健吾の部屋で朝食を食べた理紗子は、その後部屋へ戻った。
そしてシャワーを浴びてさっぱりする。
健吾にもらった薬を飲んだら頭痛はだいぶ治まってきたが、念の為もう少し休んだ方がいいと健吾に言われ午前中は部屋で大人
しくしている事にした。
健吾は午後から理沙子を釣りに連れて行くと言っている。
釣りもりっぱな小説の『ネタ』になるだろうからと、釣り船を既に予約してくれていた。
理紗子はアウトドアはわりと好きな方で、以前から釣りに少し興味があった。
だから今回は有難くお供をさせてもらう事にした。
今回の旅行がもし完全な一人旅だったら、取材と言ってもバスやタクシーで行ける範囲への観光がせいぜいだった。
健吾と一緒だと、普通ではなかなか出来ない事を体験出来るのでワクワクしている自分がいる。
ただ理紗子は釣りに着て行くような服を持って来ていなかった。
ジーンズはあるが、真夏の船上では暑いかもしれない。
健吾とはロビーで午後二時に待ち合わせている。
とりあえず今から少し仮眠を取ろう。
その後ホテルのショップへ行き、短パンやTシャツが売っていないかをチェックする事にした。
理紗子は目覚ましをセットするとすぐにベッドの中へ入った。
その後理紗子が起きたのは、ちょうど正午頃だった。
二時間ぐっすり眠れた。
朝の頭痛はすっかり治まり身体の怠さも取れ、体調は100パーセント回復していた。
やはり昼寝をして正解だった。
ちょうどお昼時なので、ホテルのショップへ行くついでに食べ物も買って来よう。
理紗子は財布を手にすると部屋の出口へ向かった。
その時ノックの音が響いた。
理紗子は一瞬ドキッとする。
(まさかスピリチュアル島村じゃないわよね?)
理紗子はおそるおそる足音を立てないようにドアに近づくと、覗き穴から外の様子をうかがう。
するとそこに立っていたのは健吾だった。
理紗子の緊張は一気にほぐれ、ホッとため息をつくとすぐにドアを開けた。
「体調はどう? 少しは眠れた?」
「はい。ぐっすり寝たのでばっちりです!」
理紗子が元気に答えたので、健吾は安心した様子だった。
「空きっ腹で船に乗ると酔うから、これお昼に!」
そう言って、美味しそうな弁当が入った紙袋を理紗子に渡した。
弁当には、沖縄名物のゴーヤチャンプルーやラフテー、そしてジューシーという沖縄風炊き込みご飯が入っていた。
弁当は彩り豊かに美しく盛り付けられていた。ホテルで用意してもらった弁当なのだろうか?
「美味しそう! ありがとうございます」
理紗子はその弁当を見た途端、一気にお腹が空いてきた。
健吾は弁当の他に、もう一つ理紗子に袋を渡した。
「釣り船に乗るような服は持って来ていないだろうから、これを着たらいい」
理紗子が受け取った袋には『peak hunt5』というロゴが入っていた。
これは健吾が取締役をしているアウトドア会社のマークだ。
「えっ? いいんですか?」
「ああ。試作品みたいなやつだから気にしないで。サイズは大丈夫だよね?」
理紗子が服についているタグを見ると、
「はい、大丈夫そうです」
「じゃあ、これを着て14時にロビーで!」
健吾はそう言うと自分の部屋へ戻って行った。
部屋のドアを閉めてから理紗子は呟いた。
「凄い! 至れり尽くせりだわ! まさにスパダリ男!」
それから理紗子は窓辺のテーブルに弁当を置くと、
健吾から貰った服を一枚一枚ベッドの上に出してみた。
ベージュの短パンに白のTシャツ、そして黒の薄手のパーカーと、同じく黒のキャップまで揃っていた。
全て無地のシンプルなデザインで、『peak hunt5』のロゴが控えめに入っていた。着心地も良さそうだ。
理紗子は島に来る時はジーンズとスニーカーで来たので、靴はその時のスニーカーを履く事にする。
(そう言えば釣りって一体どんな魚が釣れるのかな?)
理紗子はスマホの検索画面に『石垣島・釣り』と入れてみた。
すると石垣島での釣り情報がいくつも出て来た。
その検索結果を眺めながら、理紗子は健吾が持って来てくれた弁当を嬉しそうに食べ始めた。
コメント
3件
健吾さん、本当にマメだわ~さすがスパダリ男♥️ 理紗子ちゃんの体調も戻り、釣りデート 楽しみですね~🐟️🌊🎶
健吾〜✨ほんとにいつもサラッと嫌味なく、今までにどんだけやってきたの?って思うけど、きっとここまで『してあげる』のは理紗子ちゃんだけ、初めてなんじゃないかなꉂ🤭ウフフ
これまでの同伴女とは🎣をすることが無かった健吾。 理沙ちゃんは🎣好きみたいで楽しく過ごせるね👍そして❣️岳大さんのブランドの服ですね👕👖✨ さすがスパダリ健吾🧖♂️ 準備も手抜かりなしでお見事👏 理沙ちゃんにしっかり休息も取らせてお弁当持参で余裕を持っていざ出発🚗