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第8話:卒業証書



午後の笹波駅。

ホームの端に立つ中学生くらいの少年が、制服のブレザーの前をきっちり閉め、深い紅色のマフラーを巻いていた。髪は耳が隠れるほどの長さで、前髪が少し目にかかっている。背はまだ小柄だが、黒い学生鞄を両肩に背負う姿勢は固く、どこか人目を避けるような目つき。名前は成瀬海斗(なるせ かいと)、14歳。不登校が続き、今日も学校へは向かっていない。


ベンチの下に、丸められた筒が転がっていた。拾い上げると、濃いエンジ色のリボンで結ばれた筒状のケース。蓋を外すと、中から折れないよう厚紙が丸められて入っていた。

——卒業証書だった。


そこには「成瀬海斗 卒業を証する」と、自分の名前が筆書きで記されている。日付は二年後の三月十日。校長の署名と、見慣れない赤い校章の印。紙からは、インクと紙の混じった独特の匂いがした。


「……俺、卒業できるのか」


呟くと、胸の奥で何かが小さく鳴った。学校に行けなくなってから、未来のことなんて考えなかった。けれど、この紙は確かに“二年後の自分”が手にした証。


電車が近づく音が響く。海斗は卒業証書を筒に戻し、ベンチの上に置いた。

自分の鞄の中には、まだ空っぽのノートが一冊入っている。今日はそれを開いてみようと思った。


ホームの風がマフラーを揺らし、前髪の隙間から差す光が少しだけ明るく見えた。

——いつか、この紙に追いつくために。



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