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錐となった触手の先端から瞬間、まばゆく迸ったのは亡者の皮膚の色のような青白い閃光。それは霊子を極限まで圧縮、高速で撃ち出したものだが原理を知らない人間が見ればビーム兵器だと勘違いしただろう。
その一撃を受け、人面石は一瞬、ビクッと強張る動きを見せたが――すぐさま、煙をあげながらドロドロと溶けて行った。
「フン、弱すぎるな。やはり、こいつは伝承に登場する怪異、『笑ひ岩』とは別物。……その分身ってところだな」
まるで唾でも吐き捨てるような物言いだった。
人面石の残骸に向かって嫌悪感も露わにそうつぶやいた後、
「お手伝いしてくれてありがとうね。キミのおかげでお母さん今回も助かったよ」
女は自分の身体を愛おしそうに見下ろし、ねぎらいの言葉をかける。
女の下腹部には特徴的な丸い膨らみ。
そう、女は――柴崎ゼナは妊婦だった。
本当に勘弁してくれ。吐き気をこらえながら僕は思った。
母さんといい、キミカといい、このゼナ博士といい――、どうして僕の周りにいる女は頭おかしいのしかいないんだ?
「それはそうと――君も一緒に来てたんだね、塚森キミカ。……遅かれ早かれ、塚森家にはお邪魔するつもりだったから会えるとは思っていたけれど」
パンプスの靴音を響かせながらゼナ博士が静かに近づいて来る。
突然、名前を呼ばれキミカはビクッと肩を震わせる。
「えっ、えっ。あ、あの、う、うちは……」
「あ、そっか。最後に会ったのは二年も前、だもんね。――おばさんのことなんか、覚えてないよね?」
「い、いえ……。お父さんがお勤めの時、お世話になってる白虎機関の……」
人ですよね、と言いかけたキミカの頭がぐらりと揺れた。
そして、そのまま前のめりに倒れそうになり――、ゼナ博士の腕に抱きとめられる。
「キ、キミカっ……!?」
「大丈夫」
思わず声が裏返った僕をゼナ博士が声で制する。
それから腕の中でぐったりしているキミカの頭を愛おしそうに、本当に愛おしそうに優しい手つきで幾度となくなでる。
「緊張の糸が切れて力が抜けてしまっただけだよ。怖い目に遭わせたのは可哀そうだと思うが……」
チラリと僕を一瞥するゼナ博士。小さくため息をつき言う。
「塚森コウ、君の方がはるかに重症だよ。……待ってな。今、スタッフを呼んで集中治療室に連れて行ってあげよう」
そう言われた途端、あちこちに地獄のような苦痛が蘇ってくる。
ゼナ博士の言う通り、確かに僕はボロボロだった。顔の古傷だけじゃなく、全身が。
意識を失う前、僕は悪態をついていた。
……クソッたれ。
みんな、大嫌いだ。
#童ノ宮奇談シリーズ