テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
~数日後~
夜、サイコロは自身の部屋で本を読んでいる。サイコロは、ロビンがこの部屋に本を持ってくることが無くなったので、同じ本を繰り返し見ていた。
例の一件以降、ロビンが部屋に来ることもなくなってしまっていた。そろそろ寝ようかとサイコロが大きな欠伸をした時、”コン、コン”と、誰かが部屋のドアをノックした。
久しぶりにロビンが来てくれたのかと期待したサイコロは、「どうぞ!」と元気よく返事をした。そしてドアが開いた。
入ってきたのはマリエだった。驚いた顔をしているサイコロに、マリエはこう話しかける。
「ごめんね突然お邪魔して。寝るところだったかしら?」
「いえいえ。でも、知ってたのですね。僕の部屋。」
「ロビンくんに聞いたのよ。サイコロくんと話がしたいって言ったら、部屋を教えてくれたわ。」
サイコロはマリエにこう尋ねる。
「ロビンくんは?来てないですか?」
マリエは複雑な表情をし、こう返す。
「ロビンくんはあなたと会いたがってる。でも、ダメなんだって。所長が許してくれないって言ってた。」
「そうですか。やっぱり… 」
サイコロは、自身もロビンから遠ざかってはいたが、それ以上にロビンからの壁を感じていた。あの日自分のことを大切に思っていると言ってくれたのにである。原因は所長だったのだ。
しばらくの間サイコロとマリエの間に静寂が生まれたが、サイコロからマリエにこう尋ねた。
「その、話ってなんですか?もしかして、レイくんのことで何か分かったとか… 」
マリエがこう返す。
「ええ。私なりに資料を内緒で見たり、職員の話を聞いたりして、いくらかレイくんについて分かったことがある。そして、あなたについても。でも、多分、これらの話を聞けば、あなたは酷いショックを受けるかもしれない。それでも、私の話を聞く?サイコロくんに任せるわ。」
サイコロはこう返す。
「あの出来事から、僕はある程度覚悟はできてます。だから、マリエさんが入手した情報、ありのままに教えてください。」
マリエは、「分かったわ」と返し、こう話し始めた。
「まずはレイくんの現状から。今は所長によって薬が投与され続けてて、ほとんどの時間を寝て過ごしているみたい。起きていても感情を表に出させないようにされているみたいだから、コンタクトを取るのは難しいかもね。」
「なんで、そんなことに… 」
「所長の意思よ。噂だけど、レイくん、人間だった頃の記憶を思い出したみたいで。その記憶が所長にとって不都合な記憶だった。って聞いたわ。」
「だからって、レイくんがそんな目に合う筋合いはないだろ!」
サイコロの怒りがこもった叫びに、マリエはひどく怯えた様子を見せる。サイコロはそんな様子のマリエを見て、こう続ける。
「ごめんなさい、マリエさん。マリエさんに怒ったって意味はないのに。」
「仕方がないわよ。私だって所長に言いたいことなんて山ほどあるし、可能なら一刻も早く、あなたやレイくん、実験動物のみんなを解放されてあげたいもの…。 」
悲しそうな表情を浮かべたマリエは、こう続ける。
「あなたについても分かったことがあるわ。あなたについての研究をまとめた資料を見て。元々人間だったあなたもレイくんと同時期にこの施設に入れられて、実験が始まっている。あなたとレイくんは同時進行で研究が行われていたのよ。」
その話を聞き、サイコロは悲しい目をしてこう返す。
「それでレイくんの研究は成功して、僕は失敗したと…。」
「私はあなたのことを失敗作とは思って無かったけどね。サイコロくん、本当に良い子だから。」
「そう言ってもらえるだけで嬉しいです。僕について分かったことは、これだけですか?」
「いえ、まだあるわ。でも、このことをあなたが知るべきかは、私には分からない。」
「教えてください。お願いします。」
マリエは深く深呼吸をし、こう答える。
「あなたとレイくんは血の繋がった兄弟よ。あなたが兄で、レイくんが弟。」
サイコロはこう答える。
「なんとなくそんな気はしてたんです。別に驚くべきことじゃない。」
「そう、それは良かったわ… 」
複雑な表情を浮かべるマリエ。サイコロはこう返す。
「まだ、何かあるのですか?…」