ホラー・ミステリー

童ノ宮奇談「辿縁」篇

1話から読む
専業主婦の竹原カリンは、娘ミトを連れて駅前のメンタルクリニックを訪れる。 彼女は日々つきまとう、正体不明の気配に怯え、不安に苛まれる日々を過ごしていた。 そして、娘の掌に、彼女が生まれた時から握りしめられている“天狗石”。 それは、かつて自分が逃げ出した実家・塚森家に伝わる神紋が刻まれた石だった。 何度捨てても、必ず戻ってくる。まるで“誰か”が、娘の手に戻しているかのように。 さらにミトは、誰も教えていないはずの真言を口ずさみ、 「おめめが一つだけのお兄ちゃん」と楽しそうに話すようになった。 カリンは語り始める。 自分の家は、神職の家系だったこと。 見えないものが“日常”として家の中を歩き回っていたこと。 家族はそれを当然のように受け入れていたこと。 ただ一人、自分だけが恐怖に震えていたこと。 だから逃げた。 だから忘れた。 だから、記憶を封じた。――そのはずだった。 なのに、娘の誕生とともに、封じたはずの記憶は再び“こちら側”へ滲み出してきた。 まるで、呼び戻されるように。 カウンセラーは静かに言う。 「神様がいるかどうかではなく、 あなたが“なぜ”そこまで恐れているのかが問題です」 そして提案される催眠療法。 カリンは、記憶の奥底へ沈む決意を固める。
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