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「わた……し……も…………あなたの事が…………谷岡さんの……事が…………好き……で……す……」
囁くような声音で辿々しく想いを伝えた恵菜に、純は嬉しさを噛み締める面差しを浮かべると、繊麗な身体を引き寄せ、掻き抱いた。
「あなたと……初めて会った日から…………好きになっていたのかも……しれません……」
純の胸板からトクントクンと命を刻む音が、彼女の鼓膜を揺らしている。
「でも……結婚していた頃に不倫されて、また人を好きになって…………同じ目に遭うのではないかって思ったら…………一歩踏み出すのが怖くて……。けれど…………あなたへの好きという想いは……止められなくて……」
恵菜は息を震わせながら、辿々しく彼への想いを乗せていった。
「それでも……わた……し…………谷岡さんが…………好き……です……」
緊張しているのか、心なしか大きく打ち鳴らされている、彼の鼓動。
「…………すげぇ……嬉しい……」
恵菜の想いを知った彼が、感極まったように表情を崩した。
恵菜の背中に回されている節くれだった手が後頭部へと滑り、髪を撫でる。
「…………君を……誰よりも…………大切に……するから」
純に抱きしめられている彼女は、遠慮がちに彼の胸に顔を埋めていく。
恵菜は、想いを通わせた相手の腕の中で、喜びに打ち震えていた。
ひとしきり抱きしめられていると、純が恵菜の表情を覗き込んだ。
「今夜は……ずっと君を抱きしめていたい。でもその前に、今日は帰らない事を、ご両親に連絡をしておいた方がいい」
彼女の頭を撫でていた大きな手に、色白の頬をそっと包まれる。
「それに、恵菜さんの身体も、この寒さで冷え切っているだろ?」
純の大きな手の温もりに、恵菜の身体は、安堵で脱力してしまいそうになる。
「風呂が沸いてるから、身体を温めるといい。着替えは、俺の部屋着でもいいかな?」
「…………大丈夫です」
彼は絡ませていた腕を解き、寝室へ向かうと、恵菜に部屋着を持ってきてくれた。
「風邪を引いたら大変だから、風呂に入っておいで」
純から着替えを受け取った彼女は、母親にメッセージアプリで、今夜は友人宅に泊まる事を知らせた後、コンビニで購入したものも持参して、バスルームへと足を向けた。