テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
一度スイッチが入ってしまったら、もう止まらない。どちらが先もなく始まった長く深い口付けの中、蓮は康二の身体を跨り、多少慣れた手付きでお互いの上半身を露わにさせる。
「ン、ふ…めめ、…っん、」
キスの加減とは裏腹に、割れ物を扱うように丁寧に組み敷かれる。漸く解放され、互いの舌で繋がった唾液が切れる間。酸素が足りずに潤む康二の双眸に入った光景には、刹那だけ──極僅かに畏怖を感じた。
「康二、おれ…、」
《結構、ヤバいかも。》欲情に煽られるまま息を荒らげ、蓮は独り言のようにそう呟く。間接照明に薄く浮かび上がる彼の表情は、まるで目の前の獲物に今にも喰らいつきそうな、ひたすらに欲に飢えた獣のそれで。妖しくギラつく二つの光は『ここからはもう本当に逃げられない』と警告するとともに、更にその奥には『本当に逃げるなら今のうちだ』と微かな揺らぎを携えながら訴えかけるようでもあった。
いつもは何を考えているのか真意が掴めない、はずなのに。
康二は薄く笑みを浮かべ、目の前の獣を受け入れるように頭を引き寄せて抱き、耳元で宥めるように口を開いた。
「俺は、大丈夫やから。めめの想いも全部、俺にぶつけてや。──俺今、めっちゃ嬉しいねん。」
顔が見えない代わりに、ぴくりと蓮の肩が反応した。暫くしてから向けられた表情はつい先程とは真反対の、何とも情けないもので。唇に落とされたのは、やはり先程とは相反した、慈しみを携えた優しい口付け一つだった。
「そんな先輩みたいなこと言っちゃって。」
「いや俺実際先輩やし…ッ!」
悪態を吐ききる前に、首筋にかりっ、と歯を立てられる。じわじわと薄く浮かぶ紅をわざと水音を立てて舐め、左手で均整のとれた薄い身体を撫でれば、康二の気はすぐに逸れてしまった。ふと広い右の掌が康二の左頬に添えられ、右耳には唇が寄せられる。
「これから俺がやること、ちゃんと全部見てて、ね?」
「ん…?は、ぁっ…!」
告げられた言葉の理解が追いつく前にぬるりと熱い舌が、耳の縁から穴の中まで蹂躙していく。ダイレクトに聞こえる淫靡な音と吐息。反射的に目を閉じた康二はぶるっ…と身体を震わせながらも、応えるように蓮の背中に腕を回し爪を無意識に強く立てた。
「ッ…康二、」
僅かな痛みに耐える蓮の声から、直前に『見ていて』と言われたことを思い出した康二は緩やかに目を開く。頬に添えられていた温かな広い掌が下へ下へと進んでいく様を見つめた。丁寧に、丁寧に、身体の至る所を辿るように触れられていく。指の伝った箇所から、徐々に甘く痺れ熱くなっていく感覚を康二は今までに感じたことはなかった。
「好き。大好き。」
「ッはァ、…あ…めめ、!」
耳元に愛の言葉を置き、素肌を這う指を追うように、舌が首筋から胸元へと下っていく。薄い胸を揉み込み、控えめに立ち上がった桃色を啄むように吸い上げれば、挑発するようにちらりとこちらの顔を見上げてくる。そんな扇情的な表情を目の当たりした瞬間、康二は初めて今の行為とその先をリアルに予測し、そうして生まれた大きな 羞恥と少しの期待に駆られ、自身の口内からじわじわと分泌される唾液を、音を立てて飲み込んだ。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!