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純に抱きしめられ、想いを告白された恵菜。
彼の心地いい体温に包まれながら、彼女は目を見張る事しかできない。
昨年のクリスマス。
立川駅前で、純と思い切りぶつかって以来、密やかに恋心を温めてきた恵菜は、嬉しい気持ちで満ちていた。
(返事…………して……いい…………のかな……)
彼女は勁(つよ)い腕の中で、しばしの間、考える。
「もっと言えば………」
斜め上から降ってきた穏やかな純の声音で、恵菜は回想の海から引き上げられた。
「恵菜さんと初めて会った時に…………俺は……君に一目惚れして…………ずっと……忘れられなくて…………。部下の本橋から、君は人妻だと聞かされた時、ショックだったけど…………それでも君を…………忘れられなかった……」
年齢よりも若々しく見える純が、今は『男としての表情』を映し出し、熱を帯びた視線に貫かれている恵菜は、胸が締めつけられるほど摘まれている。
「恵菜さんに離婚歴があって、元ダンナから復縁を迫られていると知って…………俺は…………君を守りたい、守り続けたいって……思った…………」
誠実な彼の眼差しから、恵菜は目を逸せない。
純の瞳に吸い込まれてしまうのではないか、と感じるほどの視線の強さに、彼女は目眩がしそうになってしまう。
「恵菜さんと会っていくうちに…………俺は…………君に……恋焦がれていった。君を守り、癒せるのは…………俺しかいないって……」
彼の気持ちは、恵菜が思っていた以上に、彼女への想いで溢れていた。
こんなに男性から想われるのは、きっと純が最初で最後なのかもしれない。
「恵菜さん。俺の彼女に…………なって欲しい」
以前、彼が多くの女性たちと遊んでいたとは思えないほどの、真摯な告白。
純と眼差しを縺れさせながら、恵菜は気付くと頬を濡らしていた。
「谷岡さ……ん…………わた……し……」
彼の名を呼び掛けるだけでも、声が掠れ、震えてしまう。
恵菜は、唇をうっすらと開き、迷うように唇を引き結ぶ。
何度かこの仕草を繰り返した後、やがて彼女は、美麗な顔に浮かぶ花弁を、ゆっくりと開花させた。