テラーノベル
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「やべぇ……飲み過ぎたな…w」
男は千鳥足で、夜の住宅街をふらふらと歩いていた。
スーツはしわくちゃでネクタイは緩んでいて顔は酔って真っ赤になっていた。
今日も上司に怒られ、残業を押し付けられた。ストレス発散のために毎日居酒屋でお酒を飲んでいる帰り道だった。
「明日も仕事かよ、腹立つわ……」
足元がぐらつき、視界が歪む。
「痛ッ………ッ!?」
男は電柱に頭をぶつけ、そのまま地面に倒れ込んでしまった。
アルコールと激痛のせいで、その場で意識を失ってしまった。
冷たい風が男の頬に当たる。
「冷たッ…ッ」
男はパチリと目を開けた。
住宅街にいたはずなのに、何故か草と土の匂いがした。
「何なんだここ……森の中?」
街灯1つもない、都会では見ない不気味な森だった。慌てて立ち上がり、カバンの中を調べた。スマホも財布も無かった。
「うわぁぁ……!?」
目の前を視界が遮るように、大量のコウモリが飛び去る。咄嗟に男は腕で顔を覆う。
静かになり、ゆっくりと腕を下ろすと男は息を呑んだ。
さっきまで無かったはずの場所に1軒の巨大な黒い屋敷が佇んでいた。
「これ、夢…だよな?外より中の方が安全だろ」
酔いが少し覚め、男は引き寄せられるように屋敷に近づき扉を開けた。
「は…?な、なんだこれ……」
屋敷の中は天井も床も壁も真っ赤だった。その赤色も明るい赤ではなく、赤黒く不気味だった。
(悪趣味だなぁ…)
それでも男は引き返さず、奥へと進んで行く。
辿り着いたのは、ひときわ広いダイニングルームだった。
長いテーブルの奥に小さなカップケーキを美味しそうに食べる、灰色の髪の幼い少女が座っていた。
隣には白黒の奇妙な仮面を付けた執事がいた。無言で紅茶を注いでテーブルの上に置いた。
🦇「いらっしゃいお客さん。こっちおいでよ」
少女は男に気付き、無邪気な笑顔を男に見せ、手招きをした。気が付くと男は少女の目の前に立っていた。
「今日って平日なはず…学校はどうしたんだ?」
🦇「そんなことより…お兄さん、毎日お仕事で疲れているみたいだね。私はルナ。一緒にお茶会をしましょう?」
どこか不気味な館と執事とルナに逃げ出したくなった。しかし、何だか居心地が良くお茶会がやりたくなってきた。さっきまでイライラしてたことがいつの間にか消えていた。
男は体が勝手に動くかのように、椅子に腰掛けた。
それから奇妙な生活が始まり、気が付けば9日も経っていた。
毎日ルナとおしゃべりしながら、仮面の執事が持ってくるお菓子や飲み物は絶品で全てを忘れさせてくれた。
(もう仕事とかどうでもいいな。ここにずっと居たい……)
9日目の夕方、いつものようにお茶会が始まった。
執事はルナの前に可愛らしいチョコのカップケーキが置いた。
「そのカップケーキ美味そうだな。俺にも1口くれ」
🦇「ダメだよ。今日お兄さんにはこれを飲んでもらうんだから」
執事は何か温かい飲み物を男の前に差し出した。
🦇「今日のおもてなしはカモミールミルクだよ。とってもリラックス出来るから飲んでごらん」
「おっおぉ…い、いただきます」
正直カモミールミルクはそこまで好んではいなかった。元々牛乳が好きではないためあまり飲みたくはなかった。渋々カモミールミルクをズズッと飲む。
「美味い……。なんだこれッ!?」
牛乳の苦手な匂いが全くなく、優しくて深い甘みが体中に広がり、嫌な疲れやストレスなどが全て消えていくようだった。
最後の一滴まで飲み干したその時。
「……あ、れ?視界…がッ」
強い睡魔に襲われ視界が歪み出した。お酒に酔った時とは違うフラフラ感が出て立つことが出来なくなる。
🦇「9日経ってもまだ疲れが残っていないのかな?お部屋のベッドで寝させてあげる。案内するよ」
ルナは男の手を優しく引っ張り、部屋のベッドへと横たわらせた。
ベッドに入った瞬間完全に寝てしまい、深い闇へと沈んでいく気がした。
静まり返ったダイニングルームでルナは残ったカップケーキを口に入れた。
🦇「おやすみなさい、闇の奥底で」
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ルナの声はさっきまでの明るい声色が消え、少し大人びた声色に変わっていた。
ルナは男が眠る部屋の前に立ち、リズムをとりながら扉を見つめクスクスと笑っていた。
🦇「どうだったかな。奈落のカモミールミルクは」
その瞬間、白い扉がじわじわと赤く染まる。扉の隙間から黒いモヤが出てルナの体を纏う。
🦇「あなたを見た瞬間に分かったよ。とても泣きそうだった」
🦇「ここでならそういうことがない。これからもよろしくね」
不気味な静寂の中、少女は静かに微笑んだ。
🦇「──さぁ、始めよう」
To be continued
コメント
3件
読み終えました……第2話、一気に不気味な空気が濃くなりましたね。ルナの「おやすみなさい、闇の奥底で」という台詞、あの口調の切り替わりがぞっとしました。最初は無邪気な少女かと思っていたので、ここにきて彼女の正体や目的がぼんやり見えてきて怖い反面、すごく引き込まれます。カモミールミルクの描写、牛乳嫌いの主人公が美味しいと感じるほど巧みに作られているのも、ルナの恐ろしさを感じさせますね……続きが気になります。