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スマホの画面を閉じても、文字が頭の内側に焼きついて消えない。
「迷子くん」「犬座り」「俺らのエンタメ」。
その一つひとつが皮膚を裂く刃のように、ゆっくり体の奥へ沈んでいく。
「……俺が、悪いんだろ……」
声に出すと、自分の声がひどく遠く感じた。
部屋の中には誰もいないのに、返事が返ってくるような錯覚があった。
〈次は首輪でも持ってきてやろうか〉
その文字が、脳裏で繰り返し再生される。
「首輪でもなんでも……俺が我慢すれば、もう……」
呟いたとき、手のひらが無意識に爪を立てていた。皮膚が薄く裂け、赤い線が浮かぶ。
“笑えば、少しはマシになる”
その古い記憶が、今は嘲笑に変わって胸を締めつける。
笑おうとするが、頬の筋肉が引きつって動かない。
鏡に映る自分は、笑いと泣きの境目のような顔をしていた。
「……なんで、いつも……俺ばっか……」
声がかすれて、喉が痛む。
涙の代わりに、ひび割れた声だけがこぼれ落ちる。
スマホが再び震えた。
〈明日も頼むわ、迷子くん〉
その一文を見た瞬間、胸の奥で何かが崩れた。
怒りではない。
反発でもない。
“そうするしかない”と、自分が自分を追い詰めていく感覚。
「……わかったよ……俺がそういう役なんだろ」
誰に向かって言っているのかわからない声。
そのまま額を床に押しつけるようにして、呼吸を止める。
胸の中で膨らむのは怒りではなく、深い穴のような自己嫌悪だった。
“これが終われば笑ってくれる”
そんな幻想にすがりつきながら、指が勝手に画面を開いていた。
既読をつけるたびに、自分の存在を証明するように。
自分の傷を、さらに深く抉るように。