「買ったのか?」
ニヤニヤしつつ、沢山のショップ袋を下げ、柱にもたれ掛かっている豪が、異様にエロく見えたのは気のせいだろうか?
いや、気のせいだと思いたい。
「買いました。豪さんの洗脳のお陰で、自分史上最もエッチだと思うやつ。豪さんはエロい下着って思うか分からないけど……」
「洗脳? 俺はそんなつもりは全然ねぇんだけどな?」
遠くを見やりながら、態ととぼける豪が、何かムカつく。
「朝からエッチな下着ってばっかり言ってたくせにっ」
奈美が軽く剥れると、彼に緩やかな笑みを向けられた。
「脱がせる時が楽しみだな」
「もう本当にやめて欲しいんだけどっ」
「ごめん、悪かった」
と言いつつ、意地悪な笑いを堪えている豪。
さり気なく奈美の手を取り、指を絡めた。
「これで買い物は終わったので、道も混みそうだし、そろそろ帰りましょうか」
奈美が彼を見上げると、豪はモールの出口へ向かうどころか、別のお店に足を運ぼうとしている。
「あと一つ残ってるだろ?」
「え? まだ何かありましたっけ?」
「奈美の腕時計」
彼は前を見据えたまま、何もなかったようにサラリと答える。
彼女の手を引きながら、国内時計メーカーのアウトレットショップに歩みを進めた。
「どれがいい?」
ショーケースにディスプレイされている様々な腕時計を、二人で眺めている。
メンズのクロノグラフの腕時計も、ゴツくて好きだしカッコいい。
レディースの腕時計もシンプルなものから、ダイヤモンドが文字盤に埋め込まれているものもあったり、ブレスレットタイプの煌びやかなものなど色々あって、つい見入ってしまうんだけど……。
「豪さん、ちょっと……」
「どうした?」
この日は豪に、奈美の物を買ってもらったばかり。
いたたまれない気持ちになって、奈美は彼の手を引きながら店を出た。
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