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蓮司の相談室2

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蓮司の相談室2

46 - 第46話 誰にも見られてない気がして、消えたくなる

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2025年11月16日

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放課後の相談室は、蛍光灯の白い光がやわらかく机を照らしている。

夕陽はもう沈みかけ、窓の外は青と黒の境目のような色になっていた。


ドアがきしむ音がして、ひとりの生徒が入ってくる。

肩をすぼめ、スマホを握りしめたまま。


「……話していい?」


蓮司は椅子を揺らしながら、視線だけ向けた。


「どうぞ」


生徒は扉をそっと閉め、重たい足取りで席に座った。

指先はスマホのケースを何度もなぞっている。


「SNSでさ、“いいね”が減るだけで……

なんか、すごい不安になるんだよね」


声はかすれていた。

蓮司は腕を組み、無理に表情を作ることもなく、ただ聞く姿勢を取る。


「前まで、写真あげたらけっこう反応あったのに……

最近全然でさ。

見られてない気がして……なんか、俺、いなくてもよくね?って。

そんな気持ちにずっとなる」


机に落ちる影が揺れる。

生徒は俯いたまま、言葉を続ける。


「バカみたいでしょ?数字で不安になるとか。

でも……気付くと、ずっと画面見ててさ。

“まだ増えてない”“まだ誰も見てない”って。

その度に、胸がぎゅってなって……

なんか、消えていいのかもって思う」


蓮司は少しだけ椅子を引いて姿勢を変えた。

面倒くさそうにも、同情っぽくもない。

いつもの飄々とした温度。


「数字って、冷たいからな」


ぽつりと言う。


「増えたら嬉しいけど、減ると急に全部否定された気になる。

あれはそういう仕組みだ。お前だけじゃねぇ」


生徒の指が固く握られたスマホを震わせる。


「でもさ……“見てくれてる人がいる”って思わないと、

なんか、自分の存在がふわって消えそうで……

誰かに気付かれてないのが、怖い」


蓮司は天井を一度見上げ、軽く息をつく。

諭すようでもなく、突き放すでもなく。


「見られてることが“存在証明”になるのは、別におかしくねぇよ」


穏やかなトーンで続ける。


「ただ……その証明を数字ひとつに任せてたら、そりゃしんどい。

あれは気分を転がすための道具みたいなもんだから」


生徒は小さく眉を寄せた。


「じゃあ……俺はどうしたらいい?」


蓮司は少し笑った。

優しいんじゃない。ただ、力を抜いた笑い。


「どうもする必要はねぇよ。

“数字に揺れる自分”を恥ずかしがらなくていい。

人って、不安になると、分かりやすい指標に縋るんだよ。

誰だってそうだろ」


生徒は顔を上げられず、それでも声だけが漏れる。


「……それでも、不安になるよ」


「だろうな」


蓮司は肩肘をつきながら続けた。


「でもさ。不安になるのって、“見てほしい”って気持ちがちゃんとある証拠だ。

誰にも気付かれたくないやつは、そもそも数字なんて気にしねぇ」


生徒の目の奥で、何かが少し動く。


蓮司は視線を窓へ向けたまま、飄々とした声を落とす。


「“誰かに見てほしい”って気持ちは、弱さじゃねぇよ。

ただ、お前の心がまだ世界に触れようとしてるってだけだ。

その気持ちがある限り、消えたりしねぇよ」


言葉は淡々としていたのに、不思議と温度があった。


生徒はようやくスマホを手から離し、小さく息をつく。


「……少し、落ち着いた」


蓮司はペンを軽く弾きながら言う。


「数字の機嫌に全部つき合うの、そろそろやめてもいいんじゃねぇ?」


その何気ない一言が、いちばん刺さった。


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