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※塚森トウヤと柴崎ゼナの音声記録
※場所は白虎機関本部
※日時は未明
(ガチャッと言うドアの開く音)
トウヤ:
柴崎さん……。
柴崎ゼナ:
あぁ、来たね。(重いため息)
……とにかく入って。
トウヤ:
あの、職員の被害というのは……?
柴崎ゼナ:
収容ルームの職員三名が軽度の霊障を受けた。
幸い命に別状はないが、一週間は安静が必要だろうね。
(沈黙)
(重いため息)
柴崎ゼナ:
あれが地獄由来の呪物だとわかった時点でサッサッとディスポーズ処分すればよかった。
まったく自分の無能が腹立たしいよ。
トウヤ:
そんな……。
柴崎さんのせいじゃないですよ。
柴崎ゼナ:
かばってもらえるのはうれしいが、そんな話をしに来たわけじゃないだろ?
(沈黙)
柴崎ゼナ:
ハルくんの身体のことなら……心配は要らないよ。
念のため、ケアスタッフと一緒にセーフゾーンに避難している。
面会したいと言うのなら今すぐ手配するが。
トウヤ:
それはもちろん。会いたいです。
……だけど、その前にあの提案を検討していただけたかどうか、返事が欲しいんです。
柴崎ゼナ:
ああ……。
「無貌」を捕獲し、その力を利用してハルくんの魂を本来の肉体に定着化させたい、とか言ってたね。
(沈黙)
柴崎ゼナ:
結論から言えば――やってできないことじゃないかも知れない。
白虎機関には膨大な怪異とその能力を利用した技術データがるからね。
それを組み合わせれば、あるいは……。
トウヤ:
じゃあ……!
柴崎ゼナ:
だけど、君は本当に理解しているのか?
君の提案は、あの呪物でハルくんの、幼子の魂に触れ、調整し、操作すると言うことだぞ?
結果、あの少年Aのような末路を辿ったらどうするつもりだ?
トウヤ:
いや、A君とハルは違いますよね?
ここには白虎機関のテクノロジーがある。あなたと言う最高の科学者だっている。
塚森家だって事情を知っているんだから協力してくれる。
だから、後は――。
柴崎ゼナ:
私の質問の答えになっていない。
バックアップの有無などどうでもいい。
君は我が子を最悪の人体実験に興じようとしているんだと言っているんだよ。
(沈黙)
トウヤ:
俺だって素人じゃない。危険なのは百も承知です。だけど、前に進み続けなきゃいづれ詰むんです。
ハルは生まれついての離魂病です。ヌイグルミを憑代にしているから一見、可愛く元気に見えるけど、本当は毎日、衰弱している。
ハルの身体はいつ死んでも、明日死んだっておかしくない。
柴崎さんだってご存知ですよね?
(沈黙)
トウヤ:
普通の子なら友達と走り回ったりして、いろいろ世界が開けてゆく年頃なのに、あの子はヌイグルミの身体の中に閉じ込められて。
皆さんのお陰で家族三人一緒にいられることは感謝していますが、それだけじゃやっぱり足りない。
あの子の魂の抜けた肉体が生命時装置に繋がれたまま、ただ大きくなっていくなんて俺には耐えられない。
柴崎さん、あなただって人の親なら俺の気持ちわかりますよね?
(震えたまま声を詰まらせる)
柴崎ゼナ:
重ねて言うが「無貌」は並大抵の怪異じゃない。あれはこの世に顕現した地獄そのものだ。
あいつを捕らえる為にどれだけの代償を払うことになると思う?
トウヤ:
(苛立ち絞り出すような声で)だから言ってるじゃないですか!俺はハルのためなら――!
柴崎ゼナ:
この世の全てを巻き込んだって構わない、か。
やはり、君は正気じゃないね。……私と同じだ。
(息を飲む声)
(ククク、と柴崎ゼナの喉で笑う声)
柴崎ゼナ:
お互いこの世ならざる子を持った親同士、本音トークで行こうじゃないか。
どうせこの会話も記録されているだろうが、……今の私の立場なら後でどうとでも改竄できる。
(沈黙)
柴崎ゼナ:
方法はいろいろと検討の余地はあるが――、まずは手を組もう。
たった今から私は悪い博士で君はその助手だ。
まずはありとあらゆる手段を使って、あの「無貌」を生け捕りにし
ズタズタに切り刻んで解剖してやる。
……上手くいけば、君たち家族だけではなく、私にとっても有益な知識が手に入るからな。
トウヤ:
じゃあ柴崎先生は俺の提案を――。
柴崎ゼナ:
でも、今はまだマリンちゃんにこのことは話すなよ?
育児の心労から頭のおかしくなった旦那がよからぬことを企んでいる、
とか騒がれちゃたまらないからね。
万が一、組織の倫理審査委員会に目でも付けられたら我が子の成長を見守るどころじゃなくなるよ。
(沈黙)
トウヤ:
二人とも、組織をクビになるとかですか?
柴崎ゼナ:
塚森トウヤ、君は馬鹿か?
……こんな企みがバレたら二人とも銃殺刑だよ。
トウヤ:
えっ。
(ブラックアウトした画面)
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