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それから二人は車で一緒に帰った。

途中スーパーへ寄る。今夜の夕食は陸が料理人を買って出た。


スーパーの中へ入ると陸がカートを押してついて来る。


(新婚さんってこんな感じなのかな?)


華子はふとそんな事を思った。


若い頃華子はとにかく早く結婚したくて仕方がなかった。

あの頃はハイスペックな男性と結婚さえすれば幸せになれると思っていたし、そこが人生のゴールだと思っていた。

しかし今、その考え方が間違っている事に気付いた。


上手く言えないが、もしかしたらこういう何気ない日常の中に幸せというものがあるのではないか?

ハイスペックとかお金持ちとかそういう事は一切関係なく、一緒にいて自然で心地良い……そういう些細な事が大事なのかもしれないと華子は気付く。


そして一緒にいて楽な関係のパートナーを華子はチラリと盗み見た。

陸はとても素敵だった。

細身のジーンズを履きガッチリした上半身を隠すように白いシャツを羽織っている。

腕まくりした袖口から伸びる逞しい腕がなんともいえずセクシーだ。

そしてゆったりとピューマのように歩く姿もカッコイイ。


(なんて素敵なの)


華子が陸に見とれていると、すれ違う主婦達も皆陸に視線を奪われている事に気付いた。

そして陸と一緒にいる華子に女性達は羨望の眼差しを向ける。


(陸と結婚するとこういう心地良い毎日が訪れるのね。新婚時代はこうして二人でお買い物に来て一緒に料理をして夜はフフッ……そしていつかは赤ちゃんが生まれて赤ちゃんが大きくなったら今度は三人でお買い物に来て…そんな未来も素敵かも! それに陸はきっと良い父親になるわ)


華子の想像はどんどん膨らんでいく。しかし次の瞬間華子の表情が曇る。


(私のお父さんは小さかった私を見てなんて思っていたのかな?)


父親の顔も知らない華子には父が華子の事をどう思っていたかなど全く想像もつかなかった。


その時陸は華子の表情の変化を見逃さなかった。華子には何か悩みがある事を察知する。

しかしこの場では気づかないふりをしてそのまま買い物を続けた。


マンションへ戻ると陸がにんにくの芽と豚肉のスタミナ炒めを作ってくれた。

ニンニクもたっぷり入っているのでかなりボリュームのある一品だ。

それに焼くだけの市販の餃子を買ってきたのでそれも焼き始める。


華子がシャワーを浴びてリビングに戻るとスタミナたっぷりの夕食が出来上がっていた。


「うわー、オトコの料理って感じ!」

「夜に備えてニンニクたっぷりにしておいたから覚悟しておけよ」

「キャーッ、どうしよう! また明日は筋肉痛?」


華子はクスクス笑いながら席へ着く。

そこへ陸が卵とわかめの中華風スープを持って来てから二人は夕食を食べ始めた。


一口食べて華子が言った。


「美味しいわ! 街中華でありそうなガッツリ系でご飯に合うわね」

「だろう? たまにこういうガッツリしたのを食べたくなるんだ」

「自衛隊時代はこういう食事が多かったの?」

「うーん、そうだなぁ、食堂の飯はガッツリ系もあるし洒落た洋食風の時もあるし色々だな。でもどれも美味かったよ」

「テレビの自衛隊特集だとカレーが有名よね」

「部隊それぞれのカレーがあるからな」


陸は自分がいた部隊のカレーの説明を始める。

その時華子は幸せに満たされていた。


自分の命を救ってくれた男性が今目の前にいる。そしてその人が作ってくれた夕食を向い合って食べながら他愛もない話で盛り上がる。

こんなに幸せでいいのだろうか?


ずっと不安の中に生きてきた華子にとって、陸に守られながら安心できる日常にいられる事は信じられないくらい幸せな日々だった。しかしそんな幸せの中にいるからこそつい思い出してしまう。



(お父さんは今幸せに暮らしているのだろうか?)



また華子が物思いに耽っているのを見て陸はこう思う。


華子の不安はどんな小さな事でも取り除いてやりたい。

そして華子にはいつも笑っていて欲しい。その為には陸はなんでもするつもりでいた。


自分が守り愛し抜く……陸はそう決めていた。


(華子の居場所は俺が作ってやる)


陸は熱い思いを秘めながらそう決心していた。

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