コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
虫の息の父ちゃんをみんなで優しく、衝撃を与えないように………四つん這いになった巨人の背に乗せて、巨人にいちゃんはそろそろと村へと運んでいく。
乗せた時に、筋肉クローラーと小声で言っていたのを耳にしてしまったけど、これまでの言葉も意味不明だし、世の中にはそういう“イタイ人”ってのがいるとは聞いていたので、そっとしておくことにした。
ちなみに筋肉クローラーは奇妙なくらいに揺れを感じさせない。もやもやする謎の気持ちを除いたら感謝しかない。
静かにベッドに横たえられた父ちゃんに母ちゃんが縋り付いて話しかけている。
傷だらけの顔はもう目も開けられないくらいで閉じたまま。口もほとんど動かないし、流し込んだ水もうまく飲めない。
呼吸するだけ、父ちゃんに今できることはそれだけになっていた。
俺も姉ちゃんも父ちゃんのそばで、その時まで一緒に居ようと。痛むと可哀想だから手は握らないで重ねるだけだけど、俺たちを感じてくれたらそれでいい。
巨人にいちゃんもバルゾイおじさんも悲しそうな顔だ。
ダリルにいちゃんは間に合わなかったみたいだけど、間に合ったとしても何も変わらなかったと思う。助け出せただけでも奇跡みたいなものだし、これ以上は贅沢な望みだ。
けれど。
「うぅっ、ひぐっ……」
涙は抑えられない。
父ちゃん、すぐに助けられなくてごめんよ。仕方ないとか他の誰だってどうしようもないとか。そういうのは分かっているけれど、俺がどうにか出来る男ならよかったのに。
ごめんよ、普通の子どもで……。
「いや、まだ諦めるのは早いな」
「師匠殿! 間に合いましたか!」
「なんだそれは、この少しの間にキャラ変わりすぎだろ」
現れたダリルにいちゃんは何やら手にしていて、そばにあった机の上の物を乱雑に押し広げ床に散らかして何やら作業を始めた。
突然の場違いな行動に唖然としてみんな見守るばかりだったけど、1番歳をとったドワーフがその工程を見て
「まさか……それは奇跡のクスリ……」
「ほう、これがわかるか。とっくに失われた製法のはずだが、ならこの水でそこの奥さんにうがいをさせてくれ」
ダリルにいちゃんから水のはいった瓶を受け取ったドワーフじいちゃんが何度も頷いてから僕たちのところへと歩いてくる。少し、落ち着かない、早足になるのを抑えてどうにか平常心を保とうとするようなじいちゃん。
「奥さん、これで口をすすいで下され。この聖水で清めるのです。それであなたの旦那さんは助かるのですっ」