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美しい景勝地を堪能した二人は、川平湾を後にした。

しかし健吾はもう一ヶ所どうしても理紗子を連れて行きたい場所があると言い、理紗子の手を握って歩き始めた。


二人は川平湾沿いの遊歩道を進んで行く。理紗子がここを歩くのは初めてだった。


遊歩道の突き当りには店が見えて来た。黒蝶真珠を取り扱っている店のようだ。

健吾が迷わずその店に入ろうとしたので、理紗子は、


「ん?」


と言うと、


「旅の記念に何か買って帰ろう」


健吾は理紗子を連れて店に入った。


店内にはとても高価な宝飾品タイプのものからリーズナブルなアクセサリー感覚のものまで、様々な黒蝶真珠のジュエリーが並んでいた。


「なんでも好きなのを選ぶといい」


理紗子をショーケースの前まで連れて行くと、突然健吾が言った。


「えっ、でも…」

「遠慮するな。今度のパーティーに着けていけるようなものを買ったらいい」


健吾は簡単に言うが理紗子にはそう簡単にはいかない。

なぜなら目の前に並ぶ黒蝶真珠は軽く10万円を超えるものばかりだったからだ。


そこで理紗子は店内をチラリと見回す。

すると店の隅に、大学生のカップルでも買えそうなリーズナブルな価格帯のものが並んでいるのを見つけた。

そこにある品は数千円から高くても数万円前後だ。


(こっちならいいかな…)


そう思った理紗子はそこへ移動しようとしたが、すぐに健吾に引き戻された。


「そっちじゃなくてこっち!」


理紗子はガックリと肩を落とし、目の前のショーケースを見つめる。


そこに並んでいたのは、大きな黒蝶真珠にダイヤモンドやルビーなどの宝石がついたシンプルでとても美しいペンダントだった。どれも上品で洗練されている。

一粒真珠のペンダントなら、ジーンズなどのカジュアルな服装にも合いそうだ。

しかし値段が全くカジュアルではない。


理紗子が相変わらずためらっていると、痺れを切らした健吾が口を開いた。


「すみません、じゃあ、これと、これと、あ、あとこれを見せて貰えますか?」


健吾が年配の女性スタッフに告げると、


「かしこまりました」


スタッフはそう言って指定されたペンダントをショーケースの中から取り出すと二人の前に並べた。


「よろしかったら実際に着けてみてはいかがでしょうか?」


スタッフは鏡を持って来る。

それでもまだ理紗子がためらっていると、健吾はペンダントの一つを手に取り理紗子の首に着けた。


「あら、よくお似合いでございます」


スタッフは満面の笑みで言う。

結局健吾は三つのネックレス全てを理紗子に試着させてから言った。


「どれか一つ選んで」

「高いけれどいいの?」

「いいから選んでいるんだろう。どれが一番好き?」


健吾は笑いをこらえながら言った。

理紗子はじーっと三つのペンダントを見比べた後、その中の一つを手に取る。


理紗子が選んだのは、黒蝶真珠の上に流れ星のようなダイヤモンドのモチーフがついたもので、理紗子はそのモチーフが気に入ったようだ。

三つの中では一番安価な品だったが、それでも軽く20万前後した。

真珠の巻き、照り、色は最上級の品質で、東京の店で同じようなものを買えばこの値段では買えないだろう。


そこで健吾はさらにスタッフに言った。


「これに合うピアスも持って来ていただけませんか?」


女性スタッフは更に嬉しそうな笑顔を浮かべると、いそいそとピアスを選びに行った。


「ピアスも?」

「折角だからセットで買っておこう。ここには頻繁に来られる訳じゃないからね」


健吾はそう言って微笑む。


彼にとってはこれも『偽装恋人』を演じる為の小道具でしかないのだろうか?

理紗子はそんな事を思う。


もしこれが本物の恋人からのプレゼントだったら天にも昇るような気持ちだったかもしれない。

しかしこれは偽りのプレゼントなのだ。

そう思うと理紗子の心はもやもやしてしまう。


その後理紗子はスタッフが用意したピアスの中から小さなダイヤのついたピアスを選んだ。


「折角だから着けて帰れば?」


健吾がそう言ったので理紗子は頷く。

そして理紗子は健吾に買ってもらったピアスとペンダントを身に着けて店を出た。


「こんな高価なものを…本当にありがとうございます」


理紗子は申し訳なさそうに言う。

すると健吾は、


「旅の記念だから。良く似合っているよ」


そう言って微笑んだ。


ホテルへ戻る車の中で、健吾は夕食は外で食べようと理紗子に提案する。

石垣島での最後の夜は、とっておきのレストランへ連れて行ってくれるらしい。


その時理紗子は、ワンピースを持ってきて良かったと心から思った。

そして二人が乗った車はホテルへ向かって走り続けた。

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