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水面に落ちた星屑

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水面に落ちた星屑

第88話 - 第88話

116

2024年08月29日

#恋愛

#大人の恋愛

#大人ロマンス

#第3回テノコン

#ハッピーエンド

#純愛

瑠璃マリコ

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瑠璃マリコ

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その頃大和翔真の事務所ではマネージャーの鈴木が大声を上げながら翔真の元へ走って来た。

「翔真！　今テレビニッポンの保坂さんから電話があってさ＿＿＿＿」

息を切らした鈴木が慌てた様子で言うとソファーで雑誌を読んでいた翔真がのんびりと返事をする。

「うん、それで？」

「お前なぁ、のんびりしている場合じゃないぞ。凄い話が来ちゃったんだからな」

「うん、だから何？」

翔真は雑誌をテーブルに置くと鈴木を見た。

「お前山のドキュメンタリー番組に出たいって言ってたよな？　それだよ！」

鈴木の言葉に翔真は漸く反応した。

「え？　俺に？」

「そうだ。お前この前『ネイチャーストーリーズ23』にノーギャラで出ただろう？　マジでいい営業して来たよなぁ」

鈴木がニコニコして言ったので翔真が聞いた。

「って事は保坂さんのテレビ局？」

「そうだよ、BS枠！　2時間番組×2夜連続だぞ。『グレートクライマーR』だ。お前の憧れの番組だろう？」

翔真は信じられないと言う顔をしてしばらく言葉を失っていたがなんとか声を絞り出した。

「マジで？　嘘だろう？　いやマジかー！　超嬉しいんですけどー」

喜ぶ翔真を見て鈴木はニコニコしながらうんうんと頷いた。

「で、どこの山ですか？」

「北穂高だそうだ。難易度はかなり高いらしいけれど大丈夫か？」

「ワオ！　最高じゃないですか、頑張りますよ」

「おまけにパーティーを組む相手はあの佐伯さんだそうだ。オファーはこれからかけるらしいけれど受けてくれたら最高だな！　お前の憧れの人だろう？」

「マジで？　佐伯さんと組むんっすか？　マジやばい…」

翔真は両手で顔を塞ぐと感無量と言った感じでしばらくそのままでいた。

そんな翔真に鈴木が言った。

「ただしかなり急だぞ。キャンセルでぽっかり空いた3月下旬の日程に合わせて調整してくれるらしい。ただな、3月の穂高はまだ真冬だそうだ。冬山は大丈夫ですかと聞かれたけれどお前大丈夫か？」

「もちろん！　マジ頑張りますわ」

翔真はニヤッと笑ってガッツポーズを見せると早速穂高についての情報をネットで入手し始めた。

その頃岳大もテレビニッポンの保坂と電話で話していた。

「＿＿＿＿という訳で3月下旬なんですけれどお願い出来ますでしょうか？」

「翔真君とパーティーを組むんですよね。彼は冬の穂高は大丈夫でしょうか？」

「山岳コーディネーターが彼が過去に登った山を全てチェックしたんですが、無理をしなければいけるでしょうとのことでした」

それを聞いたしばらくじっと考えている。

これが4月だったら店舗オープン直前で厳しいが3月下旬ならなんとかいけそうだ。ただ3月の北穂高は厳しい真冬の気候だ。翔真がどこまで耐えられるかに全てがかかっているような気もする。

「サポートには誰か入って貰えそうですか？」

すると保坂は隣にいた番組ディレクターに電話を替わった。

「佐伯さん、ご無沙汰しています、宮森です」

「ああ宮森さん、お久しぶりです。今回は宮森さんが担当ですか？」

「そうなんですよー。番組は感染症の影響で3年間休止になっていたんですけれど今回復活する事になりまして。ラッキーな事に大和翔真さんの3月下旬の日程が抑えられたので急遽企画が進みましてねー、是非佐伯さんのお力をお借りしたくて」

「翔真君は冬の北穂高は初めてですよね？　だったら念の為一人サポートをつけていただけると助かるのですが」

「その点は大丈夫です。ベテランの小野がパーティーに入る予定です。あとカメラで坂本も入ります」

「ああ小野さんと坂本さんですか。だったら心強いですね」

小野と坂本は以前岳大がK2アタックをした際のパーティーのメンバーだった。二人ともベテラン中のベテランで安心してサポートを任す事が出来る。

「わかりました、ではお引き受け致します。よろしくお願いします」

「ありがとうございます！　では詳細についてはメールで送りますので一度目を通しておいて下さい」

ディレクターの宮森はホッとしている様子だった。岳大はそこで電話を終えた。

「北穂高ですか？」

井上が早速聞いた。

「うん。テレビニッポンの『グレートクライマーR』が今年から復活するらしくてその第一弾だそうだ。日程が急すぎるけれど僕は長野にいるから問題はないし…あとは翔真君の準備だなあ。彼は超多忙だから体調管理にだけは気をつけてもらわないと」

「それにしてもなんか最近調子良過ぎませんか？　店のオープン前にテレビドキュメンタリーが2本！　『peak hunt5』の宣伝にもなっちゃいますよね」

井上は嬉しそうに笑った。

「それもそうだな。でも忙しくなるぞー。3月中旬からは僕はそっちに集中しなくちゃだから店舗の方は井上君に任せる事になっちゃうけどよろしく頼むよ」

「任せてください」

井上は笑顔で答えた。