その後、ダイニングテーブルと似たテイストのシンプルなデスクがあったのでスタッフ用に二つと、同じシリーズの一回り大きいタイプを岳大用に購入した。もちろん椅子も三脚揃える。
次に三人掛けのソファーを探したがこれだという物が見つからなかったので今回は見送る。
そして最後に岳大のベッドを見に一行は二階へ移動した。
(ベッド売り場に私は行く必要はないか)
優羽はそう思いそのまま一階へ残ろうとしたが後ろにいた保坂が声をかける。
「森村さんもアドバイス係で是非参加して下さい」
そう言われたら行かない訳にはいかないので優羽も二階へ向かった。
二階には沢山のベッドが展示されていた。岳大は身長が高いので普通のシングルベッドだと小さいだろう。
そこで店長が背が高い人でもゆったり眠れるサイズのベッドコーナーへ案内した。
そこにはダブルベッドやキングサイズのベッドが展示されている。
「佐伯さん、結婚した時の事を考えていっそのことダブルにしちゃいましょう」
保坂がそう茶化すと店長を始めテレビクルー達が一斉に笑い声を上げる。
「保坂さん意地悪だなー」
岳大が参ったなという顔をして笑ったのでカメラはしっかりとその笑顔を捉える。
それに気づいた岳大はカメラマンに向かって、
「今のはカットしてくださいよー」
と叫んだのでまた一斉に笑いが起きた。
そして今度は岳大が真面目な顔で言った。
「実は僕は身体が大きいので最初からダブルを買おうと思っていましたよ」
「なんだ、じゃあ最初からそう言って下さいよ」
「ハハッ、すみませんっ」
そこで店長がお薦めのダブルベットがある場所へ岳大を連れて行く。
店長から話をうんうんと聞いていた岳大はベッドを見た後寝転がったり座ったりして真剣に選んでいる。そして候補を二つまで絞るった所で突然優羽に聞いた。
「優羽さんだったらこの二つのうちどちらがいいと思いますか?」
それを聞いたスタッフの一人が、
「佐伯さん、それプロポーズになっちゃいますよー」
と言って茶化すとまた一斉に笑いが沸き上がった。
優羽は恥ずかしくて耳まで真っ赤になる。それをすかさずカメラマンがしっかりと撮影していた。
どちらがいいかと聞かれた優羽は真剣に考えた。
あの天窓のある部屋を寝室にすると岳大が言っていたので部屋を思い出しながらイメージしてみる。
目を閉じて想像してみるとピタリと一致するものが目に浮かんだ。
「あの天窓の部屋に似合うのはこちらかなって思いますが…….」
優羽はナチュラルブラウンの無垢材で出来たシンプルなベッドを指差して言った。
「なるほど。あとマットレスの硬さってどう思う? 実際に寝転んで感想を聞かせて下さい」
「私がですか?」
そこで保坂がフォローするように言った。
「男ってのはねぇ、買い物が苦手なんですよ。だから森村さんがしっかりチェックしてあげて下さい」
優羽は仕方なくそのダブルベッドの端に身体を横たえてみた。
するとマットレスは程よい硬さで寝心地が良かった。柔らかなマットレスが苦手な優羽の好みの硬さだ。
あまりの寝心地の良さに気を良くした優羽は横向きからゴロンと仰向けになった。
「これはとっても寝心地がいいです」
優羽が答えた瞬間ベッドの反対側にいた岳大が突然優羽の隣に寝転んだ。
優羽はびっくりして顔を真っ赤にしながら起き上がろうとすると、
保坂が、
「ちょっとそのまま動かないで!」
と言ったので優羽は仕方なく起き上がるのをやめてじっとしている。
するとカメラマンがベッドに寝転ぶ二人を撮影した。
そこでまたスタッフの一人が声をかける。
「新婚夫婦みたいですよー!」
更に優羽の顔が真っ赤になったのでまた皆が笑い声を上げる。
横にいた岳大は更にゴロンと優羽に近づくと肘をついて頭を支えてから優羽の顔を見降ろした。
「これならもっといいでしょう?」
岳大からの思いがけないサービスにカメラマンもノリノリで撮影する。
それ以上我慢出来なくなった優羽は両手で顔を覆いながら言った。
「もういいですかー?」
その可愛らしい声に再び笑い声が響いた。そして漸く優羽は解放された。
ベッドから起き上がる際岳大が優羽の耳に囁いた。
「協力ありがとう」
優羽は耳元に感じた岳大の息遣いに思わずドキッとした。そしてその瞬間かすかに岳大の匂いを感じた。
コメント
7件
キャァー(〃ω〃)🩷🩷🩷こっちが照れるぅ🤭
なんかもう😍😍😍
何度読んでもキュンです💓🤭