テラーノベル
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ホログラムPCに次々とファイル名が表示されていた。
【王子イザリオ/王女エルファーナの複製・入れ替え計画】
【国防装置 エルフ・バリア塔破壊についての研究報告】
【世界統合国家構想と予備兵力配置図】
(常軌を、逸している……)
国家を根本から破壊するような文言ばかりが並んでいた。このままでは、王位の正統性も、軍の指揮系統も、すべて“偽物”に塗り替えられてしまう。スメラは迷わず、胸元から一枚の小型光結晶チップを取り出した。軍でも使用される高圧縮かつ最高機密仕様の記録媒体だ。ホログラム操作パネルにチップを差し込み、複製保存を試みる。
『このデバイスは非正規アクセスです。管理者認証が必要です』
赤い警告が点滅したその頃。ベッドサイドに置かれた携帯端末が、鋭い警告音を鳴らした。
《緊急セキュリティアラート》
《マラー補佐官室 端末への不正アクセスを検知》
ゼムは不機嫌そうに目を覚まし、画面へ視線を走らせる。
「もう!うとうとしていたのに……。国家機密へのアクセス?」
すぐさま詳細ログを展開する。
画面には赤い文字が並んでいた。
《軍用高圧縮デバイス接続》
《複製保存を試行》
ゼムの表情が険しくなる。
「軍用デバイス……?」
官邸内部の者でなければ扱えない代物だった。
「警備部は何をしているの……」
小さく呟くと、すぐに情報管理室長としての表情へ切り替わる。
「まずは首相閣下とマラー補佐官へ緊急通知」
数回の操作で暗号化された報告を送信する。
その後、クローゼットを開け、制服へと着替え始めた。
「こんな時間に登庁なんて、本当に勘弁してほしいわ」
ため息をつきながらも、その手に迷いはない。
ゼムを乗せたタクシーは、眠らぬ王都リュカ街を抜け、官邸へと走り出した。
一方、夜の首都リュカ街を、黒塗りの魔導浮遊公用車〈エルグライド〉が音もなく滑っていく。遮音フィールドに包まれた車内は、外界から完全に切り離されていた。窓の外、ホログラム式の街灯が青白く点滅し摩天楼群が無言で空を切り裂く。遠くに見えるのは、時計塔のシルエット。リュカ街の象徴でありながら、今はただ冷たく夜空に沈んでいた。
そのとき。
「ビーッ、ビーッ!」 警報アラートが車内に鳴り響いた。
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#現代ファンタジー
むぎ 🖤🪽
73
#死ネタ、流血表現、暴力表現
穏霞 乃矢
2,886
リヴァンとマラーの腕時計型端末が同時に赤く点滅。即座にマラーが操作し、ホログラム・ログを浮かび上がらせる。
「私室端末“RM5”に不正アクセスを検知。ファイル“Z-Retro”が何者にかによって複製保存されようとしています!」
その報告を聞いた瞬間、リヴァンの眉間に鋭い皺が寄った。
「戻る。ラマズドとの合流は中止だ」
「了解。緊急帰還コード、発動します」
マラーがナビを操作すると、〈エルグライド〉は即座に軌道を反転。魔導衛星の管制下、制限速度を解除し首相官邸へ最短ルートで走行を開始した。背後で虹色の〈エルフ・バリア〉が夜空にたなびく。その揺らめきは、まるでこの国の“境界”がざわめいているようだった。
リヴァン達が気付いている事を知らないスメラはマラー本人の声紋データを再生した。数秒後、「認証完了」。赤いホログラムが緑色に変わる。
「ログイン認証:管理者。保存先:光結晶チップ 複製開始」
ホログラムにホログラムの上に、緑色のバーが現れ、ゆっくりと進んでいく。15%……28%……47%……
腕時計が小さく震えた。警備システムの再起動まで、残り数分。
(お願い、急いでコピーして……)
その間にも、スメラの視線は次々と展開されるファイルを追っていた。
目を背けたくなるような、闇の真相が次々と表示される。
【極秘:取扱注意! 首相と帝国閣下、秘密回線 音声語録 】
(極秘、秘密回線、音声語録、これ何……?)
スメラは震える指でタップした。端末から、低い通信端末の呼び出し音の後にリヴァンの声が流れ出す。
慌てて音量を絞り、息を殺して耳を澄ませた。
『ドラン閣下、着々とイーサム王国乗っ取りの準備は進んでおります。既にラマズド科学技術長官に、イザベル王子とエルファーナ王女のクローン制作を命じました。本物はいずれ処分させます』
『そうか! ようやくイーサム王国を手に入れることができる!』
『いいえ、閣下は静かにお休みください。私が王族を影で操り、民の象徴である王族を嫌うように仕向けることで、民の落胆、憎悪、悲しみのエネルギーで民を争わせ、国を崩壊しリセットするのです。そして、新たな秩序の国を築く。それが私の役目です』
「リヴァン……」
スメラの唇が震えた。
(違う……こんなの、あなたが語っていた理想じゃない!)
