと、肩を怒らせながら公園から立ち去った。
「圭ちゃんに渡す…………チョコと……プレゼント……。こんなに……なっちゃったよ……」
のろのろと立ち上がった美花は、変わり果てた二つのペーパーバッグを、おぼつかない様子で拾い上げる。
中身を確認すると、チョコレートの箱もネクタイの箱も、ひしゃげられてしまった。
美花は、手で汚れを払い落としてみるものの、千夏が付けた黒い足跡は、しっかり残ってしまっている。
──やっぱり私……恋をしては……ダメだったんだ……。
しばらく忘れていた思いが、彼女の中で急速に芽生えていき、瞳から雫が滴り落ちる。
恵
美花は、指先で目尻を拭うと、魂が抜けたような表情を映しながら、ぎこちない足取りで圭との待ち合わせ場所へ向かった。
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