コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
第3話:造られた楽園
市場の広場には、光るケージがずらりと並んでいた。
その中では小さな動物たちが跳ね回っている。羽毛が虹色に透ける小鳥、尻尾が三つに分かれた小型獣、丸い瞳を輝かせて人にまとわりつく小動物。
「ようこそ、新しい命の楽園へ!」
そう声を張り上げるのは若い民間フォージャー、リベル。
背は低め、金茶の髪を肩まで伸ばし、華やかな赤紫の上着に細身のズボンという派手な姿。
耳には宝石のような装飾が光り、第三の眼は化粧で強調されていた。
笑みを絶やさず、まるで芸人のように観客を惹きつける。
人々は群がり、ケージの中の“新種”を覗き込んで歓声を上げていた。
「すごい! こんな可愛いの、昨日まで存在しなかったんだ!」
「家に迎えれば、一生癒してくれるわ!」
彼らにとって命は、選び、買い、飾るものだった。
そこにクオンが現れる。
長い旅装束に灰色の瞳、淡く光る第三の眼。その静かな佇まいは、熱気あふれる市場では異質に映った。
「……これは、命の市場か。」
低く呟いた声に、リベルが振り返る。
「おや、見ない顔だね。買いに来たのかい? それとも批評家?」
にやりと笑い、赤紫の上着の袖を翻す。
「命を“造って売る”……それを正義だと?」
クオンの灰色の瞳が鋭く光った。
周囲の観客がざわめく。「変なやつだ」「フォージャーを否定するなんて」──まるで空気を読まない異端者を見る目だった。
リベルは肩をすくめ、楽しげに笑った。
「正義? そんなものは客の笑顔で決まるのさ。
この子たちが人を癒し、人が幸せになるなら、それが俺の正義だ。」
ケージの中の小鳥が、透き通る声で鳴いた。
それは確かに可憐で、人々の心を和ませる響きだった。
だがクオンは目を逸らさない。
「本物の命は、上書きも造り物も要らない。ただ守るものだ。」
灰色の瞳と、煌めく金茶の瞳がぶつかる。
市場の熱気の中、二つの正義が交錯した瞬間だった。
群衆は笑い、買い物を続け、誰も真剣には取り合わない。
だがクオンの胸の奥で、その孤独な正義はますます強く燃えていた。