胸の奥で、かつて孤児院で語り合った「泣く子どものいない国」の約束が、かすかに呼び覚まされる。
だが次の声が、その記憶を塗り潰した。
『人は信頼・尊敬・大切にしている者に裏切られたとき、最も深く傷つく。その絶望と悲嘆こそが最大の力――支配の糧となるのです』
『調子に乗るな、リヴァン。お前が遺児となったとき、私が養子として迎えた恩を忘れるな。お前の父が帝国の軍師として名誉を残したからこそ、私が拾った。……ラマズドも、マラーも見守りのために送り込んだのだ』
『所詮、イーサム王もドラン閣下も同じ血。私は相続の争いを終わらせるだけです』
『忘れるな。恩を裏切れば信頼は消え貴様の願望も叶わぬ。……経過報告を待つぞ』
会話が途切れ、間を置いて、マラーの声がさらに低く囁いた。
『リヴァン様、老婆心からの苦言です。帝王閣下に失礼のないよう、態度を御慎みください。閣下の御恩と温かな理解があって、今のリヴァン様がおられるのです』
マラーは語気を強め、リヴァンに更に忠告を重ねる。
『恩を仇で返してはなりません! どうかお詫びと忠誠をお示しください。……我が一族は代々、カイザ家に仕え、先代からたくさんの恩を頂戴いたしました。仇で返した事はないと自負しております。私はリヴァン様の矛とも盾ともなります故、何なりと御命じください』
『マラーの忠告を受け止めておく』
そこで、データは再生を終えた。スメラの手が震え、端末の光を凝視したまま動けなかった。耳に焼き付いたのは、かつて共に夢を語ったリヴァンではなく、そこに響いていたのは、信念ではなく「裏切りと野望」だった。
「どうして……。リヴァン……」
(ここで泣いちゃ絶対にダメ……。絶対にダメ……)
だが、彼女の視界は涙で滲んだ.
再びファイルが表示され、進捗バーが現れた。
・首相命令:複製王族の教育スケジュール
・首相命令:照射適合体改良型β―ギル・グラギラス育成計画書
・王国掌握計画“K-P1”
・政府諜報協力者リスト
・王立科学アカデミー研究所・内潜入協力者名簿
・FR6 地下扉用QRコード
・首相命令:エルフエナジー兵器応用試験(進捗状況)
・粛清対象者リスト
・直轄組織“FR6”設立概要
――75%、91%、……100%。
『データコピー完了』と表示された。
だが、その刹那――
タッ、タタタッ……タッ、タタタッ……タッ、タタタッ……
廊下から複数の足音が、明らかにこの部屋を目指して迫ってくる。スメラは頬を伝う涙を乱暴に拭い、深く息を吸い込んだ。ホログラムに現れたメッセージを確認すると同時に、スメラは光結晶チップを素早く引き抜き、ジャケット裏の隠しポケットへと滑り込ませた。即座にホログラム操作を終了。すべてのウィンドウを閉じ、ログ消去コマンドを叩き込む。部屋の隅へ走り、床の通気ダクトのハッチを開け、その狭い闇に、迷いなく身体を滑り込ませた。金属の縁が肩と腰を削る。冷たい鉄の匂いと、自分の汗が混じる息苦しい空間。
「シャッ――」
自動扉が開く音が背後で響く。スメラは咄嗟に息を止め、システムメンテ終了時計を知らせるアラームを慌てて手で押さえた。小さな音がダクト内に響き渡る。
(くっ……お願い……聞こえないで……)
すぐ頭上で、ブーツの靴音が床を打つ。
「――異常なし」
カーンの声だった。数秒後、扉が再び閉じる音。そして足音は遠ざかっていく。スメラは、静かに口から息を漏らした。心臓の鼓動が喉まで届きそうだった。
(助かった……でも、ここからが本番よ)
腕時計のナビゲーションを起動。薄い光の中、ルートマップがホログラムで浮かび上がる。
スメラは再び肘と膝を突き立て、金属の闇の中を這い進む。背後から再起動した警備システムの低音が、じわじわと追いかけてくるようだった。
コメント
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いやー、第6話めっちゃ熱かった……! スメラがリヴァンの裏切りを知っちゃう場面、脳裏に焼き付いたわ。あの音声データで「そんなの理想じゃない」って震える声、こっちまでグッときた。ダクトに隠れる緊迫感も手汗ヤバかったし、ゼムとリヴァンが同時に動き出す展開がもう次回待てない! スメラの涙を拭って這い進む強さ、めちゃくちゃカッコよかったです🔥 続きが気になりすぎます!